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招待状へのお返事もマナーです3

「何があったのですか?」


「それが……ケルフィリア教による暗殺計画があるようなんだ」


「あ、暗殺計画!?


 一体誰を狙っているのですの!」


「落ち着きな。


 うちの人が狙われてるんじゃないよ」


「ではどこの誰が?」


「カンバーレンドって聞いたことあるかい?」


「え、ええ」


 もちろん知っているとも。

 アリアのメイドであるシェカルテの弟のカインを預けた家であるから。


「そのカンバーレンドの当主を狙っているのさ」


「な、なぜカンバーレンド家を狙うのですか?」


 アリアの回帰前の記憶の中にはカンバーレンド家当主の暗殺事件などない。

 少なくともそれなりに長いことご健在だったことは知っている。


 アリアが知らないだけで暗殺未遂事件があった可能性は否めないが。


「正確な目的は分からないけれど逃げるためか、潜り込むためだろうね」


「逃げるか、潜り込むとはどういうことですか?」


「……カンバーレンドがどうして他に影響力を持つ家なのか分かるかい?」


「それは軍事力だと思いますわ」


「その通り。


 当主だけでなく他にも数人オーラユーザーを抱えていて、兵士や騎士の規模も他の家よりも大きい」


 カンバーレンド家は元を辿ると傭兵であった。

 もっというと傭兵団の団長が初代のカンバーレンドなのである。


 戦争の時に手柄を上げて貴族の地位とカンバーレンドの名前をもらったのだ。

 自分が団長であった傭兵団をそのまま家臣として引き入れて、カンバーレンドはいくつかの戦争で功績を上げた。


 そうして武力で成り上がり、さらに人を引き入れていった結果今の国内でも強力な騎士団を持つカンバーレンドになったのである。

 カンバーレンドが身分に関係なく優秀な人を受け入れるのは傭兵団であったことが元々の始まりだからである。


「当然ケルフィリア教だってその力は脅威だ。


 引き込めるなら引き込みたいし、そうでないのなら邪魔をしたりせめて動きを事前に察知しておきたい思惑がある」


「それとご当主の暗殺になんの関係がありまして?」


「広く人を募集しているカンバーレンドなんだけどその実どんな人を入れるかの目は非常に厳しいんだよ。


 我々聖印騎士団としてもカンバーレンドの動きは注視しているんだけど内部に人を潜り込ませるのがとても難しいんだよ」


 傭兵だからと誰でも受け入れるのではない。

 命を預けて戦うことになる仲間だからこそ仲間に入れるかの目は厳しいものだった。


 今でもその目は厳しく、貴族として怪しいものも入れられないのでより厳格なものとなっているらしい。

 カインは運が良かった。


 当主が直接見て直接決めた。

 まだ謀略に染まらない子供でもあったので厳しいテストはあったものの比較的すんなりと入ることができた。


「裏を返せばケルフィリア教も入り込みたく、入り込むのが難しいってことさ。


 その中でうちの事件が起きたのさ」


「ええっ?」


 なんでカンバーレンドからいきなりエルダンの事件に話が飛ぶのか。


「ケルフィリア教が内部にいたという事件。


 他の家は自分たちが関係ないと思ってただ嘲笑うだけだったがカンバーレンドはちゃんとこのことを受け止めたのさ」


「まさか家の中にいるケルフィリア教を探し出そうとしたのですか?」


「そう。


 それ自体は悪くないんだけどね。


 ケルフィリア教を炙り出す計画を練っていたようだ」


 しかしどこからかその計画が漏れてしまった。

 ケルフィリア教としては一大事だ。


 厳しいカンバーレンドに人を送り込むことは容易くない。

 炙り出しが始まってスパイがバレてしまうと今後にも影響が出てくる。


「けれどそれでご当主を暗殺なんてしてしまったら……」


 当然大きな事件となり調査される。

 暗殺の実行犯はおろか、内部に潜ませていたケルフィリア教もバレてしまうだろう。


「そうだろうね。


 でも問題が大きくなればなるほど隙も生まれる。


 その隙に例えば実力のある者を逃すとか、あるいは逆に調査に協力したりするフリをして人を送り込むことだって出来るかもしれない」


「なるほど……」


 誰かを捨て駒にすることなどケルフィリア教は簡単に行う。

 捨て駒が暗殺を仕掛けて成功すればそれでもいいし、失敗してもカンバーレンドには大きな混乱が生じる。


 その隙に何かをしようとしているのだ。

 暗殺が成功すれば当主は子供のカールソンになる。


 厳格なことで知られている父親よりもカールソンの方がやりやすいと考えてもおかしくないのだ。


「炙り出しはどうやらカンバーレンドで行われる狩猟祭の後でやるようで、暗殺はその前の狩猟祭で行われるらしいんだ。


 けれどいきなり行って狙われていますよ、じゃ誰も信じない。


 こっそり守ろうにもカンバーレンドにいる聖印騎士団の協力者も少ない」


 だからメリンダのところに手紙が来た。

 暗殺計画についてと、カンバーレンドに入り込むのにどうにか出来ないかという内容で険しい顔をしていたのだ。


 警告して一定の効果は得られようがそうなった時に聖印騎士団だって存在を知られてしまうかもしれない。

 暗殺を未然に防ぐか、こっそりギオイルを護衛でもしたいところなのである。

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