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剣を習おう7

 経験上剣以外も教えられるが剣に絞って教えるつもりだった。


「ひとまず剣からお教え願えますか?


 もし余裕ができましたら他の武器も習うということで」


 オフンが何を言いたいかはよく分かる。

 だからここはアリアも引き下がっておく。


「……そういたしましょう」


 やってみれば余裕などなくなるはずだとオフンは思った。

 この歳の子供、しかも女の子が剣を習うことも異例中の異例だ。


 ティーカップより重たいものなども持たないようなご令嬢が剣を持って鍛錬すればあっという間に腕がパンパンになる。


「ではまずは自由に切りかかってきてください」


 アリアに木製の剣を渡してオフンも同じく木製の剣を構える。

 まだ何も教えていないから何もわからないはず。


 でも分からないなら分からないなりにやろうという姿勢がある。

 才能ややる気をここで確認しておく。


 ついでにこれで体力がなくなるようなら基礎の基礎で体力をつけるところから始めねばならない。


「では、まいります!」


 アリアは見よう見まねで剣を構えると一気にオフンに切りかかった。

 なんの変哲もない振り下ろしだが隙を見つけてはアリアも剣を振ってきた。


 頑張って素振りで初心者レベルといえる剣術レベル5まで上げた。

 多少不恰好かもしれないけれどこれまでのアリアが培ってきた最高の一撃である。


「ふむ……悪くないですね」


 正直な話オフンは驚いた。

 仮に今の時点で評価をつけろというなら全くダメダメなのであるがマトモな剣術っぽくアリアは剣を振ってみせた。


 なんてことはない振り下ろしだったけど太刀筋は綺麗だし体の軸も意外とブレていなかった。

 真っ直ぐで迷いない。


 アリアの強い意志を反映しているかのよう。

 磨けば光るものがあるかもしれない。


 自由に切りかかっていいと言われているので一撃じゃ終わらない。

 たとえお遊びだとしても本気で1発いれてやるつもりでアリアは攻める。


 オフンはそんなアリアの全力の攻めも軽く受けてみせる。

 剣術レベルが大きく違いすぎて歯が立たない。


 やはりレベルの違いというのは戦いに大きく関わっていることを痛感する。

 オーラを使えれば不意をつくことも可能かもしれないけれどオーラは切り札でよほど信頼している人か、命の危険でもなければ使わない。


「アリア頑張れー!」


 そしてアリアが戦う姿を見てユーラが声援を飛ばす。

 人の剣の鍛錬をなんだと思っているのだ。


 見せ物ではないぞと思う。

 ユーラだけではなくメリンダとゴラックも見に来ていた。


 忙しいのなら仕事しなさいよと思うのだけど軽く顔を見に来たのではなくてガッツリ観戦している。


「やりますね」


 一瞬見えた隙を突いたアリアであったがそれはオフンがわざと作り出した隙だった。

 相手を見ているか、隙に飛び込む勇気があるかを見るために作り出した隙なのだったけれど思いの外鋭い攻撃にオフンは一瞬ヒヤリとした。


 体力についても予想していたよりもある。

 何振りかすれば無理だと泣き言を言い出すことも覚悟していたけれど額に汗を浮かべながらも剣を振るのをやめないアリアはオフンの想定以上に頑張っていた。


「あっ!」


「そこまでです」


「アリア!


 大丈夫かい!」


 オフンは少しだけ実力を見せつけてアリアの剣を弾き飛ばした。

 すでに疲れてきていたアリアの手から木製の剣が飛んでいって地面に落ちる。


 手に僅かにジンとした痺れがあるがダメージはない。

 けどユーラは心配したようにタオルを持ってアリアに駆け寄った。


「お、お兄様?」


「こんなに汗かいて」


 ユーラはアリアの顔をタオルで拭いてあげる。

 すごく恥ずかしいけど我慢する。


 タオルを渡してくれるだけでいいのにすっかり甘々お兄ちゃんである。

 ちなみにディージャンとユーラは先日ケンカをした。


 ビスソラダがいなくなって以来仲が良かった2人にしては珍しいことなのであるがケンカの原因はアリアであった。

 どちらがアリアの世話をするか。


 それでケンカをしていた。

 ユーラはその時に言った。


 ディージャンは将来当主になってやらねばならないことも多い。

 女性に関しても細やかに配慮をする必要がある。


 だから自分がアリアの世話をするのだと。

 まあなんともくだらないことでケンカをしたものである。


 メリンダに諌められてその場は収まったがユーラは何かとアリアの世話を焼きたがるようになった。

 これでまた兄弟仲が悪くならなきゃいいけれどと心配になる。


「お嬢様は愛されておいでですね」


「そうですわね」


 とりあえず顔の汗は拭いてもらってあとはタオルを渡してもらって自分で拭く。

 愛されてはいると思うがそれは動物を飼うと同じようなものだろうとアリアは内心で冷たく笑っていた。


 飼っている動物に愛着が湧いてお世話をしたいようなそんな浅はかな感情にすぎない。

 だけどそんな態度表に出すはずもない。


「剣についても悪くありません。


 努力を重ねれば男性にも負けない腕前になられることでしょう」


「本当ですか?


 それなら嬉しいですわ」


「私はウソは言いません」


「さすがアリアだな」


 ゴラックもオフンの言葉を受けてウンウンとうなずいている。

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