3つの選択肢
「皆様に関しましては、アン ナブ キ シェア ラへの召還は、手違いではございますが……現時点ではムシュ イム アン キに戻る事は出来ません。
でっ。そんな皆様には、3つの選択肢があります。
1つ目は、このまま、カリーナ帝国の帝都にあるカリーナ城に召還され、
カリーナ帝国軍の一員となり、アン ナブ キ シェア ラの統一に向けて、血で血を洗う戦いに身を投じられると言う選択です。
2つ目は、カリーナ城に召還された後、
カリーナ帝国軍への入隊を拒んで、カリーナ城を去り、アン ナブ キ シェア ラの一般人として生きていく。もしくは……反カリーナ帝国の国々に移住して、カリーナ帝国の野望を打ち砕く為に尽力される。と言う選択です。
今回、カリーナ皇帝が、どう出られるかは不明ですが……皆様の前にカリーナ城に召還された方々は、カリーナ帝国軍へ入隊されるか、否かの選択権がございました。
ですから、カリーナ城に召還されたとしても、必ずしも、カリーナ帝国軍に入隊される事は無いかと思います。
でっ。3つ目は、貴方達の召還に私が干渉する事で、カリーナ城ではなく、カリーナ帝国領の最西端。大森林地帯と平原の境目に転移させると言う内容です。
その場合、アン ナブ キ シェア ラの、あちこちを巡りながら、龍脈に異常を起させている施設を破壊をして頂く仕事を請け負って頂ければ有り難い。と考えております。
勿論、成功報酬は、別途、お支払います。
具体的に言うと……
龍脈の正常化が成功すれば、
アン ナブ キ シェア ラと他世界を繋ぐ次元の壁が薄くなる為、皆様をムシュ イム アン キへの帰還させる事が可能となります。
また、 ムシュ イム アン キへの帰還後は、この功績により、皆様が願えば、永遠のニート ライフでさえ可能でございます。
それと……お仕事をして頂く上でのサポートや、ノウハウ等の共有も、皆様が、お持ちの携帯やPC等に、メール等を使用して、お伝えさせて頂くつもりですのでご安心下さい。
私としては……皆様が、3つ目の選択肢を選んで頂く事を切に願っては、おりますが……
皆様が、どんな選択をされたとしても……私が、皆様にとって、不利益な言動を取らない事を、お約束させて頂きます。」
ディンエと名乗る女の人が、そう言いながら、僕達をジッと見ている。
◇◇◇
「これから行く世界(アン ナブ キ シェア ラ)の龍脈を正常化させようとしている人は他にも居るのですか?」
「今のところ皆無ですね。
元々、アン ナブ キ シェア ラが、他世界との交流を絶ったり、貴方達の世界(ムシュ イム アン キ)の人間を召還を始めたのは、
やりたい放題されていた、神仏の代理人を名乗る、私の前任者の部下達への反発からでした。
私は、世界中に支部や支店。営業所等を持っていて、尚且つ、何処の国や勢力にも属していないギルドと呼ばれる巨大な組織と手を組み、神仏の代理人から、アン ナブ キ シェア ラを管理する権限を奪ったまでは良かったのですが……
その後、私は、彼達にアン ナブ キ シェア ラを管理する権限を奪われて……
他世界との次元の境界線上にある、次元転移装置を管理する、この施設に幽閉されてしまいました。
でっ。残念ながら、この措置ついては、神仏の代理人のの悪行のせいもあり、アン ナブ キ シェア ラの住民達からは熱烈に支持されている状況なのです。
唯一の救いは、
ギルドの上層部が、龍脈に異常を起させている施設の存在を秘匿している事もあって、
アン ナブ キ シェア ラの殆んどの住民達が、龍脈に異常を起させている施設の存在を知らない事ぐらいです。」
ディンエと名乗る女の人が、タメ息をつきながら、僕の質問に答えてくれる。
「貴女は、アン ナブ キ シェア ラを管理する権限を取り戻したら、どのような治世を行うつもりですか?」
「私は、世界を管理する者の中では中間管理職のような立ち位置ですので、必ず。とは言えませんが……
まずは、カリーナ帝国等、貴女達の世界(ムシュ イム アン キ)の方に、ご迷惑をお掛けした国の為政者や、
その切っ掛けを作った、ギルドの上層部の人間のみを処罰するつもりです。
また、私が、アン ナブ キ シェア ラを管理する権限を取り戻した暁には、
貴女達の世界(ムシュ イム アン キ)の方に、ご迷惑をお掛けするような事が無いように、しっかりと管理させて頂くつもりです。」
嫁の質問に、ディンエと名乗る女の人が、真剣な顔で答えてくれる。
「わたしは、元の世界(ムシュ イム アン キ)に戻りたい。
それに……ディンエさんは、パパの質問に嘘の答えを話しているようでも無い。
と言う訳で、パパ。
わたし達は、ディンエさんの言う、3番目の選択肢を選択するぞ。」
「了解。」
僕は、真剣な顔で話す嫁の言葉に頷いた。
◇◇◇
「ほな。ウチも……お姉さん達に、御一緒させて貰いますわ。
宜しゅう頼んます。」
女子高生が、そう言うと、ペコリと頭を下げてきた。
「学校の、お友達と合流しなくても良いの?」
「学校?
ウチは……レイヒトでも、専良学園の2年生でもない。
ウチの渾名は、プグナコ。
特異点のアサグとか言う、けったいな存在になってもうた、納勤学園ちゅう高校に通う3年生や。」
嫁の質問に女子高生が屈託のない笑みを浮かべながら答える。
「あの……プグナコ殿。
それは……本当に渾名でございまするか?
拙者が鑑定した限りでは、字だと思うのですが……」
オタク風の男の子がモジモジしながら、質問をする。
「???
ごめん。何が言いたいや?」
「字は、召還された際につけられた名前でございまする。
渾名とは……愛称的なものだと思いまするよ。」
不思議そうな顔をする女子高生に、オタク風の男の子が、字と、渾名の違いを、一生懸命に説明している。
「よう分からんけど……プグナコは召還された時に、勝手につけられた名前や。
これで、疑問は解決しはったか?」
「はい。スッキリしたでございまする。」
「さよか。それは何よりや。」
嬉しそうな顔で返事をするオタク風の男の子を見ながら、女子高生が苦笑いしていた。
◇◇◇
「拙者の字は、レイヒトでございまする。
拙者は……超越点のアサグとか言う、分相応の役割を与えられてしまい、困惑中でございまする。
正直な話、専良学園を辞めたのは……苛めによるものでございまする。
ですから、専良学園の2年5組には、拙者の居場所はございません。
勿論、クラスメートのみが悪い。と言うつもりは、毛頭ございませんが……そう言う事情故、お姉さん方と行動を共にさせて頂ければ有り難いと考えてる次第でございまする。」
オタク風の男の子が、苦笑いしながら、嫁に頭を下げる。
「了解。
プグナコちゃん。レイヒト君。こちらこそ、宜しくね。
わたしの渾名……じゃなかった、字は、サクモ。
特殊点のアサグとか言う変な体になった者です。
ほら、パパも自己紹介して。」
「字は、サルクル。
変異点のアサグらしいです。
宜しくお願いします。」
僕は、嫁に促されて自己紹介をした。
「サルクル殿は、変異点でございまするか。
拙者達と違って、異能の内容を自分で選択する事が出来る代わりに、半球睡眠と並列処理が出来ないタイプでございまするな。
差し支えなければ、選ばれた異能の内容を教えて頂きたいところでございまするな。」
レイヒト君が、モジモジした感じで、僕に質問をしてくる。
「貰った異能を説明するのはオッケーだけど……
皆の異能が、字と一緒に勝手に決められてたのは知らなかったよ。
しかも、僕だけ、半球睡眠や並列処理が出来ないタイプって……なんか……複雑な気分だね。」
「もう。パパ……話を脱線させない。
ディンエさんがイラっとした顔になったぞ。」
嫁が、そう言いながら、苦笑いしている。
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