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冒険者見習いの頃~凍風の季節~【1周年記念ゲスト様企画(4)】

【連載1周年記念特別企画!】

 小説家になろうで連載中の『サキュバスの娘だって冒険したい ~転生したら淫魔の娘だったので、魅了や触手を駆使して世界を堕とします~』(三文小唄先生)から、主人公フラムさんと、アイリスさんにゲスト出演していただきました。


※ゲストさんの作品内の話は、ケモモフの世界にはありませんので、その部分のみ作品内フィクションとしてお読みください。


(2021/04/17 掲載)

 実りの季節を過ぎると、少しずつ風の冷たさが増していく。もうこの頃にはだいぶ寒さが身に刺さるようになってきた。


 この季節には『冒険者見習い』が受けられる依頼は少ない。野原で採取できる薬草などは育ちが悪いし、虫や小動物たちも身を潜めてしまっている。

 あと出来る事は先輩冒険者たちの、付き添い手伝いくらいだ。でも魔獣以外に自然も敵になるこの季節には、私のような下っ端を連れて行く事で、逆に命取りにもなりかねないので敬遠される。

 そうなると、私がやれるような冒険者の仕事は少なくなってくる。なので、逆に『樫の木亭』での手伝いの時間が増えていた。


 『樫の木亭』では、接客の手伝いだけではなく、来客の少ない時間などに仕込みなど厨房の手伝いもしている。

 もともとそれなりに料理はできたけれど、店主のトムさんのお陰で新しい料理をたくさん作れるようになった。出来が良ければ、お客さんに出してもいい事になっている。



 仕込みが一段落したところで店に出ると、ちょうどドアのベルがカランと鳴った。「いらっしゃいませ」と声を上げるより先に、来客の可愛い声が響いた。

「ほら、ご主人様。ここで何か温かい物でも頂きましょう!」


 可愛い少女の二人組だった。その様子は、旅人というより町歩きの友人連れの様だ。でも旅の荷物を持っているし、この辺りで見かける顔でもない。


 改めて「いらっしゃいませ」と声をかけると、二人とも愛想良く笑った。


 なんとなく、明るい席の方が良いような気がして、窓際の外がよく見える席に案内した。

 メニューを渡すと仲良く二人で頭を突き合わせて覗いている。


 二人とも獣人……とも思えるような姿をしているが、でも何か違うようだ。


 入ってすぐに声を上げていた金髪に華やかなドレスを着た少女の頭には羊の様な角が生えている。でも腰からはコウモリの様な羽が生えているし、あんな種族は見た事がない。

 金髪の少女が『ご主人様』と呼んだ少女は、真っ白な綺麗な髪をしている。ぱっと見は人間にも見えるが、よく見ると背中に小さな翼がついている。片翼かと思ったら、右の翼は小さすぎて目立たないだけみたいだ。スカートの裾から何かがちらちらと見え隠れしている。あれは尻尾かな?


 自分より幼く見える、しかも少女の旅人がなんとなく珍しく思えて、ついつい気にしていると、顔を上げてこちらを見た白髪の少女と目が合った。


「あ、お決まりですかー?」

 慌てて、注文を取りに行った。



 寒い日だからと理由を添えて、二人は具沢山のシチューを注文した。ごろごろ野菜の間に負けないくらいのヤマキジ肉の塊が入ったシチューは、この季節の人気メニューだ。

 チーズを乗せて焼いたパンと一緒に持って行くと、二人の顔が嬉しそうに(ほころ)んだ。



「あの子たち、まだ小さいのに旅は大変だろうな」

 厨房から顔を出して店内を見回したトムさんが、彼女たちを見ながら言った。


「なあ、リリアン。今日お前が作ったデザート、彼女たちに味見してもらったらどうだ?」

「いいんですか? あれ、常連さんに味見してもらうって……」

「男連中に出しても、味はわからんだろう。甘いものの事は、ああいう女の子に聞いた方がいい」

 うん。それはそうかもしれない。

「それに、彼女たちに旅の話を聞けたら、いい経験になるだろう?」


 なるほど。トムさんはまだ冒険者見習いの私の勉強になるようにと、気遣って言ってくれてるんだ。

 その気持ちを有り難く思いながら、彼女たちの席にデザートを持って行った。


「お食事いかがでしたか? これ、おまけのデザートです」

「ありがとうございます」

 白い髪の少女が嬉しそうに応えた。

「とても美味しかったんですの! ねえ、ご主人様」

 金髪の少女もニコニコと嬉しそうだ。


 二人の前にデザートの皿とお茶を置く。

 皿に乗っているのは、甘く煮たリンゴが入った温かいプティングだ。

「私が作ったんです。お味の感想と、あとよろしければお二人の旅の話など聞かせてもらえませんか?」

 そう願うと、二人は微笑んで(うなず)いた。



 プティングに匙を入れると、湯気と一緒に甘い香りが上がってくる。一口食べようとして、ふぅーと熱さを吹くと、二人の少女も同じく口を尖らせている所に目が合って笑ってしまった。


 白髪の少女はフラムさん、金髪の角のある少女はアイリスさんと名乗った。

 やはり、二人は旅をしているのだと。

 フラムさんは『サキュバス』という種族だそうだ。でももっと幼い頃から冒険者になりたくて、故郷を出て……というか、つまりは家出をしてきたそうだ。


 サキュバスと言うのは、男性から精を得る……て、つまりは、オトナの『夜のオツキアイ』をしてアレコレする種族らしい。って、聞いててちょっと恥ずかしくなってしまった……

「サキュバスにはなりたくなくって、家を出たくって、それで頑張って魔法を覚えたの」

 フラムさんは身をのりだしながら、そう言った。

 でもやっぱりサキュバスだから、その事で色々な問題もあるらしい。


 冒険者を目指す旅の途中で、アイリスさんと出会った。アイリスさんは、本当は人間だったそうだけど、フラムさんの能力のせいで同じ種族になってしまった。

 アイリスさんがフラムさんをご主人様と呼ぶのは眷属だからだけれど、でも二人は友達でもあるそうだ。


「種族が変わるとか、そんな事あるんですか?」

 私の疑問に、フラムさんが申し訳なさそうに答えた。

「私のスキルの所為(せい)で、こうなっちゃったんです……」

「あら! ご主人様の所為なんかじゃないですわ!  私、この姿になれて、ご主人様と一緒に旅が出来て嬉しいんですの」


 旅の途中にも危険な目にあったりと、やはり楽ではない経験をしているようだ。

 でも仲の良いこの二人は、その中でも楽しいとか嬉しいとかそういう気持ちを互いに見つけて、旅をしているんだろうなと、そういう風に思えた。


 リンゴのプティングは二人から好評を頂いた。

「昔、食べたデザートと同じような味がして、なんだかとても懐かしかったです」

「また来ましょうね。ご主人様」


 「ご馳走様」と声を揃えて言うと、二人は笑顔で手を繋ぎながら店を出て行った。


 * * *


 この寒い季節を乗り越えて、日差しの暖かさに花の(つぼみ)が緩む頃になれば、王都に来て丸1年に。そしてさらにひと月もすれば、15歳の誕生日を迎えて冒険者になる事ができる。

 やっと前世で果たせなかった夢を叶える為に進むことができる。


 でも、私が本当に望むものは……

『サキュバスの娘だって冒険したい ~転生したら淫魔の娘だったので、魅了や触手を駆使して世界を堕とします~』(三文小唄先生)

http://ncode.syosetu.com/n6660go/


女子学生だったういは、"転生教"の信者を名乗る男に刺殺され異世界で転生する。

しかもサキュバスと天使の間に生まれた、堕天使フラムとして。


お母さんは私をサキュバスとして育てようとするし、どうすればいいの!?


10歳の誕生日に家を出たフラムは、金髪碧眼の美少女アイリスと出会う。

人間から淫魔になってしまったアイリスと共に、冒険者となり世界中を巡る旅に出る。


しかし、世界は刻一刻と陰謀渦巻く戦争へ落ちていく。

それに巻き込まれた二人は世界を敵に回し、世界を堕とすことになるのだった。

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小唄先生、ご参加ありがとうございましたー

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