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悪役令嬢、悪になる〜真紅の薔薇よ、咲き誇れ〜  作者: 犬型大
第一章

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闇はより深い闇に飲まれて4

「この……あう、なんだ」


 痛む脇腹を手で押さえてビスソラダの容体を確認しようとした若い騎士は突然視界が揺れてふらついた。

 なぜかいきなり頭がぼんやりとして体に力が入らない。


 アリアの姿が2つ見えて、ぐらりと大きく騎士の体が揺れるが何とか踏みとどまる。


「ああ、眠そうですわね。


 確かに子供はもう寝る時間かもしれません」


 そう言ってアリアはちょっと散歩でも行くかのような足取りで再び騎士の横を通り過ぎる。


「おやすみなさいまし、騎士様……そしてビスソラダ様」


「ま、待て……!


 クッ……何をした……」


 アリアは軽く手を振ってお別れの挨拶をすると部屋を出て行った。

 若い騎士はアリアを追いかけようとしたけれど体の自由が利かない。


 フラついて後ろに下がってしまい、ビスソラダの側に膝をついた。

 ついでならビスソラダの状態を確かめようと手を伸ばした。


「ビスソラダ様!」


 アリアと入れ替わるように騎士が駆けつけた。

 いつぞやアリアの護衛をしてくれたレンドンという中年の騎士とヒュージャーという若い騎士である。


「な、何があったんだ……」


 部屋の前には騎士が死んでいるし、部屋の中でもビスソラダが血まみれで倒れている。


「クソッ……!」


 人が来る前に立ち去るつもりだったのにと若い騎士は顔を歪めて剣を取ろうとした。


「何をしている!」


 レンドンとヒュージャーから見ると若い騎士がビスソラダに何かをしているように見えた。

 その若い騎士が剣を取ろうとしたからとっさに応戦しようと剣を抜いて切りかかった。


 ロクに反応することもできず若い騎士はレンドンに切り裂かれて倒れる。


「おい、人を呼んでこい!


 ビスソラダ様!


 なんてことだ……」


 ヒュージャーが人を呼びに部屋を飛び出し、レンドンはビスソラダの様子を確かめる。

 驚愕の表情を浮かべたままビスソラダは息を引き取っていた。


 そして薄暗い中でちゃんと見えていなかったがよく見るも若い騎士も同僚でレンドンも顔を知っている人だった。


 実力のある騎士で将来も有望視されていた。

 本気で戦えばレンドンも勝てないぐらいに勢いがあったのだがまともに抵抗することなく切られた。


 アリアはナイフに薬を塗っていた。

 それはレンドンとヒュージャーを寝かせた睡眠薬。


 まだ余っていたものをナイフに塗って、そして若い騎士の脇腹をナイフで刺した。

 強力な睡眠薬は若い騎士の体の中に入り込み、そして自由を奪った。


「ふん、ふん、ふーん」


 屋敷がにわかに騒がしくなる中でアリアは部屋に戻った。

 といっても離れの屋敷にではない。


 あんなことがあったためにアリアはゴラックにお願いをしていた。

 怖いので本邸の方で休みたいと。


 以前にも本邸の方に来ないかと誘ってくれてもいたのでゴラックは二つ返事でアリアに部屋をあてがった。


「おかえりなさいませ、お嬢様」


 部屋にはシェカルテがいた。

 手には水の入ったコップを持っていてアリアはそれを受け取ると一気に飲み干した。


 やっている最中は興奮で気づかないけどやはり体は緊張していていつの間にか喉がかわいていた。


「少しできるようになったじゃない」


「お褒めいただいて光栄です」


「人を呼んでくるタイミングもバッチリだったわ」


 本邸の部屋に泊まることになったアリアはこっそりと部屋を抜け出してビスソラダの部屋の前の部屋に隠れていた。

 動くなら今夜だとアリアは踏んでいた。


 マーシュリーが捕まってケルフィリア教のことが家中で噂になった。

 マーシュリーの尋問が終われば次はビスソラダに話を聞くことになるだろう。


 そうなる前に逃すなり、口封じするなりするだろうと思っていた。

 予想通りケルフィリア教は動いてきた。


 家の中に他にケルフィリア教がいることは分かっていたがまさか騎士までケルフィリア教で殺しも厭わないことはアリアも驚きだった。

 そしてアリアはビスソラダを倒して、騎士も倒してもらうことになったのだけどレンドンたちを呼んだのはシェカルテだった。


 シェカルテもアリアと一緒に隠れていて、アリアがビスソラダたちの方に行く間に人を呼んでくるように命令していた。


「まあ私が手を下さなくてもあの女は殺されていたみたいですけれど」


 でも復讐は自分の手で成し遂げなければいけない。

 ついでに若い騎士も逃さないでいることもできた。


 話を聞く限りケルフィリア教に関わる証拠もビスソラダの元にあるみたいだし後はただ調べられるだけになる。


「ただ……少しだけ物足りないですわね」


「何がですか?」


「出来るなら全部説明して、絶望した顔をさせてから首を切り落としたかったものですわ」


 さわやかな顔をしてとんでもないことを言う。


「ですがまず一歩踏み出すことはできたのですから今日はいい夢を見られそうですわ」


 踏み出した先はいばらの道だろう。

 悲しく過酷で険しい復讐の道であるが止まるつもりはない。


 バラが紅い花を咲かせるように、アリアの道も真っ赤な血で染め上げてみせる。

 興奮でまだ抑えきれない紅いオーラを放ちながらアリアはベッドに寝転んでスッと目を閉じたのであった。

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