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ブルーアンドホワイト8

 通されたのは兵士たちが使う訓練場。

 待っているとカールソンが程なくして3人の男性を連れてきた。


 1人はアリアにも見覚えがあった。

 カールソンと同じく黒髪で黒い瞳だけどところどころに白髪の混じっている中年の男性。

 

 険しい顔つきをしているがカールソンとよく似ている。

 現在のカンバーレンド家当主で自身もオーラユーザーであるギオイル・カンバーレンドだった。


 ワイバーンをも単騎で倒す実力がある人で生きている間はギオイルがこの国でもトップクラスの実力者であった。

 まさか当主自らが出てくるとは思いもしなかった。


 アリアはフードを深く被り直す。

 順当に生きていればギオイルと顔を合わす機会がある可能性があるから今は顔を覚えられてはいけない。


「お待たせしました。


 こちらが僕の父でありカンバーレンド家の当主であるギオイル・カンバーレンド。

 そしてこちらが試験を出してくれる騎士団の副団長のウージェイ。


 もう1人が僕の師匠のファームズです」


 明るめの茶色い髪をしたやや垂れ目の男性が副団長のウージェイ。

 そして真っ白な髪をして眠そうな目をしている年齢不詳の男性がファームズであった。


「我が家の門を叩いてくれたこと感謝しよう。


 今回は……3人とも希望なのかな?」


「あっ……ええと」


 颯爽と現れてカッコよく物事に対処したつもりだったけどカールソンもまだ子供だ。

 必要なことも何も聞いていない。


 とりあえず兵士になりたいと希望してきた人がいると聞いて、それを伝えただけだった。

 アリアたちは3人いて誰が受けるのか、あるいは名前すらまだ聞いてもいなかった。


「今回はこちらのカインが受けます。


 私たちは付き添いですわ」


 カインの肩に手を乗せて軽く前に押し出す。

 希望するカインの名前さえ聞ければ良いから先手を打ってカインの名前だけ告げておく。


「では試験を受けてもらいますが……」


「少しお待ちになってください」


「……なんでしょうか、お嬢様?」


 カインは体も鍛えていない。

 頭も悪くはないけど勉強してきてもいない。


 試験が如何なるものか知らないけれど何かを試されてカインがそれに耐えられるとは思わない。


「まどろっこしい試験とやらは抜きにしませんか?」


「……何ですって?」


「申し訳ないがお嬢様、我が家では試験も無しに雇うことなど……」


「カイン、見せてあげなさい」


「はい」


 アリアの物言いに難色を示すウージェイとギオイル。

 何かを始められる前にまずは見せつけておく。


 カインが簡単に試験に落としては惜しい人材であると。


「なんと……!」


「オーラだと?」


 カインが目をつぶってゆっくりと呼吸する。

 出し過ぎないように気をつけて少しずつオーラを放出する。


 澄んだ青いオーラがカインの体から出始めて、わずかにそのエネルギーに押されるような感覚を訓練場に満ちる。

 ウージェイとギオイルは驚きに目を見開いた。


 それだけではなくカールソンとファームズも驚いたような顔をしている。


「ふぅ……」


 ある程度見せつけてカインはオーラを収める。


「あら……」


「おじょ……お姉さん」


 まだオーラを扱い慣れていない。

 制御したつもりでもオーラを留めおくのではなくただ放出しただけ。


 消耗は避けられず足元がふらついてしまった。

 カインの肩に手を添えてアリアが支える。


 貴重なオーラユーザー。

 しかも若くからオーラを発現しているとなれば大きな成長も望める。


 喉から手が出るほど欲しい人材であるはずだ。

 反応を見ると上々。


 ウージェイは主人であるギオイルの顔をうかがっている。

 オーラユーザーだからと勝手に採用するわけにいかないし、だからといってオーラユーザーを落とすなんてこともできない。


「それでも試験はする」


 わずかに悩みはしたがルールは変えない。

 オーラが使えることは考慮するけれどオーラが使えるからと試験を免除するような前例は作るつもりはない。


「やれるか?」


「はい!


 どんな試験でも乗り越えてみせます!」


 どんなことを試験するつもりなのか。

 ただどうにも試験をパスさせることはできなさそうなのでカインに頑張ってもらうしかない。


 そしてカインの入団試験が始まった。

 その内容はシンプルだった。


 まずは訓練場を走らされた。

 特別何の条件も求められずにただひたすらに訓練場をグルグルとカインは走る。


 良いところを見せるんだと意気込んでいたカインだったが少し前まで寝たきりだったのだ。

 あっという間に体力は切れて苦しそうな顔をして訓練場を走ることになる。


 でも汗だくで歩くようになっても足を止めないカイン。


「そこまで。


 少し休憩して次にいきましょう」


 止められてカインは床に倒れ込む。

 しかしここで手助けすると良くないのでアリアは手を出さない。


 シェカルテも弟をどうにかしてあげたいけどここはグッと堪えてタオルだけ渡してあげた。

 どれだけ重たいものを持てるのか見たり、剣や槍を振るわせてみたりと身体能力をチェックしていた。


「君はどうなりたい?」


 ウージェイを手で制してギオイルが前に出た。

 本来ウージェイがする質問をギオイル自らがカインに問うた。

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