和解2
それに今回の人生でもそうなるかは分からないけど婚約でもしてしまうと将来で確実になくなってしまうことが1つある。
止めねばならない未来がある。
そのためにも今誰かとそうした噂を流されるのも困るのである。
もう回帰前の流れとは違っているけれどアリアが関わっていない大きな流れは未だに変化がないはずである。
「し、失礼します!
入ってもよろしいでしょうか?」
「お入りなさい」
控えめにドアがノックされた。
メリンダが声をかけると入ってきたのはカールソンであった。
「えっと……」
モジモジとしているカールソンの言葉を待つ。
「その、今日はもうこんなお時間ですしお食事でも一緒にいかがですか?
こちらが失礼を働いたのですし今日、今日だけじゃなくても、お泊まりもいただければと」
最初にあった時の堂々とした態度はどこに行ったのか。
なんだか年相応の少年ぽさが見えて少し可愛らしく思えた。
緊張したように口にしたのは食事のお誘いだった。
もう昼は過ぎている。
何があったのか話し合ってエオソートと協力することになって軟禁状態も解除となる。
ゴラックたちはやらねばならないことがある都合上家に戻らざるを得なかった。
今から宿を探してとやっているのは少し面倒である。
それなら少なくとも今日はカンバーレンド家に泊まっていってもらえばいい。
アリアもどうするつもりなんだと思っていたけどちゃんとそのことについて考えてくれていた。
ただしそれを考えていたのはカールソンじゃなくエオソートである。
あえてエオソートはそのことを口にしないで部屋を後にした。
そして部屋の外でウロウロとしていたカールソンに言い忘れたから伝えてきてほしいとお願いしていた。
「どうするアリア?」
「私ですか?」
一応保護者はあなたでしょう?という顔をする。
「あなたが嫌ならそれでもいいのさ」
「全く……オバ様も性格が悪くておいでですわ」
ニヤリと笑ったメリンダを見てアリアは小さくため息をついた。
本気でくっつけるつもりはなさそうだけどアリアを少しからかっているようである。
仮に本気になったとしても照れたように返事を待つカールソンは良い相手に見える。
「それではお世話になろうと思います」
アリアの返事を聞いてカールソンの顔が明るくなる。
「ただ条件があります」
「な、なんですか?」
「カインを連れてきてもらえますか?」
結局暗殺騒ぎのせいでカインを探すこともできなかった。
元気にしているかとか、シェカルテにも会わせてあげたい。
「わかりました!
少々お待ちください!」
カールソンは容易い条件だと思った。
笑顔になるとすぐさま部屋を飛び出していった。
「カイン……?」
メリンダはカインのことが分からなくて不思議そうな顔をしている。
よくよく考えてみればカールソンとも面識がありそうだしカンバーレンドの中に知り合いもいるのもおかしな話である。
「女には秘密が多いものですわ、オバ様」
「……秘密が多すぎるのも考えものだね」
「ふふふ、カインというのは私のメイドの弟ですわ。
こちらの家で騎士として鍛練に勤しんでいるのですわ」
「そうなのかい」
なんでエルダンでメイドとして働いている人の弟がカンバーレンドの騎士としているのかは疑問である。
「アリアお姉様!」
のんびりとお茶を飲んでいるとカールソンに呼ばれたカインが部屋に入ってきた。
まず向かったのはアリアのところだった。
立ち上がってカインを受け止めてあげる。
大事なオーラユーザーの騎士なのでアリアもカインにはちょっと甘い。
素直に甘えてきてくれるところも可愛いと思う。
「あら、久しぶりね。
少し背が伸びました?」
「はい!
早くお姉様よりも大きくなってお姉様を守れる人になりたいです!」
相変わらず可愛らしくて綺麗な顔をしているカインは少し顔を赤くして満面の笑みを浮かべている。
アリアに久々に会えて嬉しい。
騒ぎに巻き込まれたと聞いて心配していたけれどケガもなく平気そうで安心した。
しばらく会わないうちにカインは少し大きくなっていた。
年頃の男の子なのであるからちゃんと食べてしっかりと運動していれば体も瞬く間に成長していく。
「カイン!
私は!」
「お姉ちゃんにも会えて嬉しいよ!」
「もう……ついでみたいに!」
とはいいながらも抱きついてきたカインを強く抱きしめ返すシェカルテの顔は緩んでいる。
確かにアリアの言う通りカインは成長している。
さらに抱きしめて分かるのは細かった体ががっしりとしてきていたことであった。
体が弱くて寝たきりだったようなカインがたくましい男の子になってきている。
シェカルテの目に光るものが見えてみんなはそれとなく視線を逸らした。
「アリアお嬢様、その……少しだけでいいのでお話を聞いていただけますか?」
アリアに近づいたカールソンは緊張した面持ちをしている。
「なんでしょうか?」
アリアも一応笑顔で対応する。
エオソートにも頼まれたのだし邪険に扱うこともしない。
「以前のこと、謝りたくて……」
アリアと目を合わせる勇気がなくてやや下に視線を向けたまま話し始める。