【サイドストーリー】蠢く者達(ライコ視点)
「各国のギルドや、各国の情報機器や通信機器をのぞき見した結果、
ムルオの予想した通り、
ナヤクラース連邦に北極点を中心に、北側の領土の一部を放棄させた事で、両国が本格的な戦争を始める準備を始めたようだ。
それだけじゃない。
両国の上層部は、ムルオの予想通り、各々の国のギルドの支部に、高ランク冒険者への召集令状を出す準備まで始めてくれたようだ。」
「なっ。俺が言った通りになっただろ。
因みに、カリーナ帝国の諜報部隊と神聖法王国の諜報部隊に潜入させている、俺の眷属達からも、
リクルルが、今、言った事と同じ報告が来てる。」
リクルルの報告を聞いたムルオが、ドヤ顔をしながら饒舌に話す。
30年前に、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に召還された事で……アタシの人生は大きく変わった。
ライコと言う字と、
【雷の操作】と【距離を消す者】と言う異能を貰い、変異点のアサグと言う不老有死の存在になってしまったアタシと……
特殊点のアサグとなった、チクラクと言う字を貰った、高校のクラスメートは……
一緒に召還された、他のクラスメート達から浮いてしまった。
そんな、アタシとチクラクは、
アタシ達の召還に巻き込まれる形で、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に召還された、
【魂への干渉】と【魂の器の生成】と言う異能を持つ、変異点のアサグのムルオさん。
【完成品】と言う異能を持つ、変異点のアサグのドクマドさん。
超越点のアサグのリクルルさん。
この3人とツルむようになった。
因みに、彼達は、アタシ達の世界(ムシュ イム アン キ)から、異能や魔法。魔術や呪術が滅ぶ前に、アタシ達の世界(ムシュ イム アン キ)でアサグに成ったらしく……
彼達が言うには、5000年以上前から生きている、超高齢者らしい。
◇◇◇
因みに、アタシ達は、
この世界(アン ナブ キ シェア ラ)を支配下に置き、
この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の住人達を虐げ、贅沢三昧の日々を送っていた、当時の管理人と呼ばれる人や、彼の部下である神仏の代理人を名乗る人達から、
新しい管理人の候補者のディンエさんと、彼女の側近達や、
この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の人達と強力し、
彼達の支配から解き放つ為の助っ人として、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に召還されたらしい。
因みに、アタシは……
当時、この世界(アン ナブ キ シェア)にアタシ達を召還する事を決めた人達については許している。
勿論、何故……召還の対象者を……
当時、アタシが通っていた高校の……よりにもよって、アタシのグラスにしたの?って言う気持ちは、今も変わらない。
だけど……当時の管理人と呼ばれる人や、彼の部下である神仏の代理人を名乗る人達から、理不尽に虐げられていた事を知っている身としては……
藁にもすがる思いで、アタシ達を召還せざる得ない程、追い詰められていた事も理解する事が出来るからだ。
ただ……当時の管理人と呼ばれる人や、彼の部下である神仏の代理人を名乗る人達を、南半球の氷に閉ざされた大陸(シェグの大陸)に閉じ込めた後、
新しい管理人の候補者のディンエさんと、彼女の側近のサスケイさんを【次元転移装置】を管理する施設に閉じ込めた事や、
役目を終えたアタシ達に、元の世界(ムシュ イム アン キ)に帰る機会を奪った事や、
当時の管理人や神仏の代理人達の後継者となるべく、今も、アタシ達の世界(ムシュ イム アン キ)から戦力となりそうな人材の召還を繰り返しながら、虎視眈々と世界征服の機会を伺っている、一部の超大国の行動については、
未だに納得がいっていない。
因みに、そう思っているのは……アタシだけではない。
その証拠に、アタシと同じ考えを持つ、ムルオさんとリクルルさんとドクマドさんが、中心となって立ち上げた【虹を見たい者達】には、人数こそ少ないものの……熱狂的な賛同者が何人も集まっているのだから。
◇◇◇
「ムルオが、
ナヤクラース連邦の前大帝を暗殺し、幼い息子をナヤクラース大帝として即位させ、
ナヤクラース連邦の宰相のブズルエメを、ムルオの眷属にする事で、
ナヤクラース連邦に北極点を中心に、北側の領土の一部を放棄させた事で、両国が本格的な戦争を始める下地を作る。
なんて言い出した時は……
正直な話、こんな作戦、上手くいきっこない。って、心の中で思ってたんだけど……
水を差すような事を言わなくて、良かったわ。」
ドクマドさんが、そう言いながら、苦笑いしている。
「気にするな。
それよりも……勿論、アレは出来てるんだろう?
まさか……俺の作戦が失敗すると思ってたから、まだ、出来て無い。とか言わないよな?」
「まさか。
リクルルだけでなく、ライコやユゲミズ。ギョクソウにも手伝って貰って、
最低ノルマの4発を、何とか仕上げたわ。」
ドクマドさんが、そう言いながら、苦笑いしている。
因みに、ユゲミズさんは、
特異点のアサグで、ディンエさんの側近だった人だ。
だったと言うのは……
これから、アタシ達と一緒にやろうとしている事を、ディンエさんやサスケイさんは許さないだろうと言う理由から、彼女達との連絡を絶っているからだ。
そして、ギョクソウは、
ユゲミズさんに使役されている、九尾の狐と言う、霊獣の一種である、特別な獣だ。
因みに、ユゲミズさんが使役しているのは、ギョクソウだけではない。
怪狸と言う、幻獣の一種である特別な獣のブンガマも使役している。
この2匹も、ムルオさん達と同様、5000年以上、生きているらしい。
◇◇◇
「そっか。そっか。
その答えを聞けて安心したぜ。
とは言え、まぁ……アレを使うのは……もう少し、先になるだろうけどな。」
「一般人の事を考え出来れば……
5000年前のアタシ達の世界(ムシュ イム アン キ)みたいに、大気圏の熱圏に有る水蒸気層に、大量のアレをブチ込んで……
マナを産み出す、メーの殆どを殺すとともに、大洪水を引き起こすのは……酷な気もするわ。
出来れば……
アタシ達の世界(ムシュ イム アン キ)から戦力となりそうな人材の召還を繰り返しながら、虎視眈々と世界征服の機会を伺っている、一部の超大国への制裁をする事で、
アタシ達の制裁を受けた、該当国だけでなく……
シェグの大陸(氷に閉ざされた大陸)で再起を図ろうとしているディンエの前任のニワルレや、彼女の手下の神仏の代理人達や、
アタシ達の理念を否定し、
武力の使用を最小限に止めた平和的な方法で、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)を理想郷にしようとして、クンの大陸(南半球の大陸)を裏から支配している、理想主義者達の集団。【オピオタウロスの荷車】も、
大人しくなってくれたら……って、ついつい、願ってしまうわね。」
楽しそうに話すムルオさんの話を聞いた、ドクマドさんが、タメ息をついている。
「僕達の世界(ムシュ イム アン キ)では、魔法や魔術。呪術に頼らない文明のノウハウが、既に出来上がっている。
そんでもって、そのノウハウは、
【オピオタウロスの荷車】のお陰で、徐々にではあるが……この世界(アン ナブ キ シェア ラ)に広まりつつある。
だから、最初は混乱するかもしれないが、
あの時と違って、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)がメーを失ってたとしても、
人類が滅亡に瀕するような危機的な状況にはならないと思うよ。」
リクルルさんが、そう言いながら、ドクマドさんの頭を撫でている。
「この世界(アン ナブ キ シェア ラ)の一般人達は、
ギルド本部や、虎視眈々と世界征服の機会を伺っている、一部の超大国の為政者達の話をうのみにして、ディンエ様とサスケイ殿を【次元転移装置】を管理する施設に閉じ込める事に賛同した。
何も知らなかったから罪は無い。とか……
騙された被害者には罪は無い。と言うのは言い訳だ。
何故ならば、
誰の言葉を信じるべきか。誰の言葉に従うべきか。
この選択したのは、他の誰でもない。彼達自身だ。
だからこそ、俺は……
意図せずにムシュ イム アン キから召還された者を除く、アン ナブ キ シェア ラに住む、全ての人間は制裁を受けるべき者だと思ってる。」
ユゲミズさんは、そんなドクマドさんと、リクルルさんのやり取りを見ながら、ボソッと呟いていた。
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