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未来と復讐許可証1

「やあ」


 気分がいい。

 地下牢に閉じ込められてロクな食事も与えられなかったから常に空腹で栄養が不足し、鎖で繋がれていたので無理な体勢で体が痛かった。


 だけど今はなんの苦痛もない。

 満腹でもないけどお腹は空いていない。


 手錠が擦れるたびにひどく痛んだ手首は綺麗な滑らかな皮膚に戻っている。

 腕や肩も痛くなく、柔らかくない地面に座りっぱなしで痛かった足もなんともない。


 むしろ体が軽いくらい。

 視界は上を見上げていた。


 一面の青空。

 雲一つなく澄んでいる。


 死刑の時は曇り空で、しかも天候なんて気にしているような余裕もなかった。

 久々の気持ちのいい天気。


 地下牢の淀んだ空気とは違っていて肺に入ってくる清潔で澄んだ空気が美味しい。

 地面も固くない。


 多分地面だけれども草が生えていてふかふかしているので寝ていても特に痛くならない。

 地下牢の床に比べれば天国みたいなものだ。


「やあ」


 そんな視界に入り込んでくる青年。

 ニッコリと笑って覗き込んでくるけれどアリアは特に応える気もなかった。


「えっと、見えてる?」


「見えていますわ。


 だから邪魔ですわ」


「見えてるなら何か反応ぐらい……」


「人の視界に勝手に入り込んできてリアクション求めるなんてずうずうしく思いませんこと?」


「……おっしゃる通りです」


「それであなたは何者でここはどこですの?」


「僕はディラインケラ。


 神様で、ここは神の住まう国だよ」


 再びニッコリと笑ってみせるディラインケラ。


「……ディラインケラ」


 ぼんやりとディラインケラの姿を眺める。

 ディラインケラの姿は時代によって違っていたりして今の時代においてはやや若い姿で語られる。


 確かにこんな感じの青年ぐらいの見た目で言われていたなとアリアは思った。


「そう、君も熱心にお祈りしてくれていた」


「私の気分が良くて良かったですわね」


「……なんで?」


「ディラインケラがいるなら1発……何発かぶん殴ってやりたいと思っていましたの。


 でも今は気分が良いから殴らないで差し上げますわ」


 感情のこもらない目で恐ろしいことをさらりと言ってのける。

 笑おうか迷ったディラインケラはアリアの目が本気なことに気づいて曖昧に笑みを浮かべて誤魔化した。


 神だろうとなんだろうとぶん殴ってやると思っていたのは本気。

 ただ今はこの誰にも文句言われることもなく寝転がれるのが気持ちがいいから見逃してやるのである。


「それで私のささやかな願いも叶えてくれないクソ神様が何の御用でいらっしゃって?


 くだらない用なら目が開かなくなるまで殴り続けますわよ」


「ちょっとトゲが強くない?」


「私がこんなにトゲトゲになるような世界にしておいてよく言いますわ」


「うーん、色々と事情があるんだよ」


「そうですか。


 まあもう私は死んでしまったので関係ありませんことよ」


「……そんなに捻くれないでおくれよ」


「捻くれ者で申し訳ありませんわ」


「もー……」


「それでなんのお話がありまして?


 このまま寝転んでいるだけなのも悪くはありませんけど」


「お願いが」


「イヤです」


「せめて話だけでも聞いてくれないかい?」


「勝手にお話しなさるといいですわ」


 別に話す分には好きにすればいい。

 このまま空を眺めながら音楽のように聞き流すだけである。


「君には世界を救って……」

 

「イヤです」


「君には世界を救ってもらいたいんだ」


 もうディラインケラはアリアからマトモな返事があることを諦めて話を進める。


「この世界は今危機に瀕しているのだ。


 君たちが異端と呼んでいるケルフィリアだが奴は世界の征服を目論んでいる。


 自分の信者を増やし謀略と暴力で世界を支配しようとしている。


 その大きな始まり、発端が君たちの国なんだ」


「どういうことですの?」


「ようやく興味を持ってくれたかな?」


 アリアが体を起こす。

 周りは一面草原で草が風に揺れている。


 自分を追い詰めて殺した国だけど自分の国が世界を危機に晒すようになると聞いて気にならないはずがない。


「これは未来のうちの一つだ。


 君たちの国はケルフィリアに支配され世界征服の足がかりにされる。

 時には謀略を用いて信者を増やし、時には暴力を用い戦争も辞さないケルフィリアは勢力を拡大していくんだ。


 そうして僕たちは忘れられていき、ケルフィリアが神として君臨する世界が出来上がる……」


「そんなこと許されまして?」


「許されないことさ。


 止めるべきことでその世界はひどい世界になる」


「なら神様であるあなたがお止めになられればよろしいのではなくて?」


「そうするために君を呼んだんだ」


「私がケルフィリアを止められる思っていますの?


 散々利用されてあんな風に殺されたというのに」


「それは分からない。


 でも今のところ君だけなのさ、ケルフィリアの陰謀を止められたのは」


「はぁっ?


 私が何を止めたというのでしょう?」


 アリアは眉をひそめた。

 何も知らないまま死刑の時を迎えて、知った時には死刑の直前。


 異端者であるエリシアを殺すことも叶わなかった。

 何もしていない。


 ケルフィリアの陰謀になど関わったことはない。

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