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強大な協力者2

 最近ぼんやりとすることが多くなっていたのだけど医者に見せても原因不明だと言われて謎の病気だと思っていた。

 実はそれはメイドが毒を盛っていたのでありエオソートの判断力を低下させ、操れるようにしていた。


 エオソートの体調が悪く見えたのは全てそのせいであった。

 毒を飲んだ直後などは普段よりもぼんやりとしていて判断能力が低くなり、聞かれたことに答えてしまっていた。


 その毒がメイドの部屋から見つかったのである。

 しかしケルフィリア教の炙り出しが始まってしまえば正体がバレたり毒を盛ることが難しくなるかもしれない。


 毒を盛っていたことがバレる前にエオソートも消してしまおうとしたのである。

 まさかその毒を自分に使われて情報を吐き出すことになるなんてメイドは思わなかっただろうけれども。


「ともあれ、今回のことは非常に感謝している。


 何かお礼をしたいのだが君たちに助けられたのは妻であるし、本人が直接対応したいということなのでエオソートに任せることにした。


 何かあれば言ってほしい。

 私が全力で手助けすることを誓おう」


「ありがとうございます」


 そう言ってギオイルは部屋を出て行った。


「……単刀直入にお聞きいたします。


 アリア様、あなたは一体何者ですか?」


 穏やかな笑みを浮かべたままエオソートは核心をつく質問をぶつけた。


「その質問の意図が分かりませんわ」


 アリアもただすんなりと答えるつもりはなく同じように穏やかに笑みを浮かべている。


「……あの時私は体こそ動きませんでしたが意識はありました。


 なので全てを見ていたのです」


 テントの中での出来事をエオソートは見ていた。

 痺れ薬のようなものを飲まされて体が動かなかったけれど意識までは失っていなかった。


 殺されそうになったこと、アリアが戦っていたことは視界の端に見えていたのである。

 アリアの真っ赤なオーラは忘れたくとも忘れることができない。


「……私は夫にはウソをついたことがありません。


 ですが今回初めてウソをつきました」


「何のウソを?」


「捕らえられたメイドは赤い悪魔だと言ってあなたのことを恐れていました」


 情報を聞き出すためにと生かしておいたメイドは騎士ですら一刀両断するアリアに恐怖心を抱いてしまった。

 尋問を受けながらアリアのことを赤い悪魔であると口にしていた。


「思い当たることはあるかと聞かれましたけど知らないとお答えしました」


「どうしてですか?」


「女には秘密が多いもの……正直な話息子が興味を持っていると聞いてからあなたのことを調べました。


 優秀ではありそうですが特別おかしなところもない……はずでしたのに今回のことがありました。


 きっと何かの事情があるのでしょう?

 助けに来てくれたこともそうですしアリア様には何かがあると思ったのです」


 女性の勘。

 ただそれが何かも分からないし、明確なことは何一つない。


 ただアリアが何かを抱えていてそれを隠そうとしているなら暴くのは良くないとエオソートは思った。

 だから何も覚えていないとウソをついた。


「……そちらの騎士様はお聞きしても宜しくて?」


 エオソートの後ろに控えている騎士はギオイルと一緒に行かなかった。

 話を聞いてしまっているけれど大丈夫なのだろうか。


「大丈夫です。


 こちらは私の騎士なので」


「そうですか」


「それでもしよろしければアリア様の大義がなんなのか、なぜ私を助けてくれたのかお教えいただいてもよろしいですか?」


 アリアはメリンダに視線を向けた。


「ここはあなたに任せるよ」


 エオソートを救ったのはアリアである。

 言うも言わぬもアリア次第でいいとメリンダは思った。


「では……」


 アリアは自分がケルフィリア教と戦い、聖印騎士団の仲間であることをエオソートに打ち明けた。

 エオソートはケルフィリア教に毒まで盛られていた。


 つまりは仲間に引き込むことを断念している。

 確実にケルフィリア教でないと断言してもいい。


 さらに回帰前にはエオソートはほとんどいなかった存在である。

 この人生においてエオソートの存在が及ぼす影響は小さいかもしれないが回帰前とは違う方向に世界を進ませてくれるかもしれない。


「………………」


 想像よりも遥かに話が大きかった。

 アリアはまさかの相手を敵として戦っている。


 この幼い少女がどうして世界に巣食う悪き宗教を相手にすることになったのか。

 エオソートはそれを考えると胸が痛んだ。


「ご理解いただけないのならそれもしょうがありません。


 その時はこの話を忘れていただいて……」


「いいえ。


 元々我が家はケルフィリア教とは敵対関係にあります」


 自分を救ってくれたアリアのことを助けねばならない。

 触れれば壊れてしまいそうな肩に世界を背負う重みを少しでも軽くしてあげたい。


 エオソートはそう思った。


「特定の勢力に与することは夫が良く思わないかもしれないので夫には秘密にしておきましょう。


 でもこのエオソート・カンバーレンドはアリア・エルダンを友として協力を惜しまないことを誓いましょう」


「エオソート様……」


「親愛の証としてイーオと呼んでください。


 今この時からアリア様はこの私の命の恩人であり友人です」


「……では私のことはアリアとお呼びください、イーオ様」


「イーオでよろしいのに」


「お年も離れていらしていますしそれは難しいですわ」


 アリアとエオソートは顔を見合わせて笑う。

 協力関係を結ぶことになったのでアリアはもう少し踏み込んだ話をエオソートにすることにした。


 カンバーレンドの女性を束ねる当主夫人であるエオソートがアリアの良き友になった。

 このことが未来にどんな影響を及ぼすのかは誰にも分からないのである。

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