最終決戦の直前③
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
大きな機械音を立てながら、2台のキャビン付きのスノーモービルが森の中を進む。
運転手は、嫁とプグナコちゃん。
小一時間ぐらい、ウラオラの町のギルドの人達にレクチャーを受けただけでなのに……自由自在に、キャビン付きのスノーモービルを操ってくれている。
素直に尊敬せざる得ない順応性だ。
◇◇◇
『こちらレイヒト。
ディンエ殿の指示を受けた、ベシアセ連邦のカンガ殿とカリーナ帝国のサイアン辺境伯殿が連名で、
ナヤクラース連邦政府に対して、
ムシェンサン殿が自領に潜伏しているのを発見した場合……
戦闘こそ発生していないが、戦争状態にあるカリーナ帝国に直接、引き渡す事が難しい為、
今のカリーナ帝国の友好国であると思われる、ナヤクラース連邦政府に、その身柄を預けたいのだが、問題が無いかについて答えて欲しい。
っと言う質問を…… わざわざ、ギルド本部を通して、全世界に向けて発信されたございまする。
この発信は、暗に、
【虹を見たい者達】が、カリーナ帝国の北部以外を傘下に収めようとして、新しいカリーナ帝国政府の為政者になるべく者達にクーデターを起こさせたのにも関わらず、
カリーナ帝国の皇族の一人である、ムシェンサン殿を取り逃がした事で、彼達からカリーナ帝国を統治する権限を奪い損ねているマヌケだと言う事を……
世界中に向けて発信したようなものでございまする。
ですから……【虹を見たい者達】は、その威信をかけて、ムシェンサン殿を探しだそうとする筈でございまする。
つまり……拙者達の動きに気がつく可能性が格段に減ったと言う事でございまするな。』
レイヒト君の嬉しそうに話す声が携帯から聞こえてくる。
『ディンエさんも、やるようになりはったやん。
ウチ達へのナイスアシストやな。』
「だね。
とは言え……油断は禁物。
良い流れに乗っかっれている内に、サッサと仕事をすませよう。」
『せやな。
サクモさん。更に、飛ばすで。
事故らんといてや。』
嫁の話を聞いた、プグナコちゃんが、そう言うと、前を進む、プグナコちゃんとレイヒト君が乗る、キャビン付きのスノーモービルのスピードが上がる。
「プグナコちゃんこそ、事故らないでよ。」
嫁は、そう言いながら、キャビン付きのスノーモービルのスピードが上げていく。
■■■
『エアコンが無いんが辛いとこやな。
サクモさんが、魔法瓶にスープを入れとく作戦を思いついてくれへんかったら……寒さで凍え死んでたわ。』
「でしょ。でしょ。もっと褒め称えたまえ。」
プグナコちゃんの言葉に嫁が上機嫌になる。
時刻は20時。
嫁とプグナコちゃんは、休みなくキャビン付きのスノーモービルのスピードを走らせてくれている。
嫁とプグナコちゃんが言うには、
雪が降り積もってくれたお陰で……アスファルトで塗装された道のように走りやすいらしい。
確かに、森の中のダート?獣道?は……凸凹していて走り難くそうだった。
僕達の世界(ムシュ イム アン キ)と違って、結界魔法を板のように使えば、スタックする心配は無いらしいんだが……かなりの集中力がいる作業らしい。
その為、通常、森の中だと、時速30キロ前後のスピードで進むのが限界速度らしいが……
今は、時速60キロ近くのスピードが出しながら進んでいる。
このペースだと、夜中の3時頃には、パールス連邦とナヤクラース連邦の国境の間に広がる、半径500キロ程度の森が広がる緩衝地帯の中にある龍脈を制御する施設に辿り着けそうだな。
■■■
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
【グォォォォーン】・【グォォォォーン】
大きな機械音を立てながら、2台のキャビン付きのスノーモービルが森の中を進む。
『龍脈を制御する施設まで10キロを切ったでございまする。
そろそろ……豪音が出ない低速走行に切り替えて欲しいでございまする。』
『了解。』・「了解。」
プグナコちゃんと嫁がレイヒト君の指示に返答を返す。
時刻は3時。
ここまでは……怖いぐらい順調に進んでいる。
『取り敢えず……龍脈を制御する施設を一望する事が出来る崖の上を目指すで。』
「了解。先導、よろしく。」
『任された。』
プグナコちゃんと嫁が、短いやり取りをしながら、ゆっくりとキャビン付きのスノーモービルを走らせる。
『流石、時速5キロともなれば……音も殆んど音が出ないでございまするな。』
レイヒト君のホッとした声が携帯から聞こえてくる。
■■■
『もうすぐ、日の出の時間でございまする。
プグナコ殿とサクモ殿のお陰で……丁度良いタイミングで崖の上に着けたでございまするな。』
レイヒト君の弾んだ声が携帯から聞こえてくる。
嫁とプグナコちゃんは、時速5キロと言う、歩くよりも少し早いぐらいのスピードで、2時間かけて龍脈を制御する施設を一望する事が出来る崖の上に、キャビン付きのスノーモービルを移動させてくれた。
レイヒト君が【空の目】を使って、状況を逐次、調べてくれているとはいえ……
【空の目】に映し出させる映像だけを頼りに龍脈を制御する施設に突入するのは危険だ。と判断し、この場所から目視でも、状況を確認する事にしたのだ。
「なんか……ドキドキしてきたよ。」
『せやな。』
嫁の呟きに、プグナコちゃんが頷く。
◇◇◇
「レイヒト君。管理者との通信は出来てる?」
『バッチリでございまする。
プグナコ殿とサクモ殿が、キャビン付きのスノーモービルで、龍脈を制御する施設の壁を破壊し、皆で、龍脈を制御する施設の中に突入したら……
管理者殿の指示に従って、転移装置を使ってメイン制御室に飛び、この世界(アン ナブ キ シェア ラ)を開く為のプログラムの入力をするでございまする。』
レイヒト君の緊張した声が携帯から聞こえてくる。
『でっ。ウチとサクモさんが、サルクルさんの無敵タイムの支援を受けながら……
邪魔してきはる奴達を片っ端からシバいていけば良えんやろ?』
「うん。その通り。」
プグナコちゃんの言葉に、僕は……ゆっくりと頷く。
「夜明けが待ち遠しような……夜明けが来ないで欲しいような……不思議な気分だね。」
「確かに。」・『確かに。』×2
嫁の呟きに僕を含めた、皆が、頷く。
■■■
「【空の目】の映像と、目視で見た状況が一致したわ。
プグナコちゃん。突入ポイントまで、ゆっくりと移動するよ。」
『了解。』
嫁の指示にプグナコちゃんが、緊張した声で返答を返す。
「また、雪が降り始めたわね……
せめて、突入ポイントに着くまでは……回りが見えないぐらい激しくは降らないで欲しいわね。」
『せやな。』
嫁の呟きに、プグナコちゃんが短い返答を返す。
「敵に気がつかれさえしなければ……突入するタイミングを遅らせても問題無い。と思う。
だから、取り敢えず……音が出ない低速走行で、行けるとこまで行って。」
「了解。」・『了解。』
僕の指示に、嫁とプグナコちゃんが短い返答を返してくれる。
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