最終決戦①
「うう。寒。」
プグナコちゃんが、そう言いながら、僕と嫁が乗る、キャビン付きのスノーモービルの2列目に乗り込んで来た。
「本当、凍え死ぬかと思ったでございまする。」
プグナコちゃんよりも、少し、遅れて、レイヒト君も、僕と嫁が乗る、キャビン付きのスノーモービルの2列目に乗り込んで来た。
「ウチが念力を使って、ウチとレイヒトが乗っていた方のキャビン付きのスノーモービルを龍脈を制御する施設に突っ込ませるんやったな。
でっ。何時、決行するんや?」
プグナコちゃんが、真剣な顔をしながら聞いてくる。
時刻は、もうすぐ9時。
僕達は、龍脈を制御する施設を見下ろせる崖の上から、2時間以上かけて、龍脈を制御する施設の2キロ手前まで移動したのだ。
「レイヒト君。雪雲が物凄い早さで近づいて来てるんだよね?」
「はい。でございまする。
まさか……サルクル殿は、猛烈な吹雪の中で、作戦を決行しようと考えられているのでございまするか?」
「うん。
龍脈を制御する施設の回りの木々は、全ての場所で、1キロぐらい伐採されているからね。
【空の目】を使って状況を確認されない為には……雪に紛れて作戦を決行した方が良いでしょ。」
「成る程。
確かに……そうでございまするな。」
レイヒト君が、苦笑いしながらタブレットPCを見つめている。
「理論上は正解なんやろうけど……決行する身としては辛いな。」
「確かに。
もし、パパが、暖かい会議室の中とかで、この指示を出したとしたら……
作戦を終わらせた後……フルボッコにしてるところね。」
「せやな。
もし、サルクルさんが、暖かい会議室の中とかで、この指示を出してはったとしたら……
ウチ達には、その権利があるね。」
嫁とプグナコちゃんが、物騒な話で盛り上がっている。
「最後まで……一緒に戦うよ。」
「当然。
こんなドMな作戦を立てたんだ。
寧ろ……一番、頑張ってくれなきゃ、後で蹴飛ばす。」
嫁は、そう言いながら、ジト目で僕を見ている。
「先刻よりも……吹雪いて来たでございまするな。」
「そうだね。」
レイヒト君の呟きに僕は静かに頷いた。
■■■
「ウチとサクモさんが感知魔法や、感知魔法を再現する事が出来る魔術を使われへんかったら……何処に居るかも分からへんようになってたやろな。」
時刻は12時。
サンドイッチをつまみながら、プグナコちゃんが呟いた。
「だね。
パパ。お昼ごはんを食べ終わったら……作戦を始めても良いよね?」
「うん。」
僕は、嫁の質問に頷いた。
【ブォォォォォー】・【ブォォォォォー】
【ブォォォォォー】・【ブォォォォォー】
【ブォォォォォー】・【ブォォォォォー】
【ブォォォォォー】・【ブォォォォォー】
【ブォォォォォー】・【ブォォォォォー】
【ブォォォォォー】・【ブォォォォォー】
【ブォォォォォー】・【ブォォォォォー】
【ブォォォォォー】・【ブォォォォォー】
【ブォォォォォー】・【ブォォォォォー】
猛烈な吹雪が、森の中の木々を激しく揺らす。
「予定通り、【空の目】では、この辺りの地上の様子を確認する事が出来なくなりましたぞ。
最悪なコンディションではあるものの……その最悪のコンディションが、拙者達の存在を消してくれてもいるのでございまするな。」
レイヒト君が、そう言いながら、タブレットPCを動かし始めた。
■■■
「始めるで。」
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
プグナコちゃんが、そう言うと、
念力を使って、1台目のキャビン付きのスノーモービルを龍脈を制御する施設に突っ込ませた。
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
【ドォォォォーン】・【ドォォォォーン】
龍脈を制御する施設に突っ込ませた、1台目のキャビン付きのスノーモービルが大炎上を起こす。
◇◇◇
「流石に……ヒトっぽい物体は無傷かぁ……」
「せやな。
せやけど……サクモさんの隠密魔法の術式と吹雪のお陰で、全く、ウチ達には、気がついてはらへんみたいやで。」
苦笑いする嫁の言葉に、プグナコちゃんが、ニヤリと笑いながら反応する。
「『持続設定』×5。
皆と、このキャビン付きのスノーモービルに無敵タイムをかけた。
そろそろ、突入しようか。」
「了解。」×3
嫁・プグナコちゃん・レイヒト君が、僕の指示に短い返答を返してくれる。
◇◇◇
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
嫁がキャビン付きのスノーモービルを龍脈を制御する施設に向かって走らせる。
【ガラ・ガラ・ガラ】・【ガラ・ガラ・ガラ】
【ガラ・ガラ・ガラ】・【ガラ・ガラ・ガラ】
【ガラ・ガラ・ガラ】・【ガラ・ガラ・ガラ】
先に突っ込ませていた、キャビン付きのスノーモービルとは別の場所に、僕達が乗るキャビン付きのスノーモービルを突っ込ませる。
【キキキキキキー】・【キキキキキキー】
【キキキキキキー】・【キキキキキキー】
【キキキキキキー】・【キキキキキキー】
【ガラ・ガラ・ガラ】・【ガラ・ガラ・ガラ】
【ガラ・ガラ・ガラ】・【ガラ・ガラ・ガラ】
【ガラ・ガラ・ガラ】・【ガラ・ガラ・ガラ】
嫁がシミュレーション通り、僕達が乗るキャビン付きのスノーモービルが、龍脈を制御する施設の中の転移装置がある部屋の中で止める。
「『結界』×10」・「『結界』×10」
嫁とプグナコちゃんが、龍脈を制御する施設の中の転移装置がある部屋の中に結界を張っていく。
「管理者殿。プログラムの入力の指示をお願いするでございまする。」
ゼロヒト君が、そう言いながら、キャビン付きのスノーモービルのドアを開けて、転移装置の前にある机の上に移動する。
ここまでの所要時間は、3分も立っていない。
とはいえ……後、2分強で作業を終えるのは無理だろうな。
無敵タイムは、残念ながら……重ね掛けは出来ない。
僕は、無敵タイムが切れると同時に、改めて無敵タイムを掛け直す為に、頭の中に見える無敵タイムの持続時間のカウントに注意を払い続けながら……皆の為に出来る事は無いか、必死で状況を見守る。
【ガラ・ガラ・ガラ】・【ガラ・ガラ・ガラ】
【ガラ・ガラ・ガラ】・【ガラ・ガラ・ガラ】
【ガラ・ガラ・ガラ】・【ガラ・ガラ・ガラ】
【パリーン・パリーン・パリーン・パリーン】
【パリーン・パリーン・パリーン・パリーン】
【パリーン・パリーン・パリーン・パリーン】
龍脈を制御する施設の中に居たヒトのような物体達が、
龍脈を制御する施設の中の転移装置がある部屋の壁と、龍脈を制御する施設の中の転移装置がある部屋の中に張られた結界を破って、入って来ようとしている。
まるで……ゾンビ映画に出てくる、ゾンビの大群に迫られているような感じだ。
「『結界』×10」・「『結界』×10」
嫁とプグナコちゃんが、龍脈を制御する施設の中の転移装置がある部屋の中に結界を張り続ける。
【カタカタカタカタ】・【カタカタカタカタ】
【カタカタカタカタ】・【カタカタカタカタ】
【カタカタカタカタ】・【カタカタカタカタ】
レイヒト君が、転移装置の前にある机の上に置かれたキーボードを、管理者の指示に従って打ち続けてくれている。
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