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ブルーアンドホワイト10

 適当なお菓子屋に行ってケーキを食べたりして時間を潰している間にゴラックとディージャンも到着した。

 レンドンは迷ったようだけど報告のしようもなくてカインのことはゴラックに告げなかった。


 ゴラックは気を利かせてアリアにドレスも買ってくれた。

 相手が相手なだけに見た目も整えておかねばならないからである。


 シェカルテは宿でお留守番してもらって、アリアはゴラックとディージャンについて再びカンバーレンド家に向かった。

 あまりこうしたパーティーを開くことがないカンバーレンドとお近づきになりたくて様々な貴族が招待に応じていた。


 アリアとしてはカインをカンバーレンドに入れただけで目的は果たされた。

 だから体調が悪いとでも言ってパーティーには参加しないつもりだったけれどドレスまで買われちゃそうもいかなくなった。


 美味いものでも食べられる時間だと思っておくことにする。

 先日とは違って屋敷の方に通される。


 中に入るとすでに人が多く集まっていてゴラックにも挨拶に人が詰まってくる。

 アリアはニコリと笑顔を張り付けてゴラックの横でおとなしくする。


 注目されればしとやかに礼をして軽く名乗る。

 あとはゴラックが上手く説明してくれてすぐに軽い近況報告のような会話に移っていく。


 良くもなく悪くもなく印象に残らないように気を付ける。

 時々あほみたいな貴族子息が視線を向けてくるけど気づかなかったふりをする。


 一通り挨拶を終えて自由にしていいとゴラックから許可が出る。

 まずは食べ物と行きたいところだけどそうはいかない。


 子供には子供の社交界がある。

 大人の挨拶回りが終わったのなら今度は子供も大人に習って挨拶しなきゃならないのだ。

 

 特にアリアは新入りである。

 向こうから声をかけてくることなんてなくアリアから声をかけなきゃいけない。


 さっさと飯を食らっていれば後でどんな陰口を言われるか分かったものではない。

 これが貴族社会の面倒なところである。


 ゴラックの挨拶に付き合いながら周りも見ていた。

 一度大人として社交界を経験しているのだから状況を見抜くのもそんなに難しいことでもない。


「ご挨拶させていただいてもよろしいですか?」


 そして見つけたのだ。


「見かけない方ですね。


 どうぞもっとお近づきになって」


「ありがとうございます。


 私、アリア・エルダン。


 このような社交の場は初めてでして色々と教えてくださると助かりますわ」


「エルダンの……


 私はエリシア・グランドヴェールです。


 分からないことがあったら何でも聞いてください」


 エリシアを見つけた。

 回帰前アリアを陥れ、ケルフィリア教であるかのように工作し、死に追いやった張本人。


 スカートをつまんで丁寧にお辞儀をするアリアには文句の付け所もない。

 本来ならこの時期のアリアはここにはいない。


 だからエリシアがいて驚いた。

 けれどグランドヴェールもいいお家柄なのでこうした場にいても何らおかしなところはない。


 そういえばと思い出す。

 社交界に不慣れで右も左も分からなかったアリアに対してエリシアは優しくしてくれた。

 

 だからアリアは最初エリシアを姉のように慕っていた。

 今この場でもエリシアは中心的存在である。


 だから真っ先に挨拶に来た。

 取り巻きの令嬢たちもご紹介いただいて軽く会話する。


「エルダンといいましたらお隣の町でしたよね?


 これまで女性の方がいらっしゃるとは伺ったことはなかったような……


 申し訳ありません、私の勉強不足ですね」


「いえ……私がこうして社交の場に姿を現したのは初めてですのでお知りになられなくても当然のことです」


 回帰前ではエリシアはアリアのことを知っているようだった。

 表に出てこない当主の兄の子などいい噂話なのでそれなりに時が経った後なら知っていても不思議な話ではない。


 エルダンに近づくため、あるいはアリアを取り入れようとしたり利用するために調べていた可能性もあった。

 でも今はエリシアは本当にアリアのことを知らなそうだった。


 敵を知り、敵の懐に入る。

 この場で殺してしまえば楽かもしれないとは思うけれどエリシア1人を殺したところで全ては片付かない。


 アリアの気は晴れるだろうが。


「そうでしたか。


 大丈夫ですか?


 何か分からないこととかお困りのことはありませんか?」


 相変わらず全方位に良い顔をしようとしている。

 だから自然と人が集まり、やってもないことをエリシアがでっち上げても一方的にアリアが批判されるだけだった。


「いえ……ですがこうした場は初めてなので教えてくださると嬉しいですわ」


 今回はああはさせない。

 出来るなら絶望させたい。


 囚われた時に真実を告げられたアリアのように取り乱して汚い言葉を口にするエリシアの姿を見てみたいとアリアは思った。

 エリシアのお誘いでお茶を飲むことになったアリア。


 まだ礼儀作法のレベルは低い。

 だけどレベルが高かった時の感覚は覚えている。


 綺麗な姿勢を維持するのも優雅に見せるのも大変だけど気合と根性で指先まで気を使ってアリアはお茶を嗜む。

 誘ったエリシアはまだまだ未熟な点が目につく。


 それに比べてアリアはまるでお手本かのように動いている。

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