冒険者見習いの頃~実りの季節~【1周年記念ゲスト様企画(3)】
【連載1周年記念特別企画!】
小説家になろうで連載中の『転生したら神とかチートすぎませんか!?~異世界で始まるメティーのかくれんぼ生活~』(りむ先生)から、主人公のメティーさん、シアさんにゲスト出演していただきました。
※ゲストさんの作品内の話は、ケモモフの世界にはありませんので、その部分のみ作品内フィクションとしてお読みください。
(2021/04/13 掲載)
冒険者でないからといって、獣を狩ってはいけないわけではないし、まだ見習いだからといって、初心者用のクエストすら受けられない訳ではない。
冒険者見習いの私でも、薬草の採集やヤマキジの狩猟とかなら、クエストとして受ける事もできるし、大人たちに止められる事もない。
最近は『樫の木亭』の台所をお借りして、店で出す料理の練習をさせてもらっている。今日もそれに使う材料を狩りに森に来ていた。
幼い頃から獣は狩っていたし、なんなら前世の経験だってある。もっと大きな獣も狩れるんだけど、あんまり派手にやると大人たちをびっくりさせてしまう。
軽く走りまわって、ウチワウサギを数羽捕まえた。
このまま真っすぐに帰ってもいいのだけれど、ちょっと時間が中途半端だし。
どうしようかなと思っていると、抜けてゆく風が甘い香りを運んでいるのに気が付いた。この香りはイチジクだ。
匂いを辿ると、熟した実を沢山つけている木を見つけることができた。これもいいお土産になるね。
デザートも手に入ったし、のんびりとお昼を食べてから帰ろう。そう思って森の開けた場所を見つけて荷物を下ろした。
マジックバッグから出した小さめの敷物を広げる。ロディさんの店で買ってきたパンを取り出し、さあこのパンに何を合わせようかと迷っていると、後ろの茂みからごそごそと物音がした。
といっても、殺意などは全く感じない。ウサギかネズミか、もしかするとウズラかもしれない。
そう思って少し顔を後ろに向けた途端に、茂みから何かが飛び出してきた。
「しっぽりゃーーーー」
舌ったらずの『何か』は可愛い声を上げながら、とてとてと走ってくると私の尻尾にしがみ付いた。
「はう!!」
つい変な声が出た。さらに驚いて尻尾を振ってしまい、しがみ付いたその子は振り払われて、こてんと転がってしまった。
「ああーー!! ごっ、ごめんなさいっ」
慌てて駆け寄って助け起こす。小さい女の子だ。こんな所に一人でいるのがおかしいくらいにまだ幼い。
白髪の幼女は、碧玉の綺麗な瞳を丸くさせて、じっと私を見つめた。
「大丈夫? 怪我とかしていない?」
そう顔を覗き込んで声をかける。見ると、膝を擦り向いてしまったようで、少し血が滲んでいた。
「ごめんね。今、治すからねっ」
「らいじょーぶよー」
私が回復魔法を使おうとする前に、彼女の手が傷口に掲げられた。淡く白い光が擦り傷を包むと、彼女の膝からすっかり傷が消えてしまった。
「あ? あれ?」
回復魔法だろうか? その割に魔力を感じなかったけれど……
見慣れぬ光景に少し戸惑っていると、その女の子がぱあっと顔を輝かせてしがみ付いて来た。
「おみみ!! きゃあいい!!」
ふわーー……
えっと、これだけ元気なら大丈夫そうかな。
でもこの子はどこから来たんだろう? 近くに親御さんが居るんだろうか?
そう思いながら、胸元にしがみついている女の子の頭を撫でていると、「ダメだよ、メティー。その人困ってるよ」と声が聞こえた。
先程の茂みから出てきたのは、私と同じ様な耳と、私とは違ったしなやかな尾を持つ獣人の少年だった。
ナッツを混ぜ込んであるパンは、火魔法で炙るととても良い香りがした。そこに昨晩作っておいた小さめのハンバーグを、野菜とチーズを添えて挟む。
でもあんまり色々挟むと、大きくて食べにくいかもしれない。ハンバーグは切った方がいいかもなあ。
ふと視線を感じて顔を上げると、期待したように目を輝かせる女の子と目があった。今すぐにでも食べたそうだ。お腹が空いているんだろう。
「お待たせ。はい、どうぞ」
それならこのままでいいかと思い直し、彼女にサンドイッチを手渡した。すると、少年の視線がそれを追うように動く。彼もすぐにでも食べたいようだ。
もう一つを少年に手渡すと、二人とも嬉しそうな顔で、大きく口を開けてかぶりついた。
ランチをしながら二人の話を聞いた。
女の子――メティーちゃんは、ちょっと不思議な感じがする子で、どうやら以前の記憶を失くしているらしい。
表の見た目と中身の雰囲気が違うような…… そんな気がした。なんだか私みたいだ。
「あたしを しーちゃんが たしゅけて くれたんれしゅ」
彼女は舌ったらずな口調で、そう言った。
メティーちゃんは、しーちゃんと呼ぶ獣人の少年と二人で暮らしているそうだ。
彼は仲間から差別をうけていて、メティーちゃんも悪い人から狙われている。なので、二人で身を隠しているらしい。
こんな小さな子供が狙われるなんて、何か特別な理由があるのだろうか?
そう思うと「そうだよ」と彼が言った。口には出していないのに、彼には何故かわかったらしい。
「メティーには特別な力があるんだ。それを利用しようとしているヤツらがいるんだ」
彼が言うには、メティーちゃんには癒しの力や、望む事を叶える力があるそうだ。なるほど、さっきの擦り傷を治したのは、その力なんだろう。
「おねえさんにも秘密があるんだね。お互い内緒だよ」
そう言って、彼は人差し指を軽く口元に当てた。
彼は食事のお礼だと言って、獲ったばかりのヤマキジを1羽くれた。さっきはご飯用の狩りをしていて、メティーちゃんとはぐれてしまったらしい。
お返しにと、さっき採ったイチジクを半分分けると、甘い香りに二人の表情がまたほころんだ。
「ありがとう、気を付けて帰ってね。メティーちゃん。えっと、しーちゃんくん?」
「……シアって言うんだ」
「え……?」
懐かしい、前世の仲間と同じ名前を聞いて、心が止まった。頭に浮かぶのは栗色の髪で、いつも笑いながらふざけてみせていた青年の姿だ。
「……その人、大事な人?」
まるで私が思い出した青年の姿が見えたかのように、シアくんは私に尋ねた。
「ああ…… うん…… 昔の、大事な仲間……」
「会えると良いね」
そう言って手を振ると、二人は行ってしまった。
寄り添って行く二人の後ろ姿に、前世の仲間との旅を思い出してしまって、ちょっと懐かしく、でもちょっと寂しい気持ちで見送った。
『転生したら神とかチートすぎませんか!?~異世界で始まるメティーのかくれんぼ生活~』(りむ先生)
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前世の記憶を失って転生したメティーは、神メシアの力――「癒しの力」と「願いの力」が使える為、ネコ耳獣人のシアと隠れて暮らしている。
しかし、その力を利用しようとする悪い者たちに追われてしまう。
魔法や武器で繰り広げられるバトル!
芽生える儚い恋……。
そしてなぜかモテモテ!?
失ったメティーの記憶とは何なのか……。
~異世界ファンタジー×異世界恋愛~
異世界で始まる壮大なかくれんぼ!
果たしてメティーは逃げ切れるのか……。
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りむ先生、ご参加ありがとうございましたー