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リリアンのバレンタイン(バレンタイン特別企画)

バレンタイン特別企画!

 小説家になろうで連載中の『貴族家三男の成り上がりライフ~生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する~』の作者、天翔先生とコラボさせていただきました。

 リリアンたちのバレンタインの一日をどうぞお楽しみください!

 アルライン視点のお話は下記のページにて公開しておりますので、ぜひそちらもお読みください。


『貴族家三男の成り上がりライフ~生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する~』

 https://ncode.syosetu.com/n1580gh/



◆登場人物紹介(『ケモ耳っ娘になったからには~』)

・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。黒の長い髪に黒い瞳、黒い狼の耳と尾を持つ。小柄で胸も控えめ。15歳で冒険者デビューしてまだ半年足らず。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。

・デニス…リリアンの先輩のAランク冒険者。23歳。栗毛で長身のさっぱりイケメンタイプ。後輩の面倒見が良く皆からの信頼も厚い。リリアンに好意を抱いているが、今一歩踏み出せずに告白も出来ずにいる。

・ニール…冒険者見習いとして活動している、貴族の少年。14歳。お坊ちゃんらしく、さらさら金髪に翠玉(エメラルド)の瞳の持ち主だが、性格は貴族らしからぬヤンチャ坊主。初めて出来た友達(リリアンたち)に浮かれ気味。

・ミリア…リリアンの友人で、狐獣人の少女

・シア…リリアンの前世の仲間の一人。彼女にずっと想いを寄せていたが、想いが通じた事は無い(断言)


◆登場人物紹介(『貴族家三男の成り上がり~』)

・アルライン……本編の主人公。10歳。前世の記憶を持つ貴族の少年。とても綺麗な顔立ちをしている。優しげで丁寧な口調から女の子に大人気。Bランク冒険者。

・シルティスク……10歳。第一王女で超がつく美少女。アルラインのクラスメイト。ギルドで不良冒険者に絡まれたところをアルラインに助けてもらって一目惚れ。以来ずっとアルラインのことが好き。Fランク冒険者。

・リエル……12歳。金髪に銀のメッシュが入っており碧眼。アルラインの従姉妹。ブラコンでアルラインのことが好きすぎる。


※本作品内にバレンタインはないので、この企画のみの設定になります。


(2021/02/14 掲載)

 先週の事だったか、やたらご機嫌なミリアちゃんが話を振ってきた。


「もうすぐバレンタインだよねっ。リリちゃんはどうするのー?」


 バレンタイン。

 人間の国の風習で、女性が好きな男性にチョコレートを贈る日だそうだ。そこからお付き合いに発展する事もあるのだとか。私の生まれた『獣人の国』にはそういう風習はない。


 前世では色恋沙汰(いろこいざた)には縁が無かったので、自分には関係ない行事だと思っていた。そう言えば、その日にはシアがやたらと落ち着かない様子だったのを覚えている。翌日のがっかりした様子を見ると、意中の相手からチョコを貰う事が出来なかったのだろう。


「好きな人にだけじゃなくって、お世話になった人や仲の良い人にもあげたりするのよ」

 なるほど、お礼の意味なんかもあるのかな? ミリアちゃんは、デニスさんやシアさんにあげるらしい。ニールやアランさんにも用意しているそうだ。

 うーん、それなら私も用意をしておいた方がいいのかな。


 * * *


 今日もいつもの様に冒険者ギルドに来たのだけれど、なんだかギルド内の雰囲気が変だ。皆がやたらとそわそわキョロキョロとしている。さっさと依頼を受けてクエストに行けばいいのに、そういう感じでもない。何かあったのだろうか?


 依頼ボードを見てみると、なんだかやたらとスッキリしている。依頼が少ししか貼られていない。

 受付のカナリアさんに理由を尋ねると、苦笑いをしながら教えてくれた。

 「毎年この日は、いたたまれない男たちは早朝から依頼を受けて出掛けちゃうのよねー。どんな依頼でも出掛ける理由が欲しいみたい。町には居たくないんですって」

 なので、めぼしい依頼はすぐに売れてしまったそうだ。いたたまれないって、どういう事なんだろう?


 しょうが無いよね。町でもぶらつくか、ミリアちゃんの所にでも行こうかなーなんて思っていたら、デニスさんがふらりとギルドにやって来たのが目に入った。


「あ、デニスさん、こんにちはーー」

「ああ、リリアン。ここに居たのか」

 そう言って手をあげる。どこかから「チッ」と舌打ちの音が、人間よりも良く聞こえる獣の耳に届いた。


「今日はなんか用事あるか?」

「いいえー。依頼でも受けようと思ったんですけど、良いのが無くてー」

「ならちょっと買い物にでも付き合ってくれねえか?」

「はいー、いいですよー」

「ああ、(わり)いなー 俺じゃわからない買い物もあるから助かるよ」

「ついでにカフェとか行って、甘いもの食べたいですー」


 今日はやっぱり周りがざわついていて、ここに居てもどうにも落ち着かない。そんな話をしている間にも、ドンっ!と壁を叩く音やら、あちこちからまた舌打ちの音が聞こえてくる。

「さっそく行きましょー」

 さっさと退散したくて、デニスさんの手を取ってギルドを出た。後ろの方から誰かが「もげろ」と言うのが聞こえた。どういう意味なんだろう??



 いつものルートで武器や防具の店を軽く冷やかして、そこから一般の町人向けの(にぎ)やかな商店街に向かった。

 デニスさんとこっちの方に来たのは初めてかもしれない。

 一番人気の2階建ての雑貨屋に入り、しばらく色んな商品を二人で眺める。気になるものもあったけれど、結局は生活雑貨の売り場でデニスさんの物をいくつか買っただけで店を出た。


 そのまま中央広場の方に向かって歩を進めると、こぢんまりとした、でもなんだか可愛い雰囲気をかもし出している店をみつけて目を引かれた。


 私の視線の行方に気が付いたのだろう。

「あの店が気になるなら、ちょっと入ってみるか?」

 デニスさんが私の顔を覗き込みながら、声を掛けてくれた。



 お店の中は、まるで可愛い物の宝箱のようだった。温かみのある照明に照らされた棚には、女の子の好きそうなモチーフの雑貨がたくさん並んでいる。センスがあまり無い私にも、こういうのが「可愛い」って事が明らかにわかる。


 二人でしばらくあれこれ物色して、ミリアちゃんに似合いそうな髪飾りを見つけた。

「ミリアの土産にこれを買ってくるよ」

「私、もう少しここで見ていていいですか?」

 そう尋ねると、仕方ねーなって言いたそうな顔で、ぽんぽんと私の頭を撫でて行った。


 ここかしこに並んでいる可愛い雑貨たちを眺めるのについ夢中になっていると、隣に居る人に尻尾が当たってしまった。

「っと、ごめんなさい!」

 夢中になっていて尻尾がぶんぶん振れているのに気付かなかったらしい…… 恥ずかしい。

「可愛い商品に、つい夢中になっちゃって……」


 言い訳をしながら謝った相手は、銀の髪を持つ少し年下の女の子だった。薄紫の透き通る綺麗な瞳が、こちらを見て柔らかく緩んだ。

「あなたもそう思います? この店の商品、本当に可愛いですよね」

 気にしないで、という意味だろう。こうして気さくに話を振ってくれた事になんだか嬉しくなった。


 彼女はとても話やすい子で、そのまま互いに気になった商品の話をし始めるととても楽しくて。今度は話に夢中になってしまった。


「おーい、リリアン。そろそろ行くぞー」

 デニスさんの声にハッと気付いた。しばらく待たせてしまっていたらしい。いけない、いけない。


「はーい。そういうことだから、私行きますねー」

「ええ! またどこかで会いましょう!」

「また!」


 少女に手を振って別れた。

 店を出る時に、ちらと振り返ると、店に居た金髪の男の子がさっきの女の子に話し掛けているところだった。彼女にも連れがいたらしい。

 二人とも美人でお似合いで。なんだかちょっと羨ましいような微笑ましいような、そんな気持ちになった。



 ひと通り見て回って良い時間になったので、カフェでお茶をすることにした。

 中央の大きい公園の周りには、ガラス張りの明るいカフェがいくつかある。その中でも特にケーキが評判の店を選んだ。


 店に入ると、表の通りがよく見える窓際の席に案内された。

 給仕(ウエイトレス)に渡されたメニューを見ると、今日のおススメはチョコレートケーキらしい。


「あ、おいしそう。私、このチョコレートケーキにしますー。デニスさんはどうしますか?」

 メニューから顔を上げてデニスさんを見ると、「チョコか……」と小さく呟きながら、ちょっと微妙な顔をした。

「あ、俺はショートケーキにするかな」

 何かを言い難そうに視線をそらせる。どうしたんだろう?



 注文したケーキと紅茶を待っている間に、他愛もない話をしながら何気なく窓の外に目を向ける。

 この店のメニューの前で賑わっている3人組に気持ちが持っていかれた。

「うん? どうしたんだ?」

 私の視線に気がついたデニスさんもそちらを向く。

「ああ、さっきの店に居た子たちだな」

 店を出るときに見かけた二人と、さらにもう一人連れが居たみたいだ。

 そんな話をしていると、こちらに気付いた様で目が合った。軽く会釈をすると、3人はそろって店に入って来た。


「よかったー 探してたんです」

 先程の少女が笑顔で私に声をかける。え? 私を??

 差し出された手をみると、そこには私のハンカチが握られていた。

「あ……」

 ポケットに手を入れるとそこにあるはずのハンカチがない。なるほど、どこかに落としてしまったんだ。

「さっきの店に落ちてたんです」

「それでわざわざ? ありがとうございます」

「また会えましたね」

 そう言って微笑む彼女に、こちらも笑顔になった。



 さっき雑貨屋でお話をした少女――シルティスクさんと、連れの二人のうち金髪の男の子はアルラインくん、もう一人の金に銀が入った髪色の女の子はリエルさんと名乗った。

 せっかくだからと、3人と一緒にお茶をすることになった。


 3人の注文を給仕に託し落ち着いたところで、向かいに座るアルラインくんが不思議そうな表情で首を傾げた。

「ねえ、リリアンさん。お知り合い?」

 そう言われ、彼の指さす方を見ると、窓の外でニールが嬉しそうに手を振っている。

 私に気付かれた事を確認すると、彼も店内に入って来た。


「リリアン、デニスさん。こんな所で珍しいなー 俺も混ぜてよ」

 と、言っても……

 デニスさんの顔色を(うかが)うと、ちょっとだけ眉間に(しわ)をよせている。私たちだけじゃない事を気にしているのかな?

 シルティスクさんの方を見ると、にこりと微笑んでくれた。

「ありがとうございます。彼は冒険者仲間のニールです」

 そう紹介すると、ニールは気兼ねをする様子もなく3人に笑って挨拶をした。



 互いの話をしているうちに、皆の前にケーキとお茶が並べられた。さすがケーキが評判になる店だけあって、どれも綺麗に飾り付けられてあり、とても美味しそうだ。


 視線を感じて横を見ると、デニスさんが私のケーキをじっと見ていた。

「どうしたんですか? もしかして、食べたいんですかーー?」

 揶揄(からか)うように訊くと、「え、いや……」と、どうにも歯切れが悪い。


「欲しいなら少しあげますよー」

 そう言って、一口分を分けてデニスさんの皿に乗せると、ちょっと嬉しそうな顔になった。やっぱり食べたかったんだね。

「これも、チョコ……だよな?」

「はいー、チョコレートケーキですよ」

 何故か当たり前の事を言うデニスさんに首を傾げた。


 それを見たニールまで、「あー、いいな。俺も欲しいー 俺のケーキとも交換こしようぜ」なんて言うので交換すると、ケーキ皿の上がなんだか賑やかになった。



「アルくん、はい、あ~ん!」

 向かいからの可愛い声に顔を上げると、リエルさんが一口分に切ったチョコレートケーキをアルラインくんの口元に差し出しているところだった。


「あ、従姉上(あねうえ)、僕はもう子供じゃ......」

「いいからいいから」

 恥ずかしそうに躊躇(ちゅうちょ)するアルラインくんに、リエルさんが一押しすると、それに負けたように彼が口を開ける。


「美味しいです! ありがとう!」

「よかった〜! あ、アルくんのも一口――」

「だめですわ! アルラインくん、次は私のもどうぞ!」

 反対に座っているシルティスクさんが、負けじと自分の苺タルトをアルラインくんに差し出す。


「えっ、いや……」

 アルラインくんが戸惑いながら遠慮する様子を見せると、シルティスクさんは明らかにしょんぼりした様子を見せた。

 それに根負けした様子のアルラインくんが、苺タルトを口にすると、シルティスクさんが可愛い笑顔になった。


 それに対抗してか、今度はリエルさんがアルラインくんに()ねてみせているようだ。「一緒に住んでる」なんて言葉が聞こえてきて、一瞬びっくりしたけれど、そう言えばさっき従姉弟(いとこ)同士だと紹介されたんだった。

 それにしても3人は本当に仲が良くて、見ているこちらも微笑ましくなってしまう。


 正直、3人の様子が気にはなるが、あまりじーーっと見ているのも失礼だろう。

 気にしない素振(そぶ)りでチョコレートケーキを口に運んでいると、肩に何かが当たった。デニスさんが肘で小突いてきたらしい。私の耳に軽く手を添えて「彼、モテモテみたいだな」と(ささや)いてきた。


 なるほどアルラインくんは彼女たちに大人気らしい。確かに女の子二人が取り合いをするのも納得する程の綺麗な顔立ちだし、話し方も丁寧(ていねい)で優しい。

 逆の隣から「いいなぁ」とニールが小さく呟く声が聞こえたものだから、ちょっと吹き出しそうになってしまった。


「3人とも仲が良いんですねー」

 そう言うと、乙女二人が申し合わせたように、

「アルライン君だけですわ」

「アルくんだけです!」

 と、同時に主張した。

 それを聞いて、笑ってしまったアルラインくんにつられて、なんだか可笑しくなって皆で笑った。



 評判の店のケーキもお茶も、どれも美味しかったし、はじめてのお友達とわいわいと盛り上がったおしゃべりもすっごく楽しかった。

 またいつか会えたらいいねと手を振って、3人とはカフェの前で別れた。


 * * *


 デニスさんとニールと、3人で『樫の木亭』に向かう道で、そういえばさーとニールが口を開いた。

「今日バレンタインデーだよな? 俺、リリアンからチョコ欲しいなー」

 そう言えば、以前ミリアちゃんに聞いていた日って今日だったんだね。


「ちゃんと用意してあるよー 夕飯の後にあげるねっ」

 そう言うと、ニールがガッツポーズをした。大袈裟(おおげさ)だなぁ。


「なあ、リリアン」

 珍しくデニスさんが遠慮がちに声を掛けてきた。

「……俺の分は?」

「?? もちろんありますよ?」

 そう答えると、何故か嬉しそうに口元に手を当てる。良かった、と小声で呟いたのが聞こえてきた。


 よくわからないけれど、二人の様子を見る限りでは、仲の良い友人からでも貰えると嬉しいものらしい。

 やっぱりチョコレートを用意をしておいて良かったと、そう思った。

 お読みいただきありがとうございます。


 今回は天翔先生とコラボさせていただきました。

 本当にありがとうございます!

 楽しく書かせていただきましたー♪


 天翔先生の作品も、どうぞよろしくお願いいたします。

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