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悪役令嬢、悪になる〜真紅の薔薇よ、咲き誇れ〜  作者: 犬型大
第二章

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疑いの狩猟祭7

「チッ……なんなんだ!


 おい、早くやってしまえ!」


 メイドがナイフを振り上げる。


「させませんわ!」


 クインに一瞬遅れてテントの中に飛び込んだアリアが手に持ったナイフを投げた。


「ああっ!」


「次々と!


 今度はガキだと!?」


 ナイフを投げる練習も繰り返してレベルを上げてきた。

 完璧でなくとも命中率はそれなりに使えるようになってきた。


 とりあえず当たればいいとメイドを目がけて投げたナイフは上手く肩に刺さった。

 出来るなら手を狙いたかったけどとっさの状況に手に当てられるほどの自信はない。


 だけど痛みに怯んだメイドは手に持っていたナイフを落としてしまったのでメイドの行動を阻止することはできた。


「何してやがる!」


「あら、私は無視ですの?」


 剣を抜いてエオソートに向かっていこうとした騎士に後ろから切りかかる。

 入り口で倒れていた護衛騎士の剣を拝借したのだ。


「クッ!」


 アリアが振り下ろした剣は防がれたがすぐさま刃を返して胴を切りつける。


「このクソガキが!」


「子供に本気になって恥ずかしくありませんの?」


「うるさい!


 邪魔をするな!」


「なら私を倒して続けるとよろしいですわ」


「後悔するなよ!」


「あなたこそ」


 騎士はアリアに切りかかる。

 まともに受けては当然成人男性の力に敵うはずがないので上手く力を受け流す。


「ふんっ、口ほどにもなさそうだな!」


 何度か騎士の攻撃を防ぐが受け流しきれずにアリアの腕が浅く切られる。

 相手は裏切り者だが正当な騎士でもある。


 特にカンバーレンドの騎士であればどの人も実力がある。

 アリアよりも剣術のレベルが明らかに高い。


 差が大きすぎてアリアが勝てる相手ではなく騎士は勝利を確信してニヤリと笑った。


「私、針を扱うのが得意なのですわ」


「なら剣など持たずに刺繍でも……オーラだと!?」


 アリアの体から紅いオーラが漏れ出した。


「何を……」


 紅いオーラを剣に集めながらアリアが不自然に手を振った。

 騎士にそれが見えたのは本当に直前だった。


「ああああああっ!」


 目に針が刺さった。


「針が得意だと申しましたでしょう?」


 ただ手を振ったのではない。

 アリアは針を投擲したのだ。


 まだオフン先生もいない時からアリアは刺繍だけでなく針を投げてきた。

 暗器として針を扱う人がいることをアリアは知っていた。


 針なら身近にあるし相手に致命傷は与えられなくても当てられれば大きな隙を作ることができる。

 これまでしてきた針の投擲とナイフ投げの練習と合わせて投擲レベルは11にまでなっていた。


 下手な大道芸よりもアリアは正確に当てる自信はあった。

 騎士はオーラに驚き、オーラが集められた剣を警戒していた。


 そしてまだ少女であるアリアが針を持っていて投げてくるなんて想像もしていなかった。

 しっかりと目を狙うことができた。


「裏切りの末路は……死、ですわ」


 目に針が刺さって激痛に怯んだ騎士と距離をつめる。

 アリアの真紅のオーラが剣を包み込み、騎士に向かって真っ直ぐと振り下ろされた。


 騎士は剣を持ち上げてアリアの剣を防ごうとしたがそれは間違いだった。

 オーラを扱えれば格上の相手とも戦える。


 むしろオーラユーザーを相手取るときには数レベル上でなければならない。

 それはオーラが身体能力の強化をしてくれるからだけではない。


「う、うそ……」


 メイドが驚愕に目を見開く。

 剣ごと騎士が切り裂かれて地面に倒れる。


 オーラで強化されるのは身体能力だけでなく剣の切れ味なども大幅に向上する。

 名剣を扱うか、アリアがやったように受け流さねば同じ品質の剣はオーラを込めたものに敵わない。


 その鋭さは一瞬血が出るのを遅らせてアリアは返り血すら浴びることはない。


 紅いオーラをまとって冷たく見下ろしてくるアリアにメイドはただただ恐怖を覚えた。

 騎士があんなにあっさりとやられたのに自分が勝てるはずもない。


 命乞いの言葉すら出てこなくて、ナイフの刺さった肩を押さえて震えていることしかできない。

 アリアは剣を持ち上げ、怯えた目をするメイドの頭を剣の柄で殴りつけた。


 ケルフィリア教の人間は全員殺してしまいたいが目の前の1人ではなくより大きな被害を与えることを考えると生きたまま捕らえておく方がいい。

 多分このメイドが情報を漏らしていたのだろうからお話を聞きたい人も多かろう。


「……お嬢様に負けてしまいましたね」


 振り返るとクインも騎士を倒していた。

 クインの方もひどく赤く染まっているがそれは全て返り血であった。


 ナイフでよくカンバーレンドの騎士を圧倒したものだ。

 

「あ……あなた、は」


「あら、起きていらして?」


 助けたはいいけれどこの状況をどう収拾したものかと思っていたらエオソートが弱々しく声を出した。

 寝ているとばかり思っていたけれど意識はあったみたいだった。


 何か薬でも盛られたのか、体は動かないようで何とか声を絞り出していた。


「動くな!


 何をしている!」


 その時テントにギオイルが飛び込んできた。

 いつまで経っても避難してこない妻を疑問に思って騎士を率いて来たらアリアたちと同じく血の跡を見つけた。


「……何があった…………のだ?」


 ポイと剣を投げ捨てて両手を上げるアリア。

 血まみれのメイドと少女と言える年頃の令嬢、地面に倒れる何体もの騎士、寝た体勢のまま動かない自分の妻。


 かつて戦場で色々な場面を目撃してきたギオイルであってもこの状況は容易く飲み込めるものではなかった。

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