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剣を習おう6

「いいかしら、キ○タマ」


「……それ久々ですね」


「全てを知りたいと望むことは悪くはないですわ。


 だけど全てを知るには覚悟と代償が必要なの」


 アリアは一度死をもって色々なことを知った。

 命を代償にしたのに情報は不十分で、必要なことは何も分かっていない。


 さらに知ることにはリスクも伴う。

 知らなきゃ取らなかった行動を知ってしまったがために取ってしまうことがある。


 必要なことは伝える。

 だが必要以上に知りすぎてもいけない。


「私が相手だからいいけれど知りたいと欲を出す相手は選びなさい」


「……肝に銘じておきます。


 じゃあどうしてメリンダ様をお調べになるのか聞いてもよろしいですか?」


 ここまで言って聞いてくるシェカルテの肝も太い。

 1つは答えてやると言ったのだから聞いた。


 だから答えてはやる。


「オバ様は良い人に見えますわ。


 だからこそ、怪しくも見えますわ」


 メリンダは出来た大人の女性である。

 さっぱりとした性格でアリアも好感を持っている。


 良い人に見える。

 だから逆に怪しくも感じられた。


 回帰前にはあまりメリンダのことを見なかったのも気になる。

 ビスソラダもマーシュリーもケルフィリア教にとってはただの捨て駒にすぎない。


 倒したからと言って安心し切れるものじゃない。

 むしろこの隙を狙ってケルフィリア教が人を送ってきていたら容易く家の中を掌握されてしまう可能性もある。


 疑いたくはないがメリンダはこうした役割をこなすのにもピッタリである。

 もし敵なら早めに排除せねばならない。


 あるいは信頼してもいいと確証が欲しかったのかもしれない。


「ケルフィリア教、ですか。


 未だに信じられないような話です。


 厳しいお方でしたがまさか世界を混乱に貶めようとする宗教に心酔していたなんて……」


「オバ様がケルフィリア教かは分かりませんがこんな状況ですから警戒はしておくべきですわ。


 きっとオジ様にはそんな考えもない。

 考えたとしても確かめるなんてとても出来ないでしょう」


 もしかしたらまたみんながツラい目に遭うかもしれないけれど敵だったら倒さねばならないのだ。

 何もなければそれが一番。


 情報料だってそんなにかからないだろうし安心して家のことを任せられる。


「……お嬢様はお辛くないのですか?」


「1つだけと言ったでしょう?」


「ですが、お一人でこんなことを抱えられて、メリンダ様すら疑って……」


「ツラくないと言ったら嘘になりますわ」


 アリアは馬車の窓の外に目を向けた。

 比較的知っている景色になってきた。


 ということは家がだいぶ近くになってきた。


「ツラいですわ。


 私は本来悪ではありませんもの。


 ……だけど今ここでツラさに負けてしまうと世界はもっとツラくなる。

 そしてこの復讐の炎が敵を燃やしつくまで消えることもないのですわ」


 なぜそんなにツラい使命を自分に課すのか。

 質問を口にする前に馬車はエルダン家に到着してしまった。


 ーーーーー


「オフン・イタノです。


 よろしくお願いします」


 意外なことに礼儀作法の先生よりも先に剣術を教えてくれる先生が来た。

 なんでも礼儀作法の先生の方も教えることに快諾してくれたがやることがあるらしくて少し到着が遅れるのだとか。


 剣の先生としてきたのはオフン・イタノと名乗る冒険者の女性だった。

 よく鍛え上げられた体をしていて、剣だけでなく短剣や槍などもある程度扱えるらしい。


 珍しくパンツスタイルのアリアも少し気合が入っていた。

 オフンも信用できるかは分からないが仮にケルフィリア教であってもマーシュリーの先例がある以上急いで距離を詰めてくることはないはずだ。


「剣を習いたいということだけど……」


「剣のみでなく槍や短剣も習いたいですわ」


 女性である以上男性よりも帯剣して回ることに厳しさがある。

 常に側に剣がある状況が想定できないなら他の武器も扱えるようになっておかねばならない。


 槍なら兵士なども持っているし緊急時には長い棒でも有れば槍の代わりにして戦うことができる。

 短剣は頑張ればスカートの中などに忍ばせることもできるのでこっそりとどこかに持ち込んでいける。


「私は女の冒険者とやっていくのに色々と身に付けたが……」


「構いません。


 色々やってみますわ」


 基本的に色々と手を出すのははしたない行いだとされている。

 メインの武器と加えてサブ武器がギリギリ許容されるぐらいで3つも4つも手を出していけないというのが世の中の暗黙の了解である。


 理由としては何かを極めるためには他に手を出してはいられないところがあるからだ。

 レベルが1つでも高い方が有利とされるこの世界において少しでもレベルを上げようと必死になるのは当然のこと。


 他のもののレベルを上げるぐらいならメインにしているもののレベルを上げる方がいいと言われている。

 別に他に手を出したって個人の責任で好きにすればいいのにいつしかメイン以外を幅広く手を出すことはタブーであるかのようになってしまったのだ。


 オフンも出来れば絞ってレベルを上げたかったが女性として冒険者をやるために何でもできることをアピールしてきた。

 剣でも戦えるし槍でも戦える、どんな役割でもこなして冒険者として生き残った。

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