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母の跡を継ぎ1

「ご配慮ありがとうございます」


「まだ話は終わっていなかったからね」


 すっかり家族揃っての食事が習慣となっていたのだけど泣き腫らした顔では家族に何があったか聞かれてしまう。

 アリアが泣き疲れて寝てしまった間にメリンダはたまには女子だけで話したいことがあるとみんなに言って別で食事をとるように配慮してくれた。


 やや腫れぼったい目をしているので少し前ならともかく今のみんななら気づいてしまうだろう。

 さらには話もまだ全部し終えてなかった。


 メリンダはわざわざアリアの部屋に食事を運んで一緒に食べることにした。

 ユーラが一緒に食べたいと部屋を訪れたけれどクインが追い返してくれていた。


「それでどこまで話したかね……アリアの母親や父親の話だったか」


「そうですわね」


「そうして私は2人を救えなかった……結婚していて動けなかったこともあるけどもっと気をつけているべきだった」


「それもオバ様のせいではありませんわ。


 悪いのはケルフィリア教です」


「ふふっ、優しいね。


 ともかくこれが私と聖印騎士団の関係だよ」


 ちなみにアリアをエルダン家まで送り届けてくれたのも一般人に扮した聖印騎士団の人なのであった。


「お話しくださりありがとうございます」


「……なんで聖印騎士団であったことを聞きたかったんだい?」


 ここまで正直に全てを話してくれたのだからもうあまり疑ってはいないが聞かなきゃならないことがアリアにはある。


「どうしてエルダンのことを放っておいたのですか?」


「なんだって?」


「聖印騎士団であるならばビスソラダがケルフィリア教であることには気づいていらしましたよね?」


 これがアリアの聞きたかったことである。

 ケルフィリア教を監視している聖印騎士団がビスソラダのことを見逃すはずがないと思った。


 今の時点まで知らなかったということもあり得ようが回帰前にはエルダンが滅びるまでビスソラダは生きていた。

 つまり聖印騎士団はビスソラダに最後まで気づかなかったか、知っていて放置したことになる。


 他の人ならともかくメリンダはエルダンの娘であった。

 ビスソラダがケルフィリア教であることを知って放置しておくはずがない。


 ならばメリンダは聖印騎士団に所属しながらケルフィリア教の回し者なのではないかとアリアは考えていたのだ。

 だからメリンダに手をかけることも必要ならするつもりだった。


「……そうだね。


 確かに私が聖印騎士団であるならそのことは不自然に映るだろうね」


「どういうことなのか教えていただけますか?」


「ビスソラダがケルフィリア教であることは知っていた。


 正確にはその可能性が高いということは報告に受けていた。


 だけど確実な証拠もなかった」


 聖印騎士団の方でもビスソラダがケルフィリア教の可能性があることは把握していた。

 しかしその明確な証拠もなく、メリンダは結婚してエルダンから出た身であって調査もしに行けず確定することができなかった。


 なので疑いはあれど注意深く監視を続けていくしかなかった。


「元々ビスソラダは警戒心の強い女だった。


 家に来た時にはイェーガー兄さんはいなかったからすでに女当主としてやっていくつもりだったんだろう。


 私のことも敵視しているからね」


 だから調べるのも難しかった。

 聖印騎士団とかではなくメリンダが家に来ることをビスソラダはひどく警戒して嫌がっていたのだ。


 強く警戒した状態ではビスソラダが動かない。

 あるいは強行な手段に及ぶ可能性があったのでメリンダは家から距離を取ってビスソラダを監視することにしたのである。


「そんな時にアリア、あなたが現れたのよ」


 これまでギリギリのところで証拠を掴ませなかったビスソラダであったのだがアリアが来て行動が変わった。

 自分の将来をアリアが脅かすとビスソラダは考えたのだろう。


「もう少しで内定できるというところまで来ていたのだけどそこで事件が起きたのさ」


 聖印騎士団としては証拠を固めてビスソラダを拘束するつもりだった。

 しかしその前にアリアが動いてビスソラダを殺してしまったのである。


 過去ではアリアは引きこもっていた。

 なのでビスソラダはアリアのことを婚姻にでも使えそうな道具としか見ておらず警戒をしなかったので行動に変化がなかった。


 けれど今回はアリアが積極的に動いて家族の心が動き始めていた。

 危機感を覚えたビスソラダは急いで行動して尻尾を出した。


 聖印騎士団はそれを踏まないようにして証拠を集めていたのだけどアリアは尻尾を思い切り踏み抜いてビスソラダを追い詰めたのだ。

 ちょっとだけ反省した。


 アリアの方も行動を焦り過ぎてしまっていた部分があったかもしれないと。

 回帰前では結局ビスソラダの尻尾を掴むことができずにユーラの洗脳は完全に成功してしまった。


 そこからなぜ滅亡したのか、ビスソラダがユーラをコントロールしきれなかったりディージャンが思わぬ反抗を見せたためかもしれない。


「証拠もなく動けばビスソラダを取り逃すばかりかこちらも危うくなってしまう。


 ……下手をすればユーラやディージャンを消してしまうことだってあり得ない話じゃなかったからね」


 メリンダも今すぐにビスソラダを殺してしまいたいような思いがあった。

 けれど軽率な行動は他の人の命を危険に晒してしまう。


 だから動けなかったのである。

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