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ニートを夢見る脇役達の異世界解放奇譚  作者: モパ
【第2章】大戦前夜
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商談①

「疲れたぁ。」


プグナコちゃんが、タメ息をつきながら話す。



時刻は、17時。


ジハリマの町に入るのに、2時間もかかるとは思わなかった。


ただ、有り難かったのは、食事付きの宿屋が直ぐに見つかった事だ。



「まぁ……異世界物のテンプレ。

城門で揉め事に会う。がなくて良しとしよう。」


「せやな。」


嫁の言葉にプグナコちゃんが、深く頷く。


「明日の予定は、午前中はギルドに登録。


午後から、トレーラーを牽く為のキャンピングカーを改造してくれる職人さんを探す。


でっ。余裕があれば、トレーラーや植物油を買い込む。


こんな感じだよね。」


「せや。

てか……明日の行動予定の確認をしはるとか、意外と真面目なんやな。」


プグナコちゃんが、目を丸くしながら、僕を見ている。


「一応、大人だからね。」


「頼りにしているでございまするぞ。


そうそう。ギルドの鑑定装置は、異能をジョブ補正に変換した形で等級を振り分けてくれるでございまする。


まぁ……サルクル殿達、変異点の異能は、各々が決める為、正しく、異能をジョブ補正に変換して頂けるかは、微妙なところではございまするが……


拙者達は、各々が、偽装する職業に準じたジョブ補正に対応した等級を正確に出して貰えると思いまするぞ。」


レイヒト君が、得意げな顔で調べてくれた内容を共有してくれる。



■■■



「メニューが町中華。って感じやったんで、なんやガッカリしてたんやけど……間違うてたわ。


ここの飯はアタリや。めっちゃ、ウマイわ。」


「憧れてた、異世界物のパンとスープと干し肉が、メニューに無いと知った時は、この世の終わりかと思ったでございまするが……


今は、出された、ご飯で良かった。と心の底から思えるでございまするな。」


満面の笑みを浮かべて話す、プグナコちゃんの言葉に、レイヒト君が満面の笑みを浮かべながら頷いている。


「欲を言えば、ビールが欲しかったな。

この、お酒が、マズイ訳ではないんだけれども……特に、この餃子。このお酒よりも、ビールの方が、絶対、合う気がするんだよね……」


宿屋の店員さんが勧めてくれた白酒を飲みながら、嫁がタメ息をついている。


「てか……植物油だけでなく、ビールも、あるなら広めてみない?」


「ビールでございまするか。

後で調べてみるでございまする。」


嫁の話を聞いたレイヒト君が、得意気な顔で話す。



◇◇◇



【ガラ・ガラ・ガラ】



引き戸の開ける音がする。



僕達が泊まっている宿屋さんの一階は、食堂になっていて、宿屋さんに泊まらない人も、ご飯を食べに来るらしく、客足が途絶える気配がない。



「この店は、相変わらず混んでるな!」


「お久しぶりで~す!」


苦笑いしている、革の鎧を着込んだ、熊みたいな大男に、店員さんが嬉しそうな顔で挨拶をする。


「元気してた?」


「はい。元気だけが取り柄ですから!」


革の鎧を着込んだ、熊みたいな大男の後に続いて店に入って来た、尖った耳をした美女の質問に、店員さんが笑顔で答える。



「モフモフした、熊のような男性に、尖った耳の美女。


ここが、異世界(アン ナブ キ シェア ラ)だと言う事を実感させられまするな。」


レイヒト君は、そんな、やり取りをキラキラした目で見ている。


「せやな。」・「それ分かるわぁ。」


レイヒト君の言葉に、プグナコちゃんと嫁が頷いている。



「あらあら。

アタシ達からすれば……異世界(ムシュ イム アン キ)から来られた、アサグ様達の方が珍しい存在ですわよ。」


尖った耳をした美女が、笑顔で話しかけてきた。



◇◇◇



「何故、そう思うのですか?」


「そんなに警戒なさらないで下さいな。


この店は……亜人が経営し、亜人が寝泊まりしたり、食事をする店。


特に、この国の人属で、この店を訪れる者は、基本、貧困層。もしくは……亜人を差別しない変わり者ぐらいだからよ。



だけど、アタシの見立てでは、お金に困って無さそう。


それに……亜人を軽蔑したような目はしていないけど……物珍しそうには見ている。


これは……召還されたての異世界(ムシュ イム アン キ)人の反応。



でっ。何故、皆様が、アサグ様。って思ったのかと言うと……


そこは、勘としか言えないわ。


だけど……間違っては、いないでしょ?」


尖った耳をした美女が、にこやかな笑みを浮かべながら質問をしてくる。


「おい。

アルコ。詮索なんてして失礼だぞ。」


熊のような大男が、尖った耳をした美女に苦言を呈している。


「もう。ベアゾウは……


亜人を差別しない、チートな異世界(ムシュ イム アン キ)人なんて……戦争に向けて舵を切る、カリーナ帝国のやり方を嫌う人達に決まってるじゃん。



ねぇ……大森林地帯に入るならば……道案内で雇ってみない?


ただし……アタシはエルフで、こいつは獣人。

だから、他種属を嫌う排他的な場所へは連れてけない。そこは勘弁してね。って……


まぁ、そいつ達は……そもそも、人属である貴方達も迎え入れてくれない。だから問題無いわよね?」


尖った耳をした美女は、熊のような大男に言い返すと、

僕達に、人懐っこい笑みを浮かべながら、グイグイと話しかけてくる。


「この美女から、悪意や敵意は感じ無いでございまするぞ。」


「そう。じゃあ……席も空いてる事だし、

アルコさん。ベアゾウさん。一緒に、お食事でもしませんか。」


レイヒト君の言葉を聞いた嫁が、尖った耳をした美女と熊のような大男に、相席を持ちかけた。



■■■



「アタシは、アルコ。【賢者】のジョブ補正を受けているエルフ。


でっ。こいつは、ベアゾウ。【踏破者】のジョブ補正を受けている、熊型の獣人よ。


でっ。どう?

アタシ達を雇う気はある?」


アルコさんが、グイグイと迫る勢いで質問をしてくる。


「アルコさんは、大森林地帯に行きたいのですか?

そんでもって、何故、僕達に雇われたいのですか?」


「ギルドに登録されている冒険者は、有事の際は、その拠点とする場所の領主からの案件を優先的に引き受けないといけない。って言う慣例があるの。


だから、領地を拝借している貴族達は、自領を拠点としている高ランクの冒険者の動向を、常にチェックしてるの。



それは、この町や周辺の衛星村を領地に持つ、ジハリマ侯爵も例外ではない。


そして……アタシ達は、ジハリマ侯爵領を拠点として活動している、Aクラスと言う高ランクの冒険者なの。


なので、アタシ達の動向は、常にチェックされているの。



だから、もし、明確な理由もなく、カリーナ帝国の領土を出れば……カリーナ帝国軍は、アタシ達が、カリーナ帝国の世界征服計画を嫌い、国外に逃亡した。と認定し、追っ手を差し向けられる可能性もあるの。



だからこそ、アタシ達のように、カリーナ帝国の世界征服を良く思わない高ランクの冒険者は、


カリーナ帝国領を出ようとしているであろう、それなりの武力を持っているが、非戦闘員を装ってる人達に対して、積極的に道案内や護衛として雇って欲しい!と売り込んでいるの。」


アルコさんが、周りの目を伺いながら、ヒソヒソ声で話す。



◇◇◇



「この方は、嘘をついてはいないでございまする。」


レイヒト君が、僕達を見ながら、ヒソヒソ声で話す。


「成る程ね。


事情は良く分かった。


わたし達は、明日、ギルドに登録する予定。


でっ。その後、車をトレーラーを引っ張れるように、改造してくれる職人さんを探したり、

荷物を運ぶ為のトレーラーを購入したり、

大森林地帯で売ろうと考えている、植物油を買い込んだり、と忙しい。


もし、その仕事の手助けもしてくれる。って言う話なら……雇ってあげても良いわよ。」


嫁が、そう言いながら、アルコさんとベアゾウさんをジッと見る。


「まず、ギルドへの登録は、この町でしない方が良いわ。


何故なら、アタシの見立ててでは……

少なくとも、女性陣は、望む・望まないは別として、高ランクの冒険者にカテゴライズされる筈だからね。



それと、車をトレーラーを引っ張れるように、改造してくれる職人は、最高の人材を紹介するわ。


そんでもって、荷物を運ぶ為のトレーラーや、植物油の購入も手伝わせて貰う。



この内容ならば、商談は成立するかしら?」


「嘘も悪意も無いでございまする。」


アルコさんの話を聞いた、レイヒト君が、ヒソヒソ声で話す。

評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。

頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。

宜しくお願いします。

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