本性
「メイさん、ルナさん、マイさん。こちらにいたのですね。」
この学園に似合わない服を着た男の人が歩いてきた。
黒いスーツに黒メガネ、見たことないな。
「うちの妹とその友達に何の用ですか?」
「うん?あぁ、使えないお兄さんでしたか。あなたには用が無いので。」
なんか癪に来る言い方だな。
「こっちはこれから用があるんで。」
「用?それなら私にもありますが。」
「だから、先に帰らせてもらう。」
妹の手を掴んで、友達たちにも俺の後ろに来るように言った。
「時間がもったいないので失礼します。」
「いや、させません。このままお3人にはとても重大なお話があるので、学園にいれるかいられないかのとっても大事なお話です。」
それを聞いて妹以外の友達は神妙な顔つきをした。
妹はカレーがまだ食べ終わっていなかったので、しょんぼりとしていた。
そこで俺は核心を突くある言葉を言った。
「どうせ、洗脳だろ。その重要な話ってやつは。」
ビンゴ、男は動揺した。
その瞬間をついて、俺たちは走った。
「お、おい待て!今すぐ捕まえろ。」
仲間がわらわらと集まってきた。
見たこともない見るからに怪しい人がたくさん出てきたので、学食内は騒然としていた。
「絶対俺から離れるなよ。まさかこんなすぐ才が使えるとはな。」
【回避】を発動させる。
俺のスピードが格段と上がり、身体が軽くなった。
「あれ、私もなんだか、軽いような...。」
「ほんとだ。」
「カレー...。」
そう、俺の2つ目、3つ目の才は、【反映】と【共有】だ。
虚偽で偽りの才を提示し、反映でその才を実現させる。さらにそれをほかの人にも共有することができる。
「このままいくぞ。」
爆速で学園を走り抜け、男を振り切り、家まで入ることができた。
「大丈夫か?」
「え、えぇ、はぁはぁ。」
「だ、だいょうぶ、です。」
「あいー。」
ひとまず友達は疲れ切ってるみたいなので家に上がらせて、冷水を出してあげた。
「ありがとうございます。」
「美味しい水。」
「私のはー?」
「自分で出せ。」
「ほーい。」
水を飲んで落ち着いたとこで、マイちゃんが聞いてきた。
「さっきの黒い服の人は誰だったんでしょうか。」
「俺もよくわからないが、絶対これだけは言える。あいつらは危険だ。」
嘘をついた。俺は知っている。知っているからこそ伝えるタイミングは慎重にならないといけない。
「お兄ちゃん、この二人は信頼していいと思います!」
「メイちゃん?」
「え?」
「メイにそこまで言わせるとは、いい友達が出来たんだな。」
「じゃあ隠し事はなしにしよう!」
「隠し事?」
「そう!私はメイ!才はSランクを5つ所持してるの!」
あー、もう言っちゃった。
「な、何言ってるの?」
「メイちゃんはAランクの才でしょ?」
「うそうーそ!騙してごめんね。」
二人は困惑してるようだ。
「メイが突然すまんな。俺の口から言わせてくれ。」
「は、はい。」
「えぇ。」
「俺はルー。俺は妹と一緒に戦争に行ってきた。聞いたことはあるはずだ、天災戦争という名を。」
天災戦争。
今から5年ほど前に起きた才を持った権力者による、死者を大勢出した人類の汚点と言えるぐらいの、戦争だ。日常生活が無事に過ごせなくなると思った、俺たち兄妹はその戦争に行った。そして生きて帰ってきた。他の者を皆殺しにしてな。
当時あまりにも強大だった俺たちを止める者が誰もいなくて、権力者たちは恐怖を抱いていた。
その権力者の部下たちが俺たちを始末しようと暗躍しているらしく、学園内で秘密裏に行われている才ある者の教育、いわば洗脳だ。
本来自由であるはずの才を制限させられて権力者の駒となって生活していく、惨めでかわいそうだ。
俺たちは自由に生きる。また俺たちの生活を奪うことが起きるようならば、俺たちは容赦しない。
「まぁざっくり言うとこんな感じだな。さて、今君たちの前にいるこの兄妹は人殺しであるがどう思う?」
まぁ突然こんなことを言われて、はいそうですか、と信じる奴なんていないと思うが、どうなる。
「もしかして今日姉が同じ部屋にいたのって、まさか...。」
「姉って誰だ?」
「トモエです。」
マイちゃんのお姉さんがトモエだったのか。
姉妹そろって良い才に恵まれているな。
「じゃあもしかしたら、今頃お姉さんはかわいそうな目にあっているだろうな。」
「そ、そんな...。」
「学園にそんな闇があったなんて。」
「みんなちょっと出かけてくるね!」
もうそんな時間か。
「ど、どこに行くの?メイちゃん。」
「ん?あー、そっか知らないんだね。」
「何するの?」
「うーんとね、さっきお兄ちゃんが言っていた権力者の部下?まぁ、私とお兄ちゃんの生活を脅かす奴らの駆除に行くの!」
いつもとかわらない表情でとんでもないことを言ってる妹に、マイちゃんとルナちゃんは固まっていた。
「く、駆除ってどうするの...?」
「もちろん!才を使って。」
妹の才はとんでもない。まるで、戦闘のためだけに生まれてきたやつみたいな、才を持っている。
それだけじゃない。破壊や死、女の子からは考えられないような恐ろしい才を5つも所持してる。
「メ、メイちゃん。」
「なーに?ルナちゃん。」
「私怖い。怖いよ。」
「ん?」
「あんたみたいな殺人者が友達だったのが怖いの!」
「......。」
まぁ当然の反応よな。
マイちゃんはどうかな?
「ル、ルナ。落ち着いて。」
「落ち着けないよ。突然こんなことを言われても理解できないよ。」
「それは、そうだけど。」
「それに、あの戦争のことも。普通に怖いよ。」
「で、でもお姉ちゃんが...。」
「私には関係ないでしょ。巻き込まないで!」
なんか悪い方向にことが進んでる気が。
「お兄ちゃん。やっぱり駄目だったね。」
妹の顔が無表情になる。
「どうする?壊しちゃう?」
「ひっ!」
「え?」
「ルナちゃん、マイちゃん。友達だと思ってたのに残念だなぁ。」
「ち、近寄らないで!」
メイはゆっくりとルナちゃんに近づき、右肩に手をいて耳元でささやいた。
「殺すぞ?」
あまりの恐怖に泡を吹きながらバタンと倒れこんでしまった。
「マイちゃんはどうする?」
「きょ、脅迫のつもり?」
「うーん、違うんだけどなぁ。お姉ちゃんどうなっちゃってもいいの?壊れちゃうよ?死んじゃうよ?いいのかな?」
「ぁ、あ......わ、私はお姉ちゃんを助けたいだけ。」
「じゃあ仲間だね?」
「メイ。おまえ、友達との付き合い方完全に間違ってるぞ。」
流石にかわいそうだと思い、メイを止める。
「やっぱり友達って大変だなぁ。」
「うーん、マイちゃん。安心してくれ。俺たちは君たちに危害を加えることはしない。
それにこんな話をしてる間も、もしかしたら洗脳ははじまってるかもしれないしね。」
「お姉ちゃんを助けたいです!協力してください!」
マイちゃんはお姉ちゃんに弱いんだね。ふむふむ。
あとあと使えそうだな。
「よしいきなり急展開だけど早速学園に戻ってお姉ちゃんを助けに行こうか?マイちゃん。」
「ル、ルナはどうするんですか。」
はっきり言って邪魔なんだよな。
ルナちゃんどうしよっか。
「お兄ちゃん!いい考えあるよ!おとりにしよう!」
おとり発言にマイちゃんはドン引きしてる。
だが良い発想だ。ナイスだ妹よ。
「ルナちゃんは俺が連れてくよ。俺たちは危害は加えないよ。絶対にだ。さ、トモエ救出作戦と行こうか。あ、そうだメイ。」
「ん?」
「駆除は学園内でやるからそっちはいかなくていいからな。」
「あいよー!」