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悪役令嬢、悪になる〜真紅の薔薇よ、咲き誇れ〜  作者: 犬型大
第五章

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共同戦線締結

「マルエラ卿の容態はいかがですか?」


 シェラオリアルの執務室に呼ばれたアリアは心配そうな目をシェラオリアルに向けた。


「命に別状はない。……だが相当無理をしたようだな。しばらくオーラは使えないだろう」


 マルエラの体に外傷は少なかった。

 ひどく赤くなっていたところはあったものの、その程度の怪我で済んでいたのだ。


 ケルフィリア教はマルエラが魔物の行方を調査していることを知って誘拐した。

 どこまで知っているのか聞き出そうとしたのである。


 誘拐したマルエラを拷問して情報を聞き出そうとしていたのだが、マルエラはケルフィリア教に屈することはなかった。

 かなり危険なこともされそうになったのだけど、マルエラはある方法を使って相手を牽制して耐え抜いた。


「オーラを全力まとい続けるなんて……」


 マルエラは拷問に対抗するためにオーラを使った。

 全力でオーラを出して体を防御したのだ。


 流石に刃物なんかを防御するまでの力はないのだが、多少なりとも効きにくくなる。

 さらに殴打などの攻撃にも強くなる。


 オーラで耐えている相手に対して無理に拷問を加えると、必要以上にダメージを与えてしまうかもしれない。

 その状態でオーラが解除されると死に至ってしまう可能性が大きくなる。


 だからケルフィリア教はマルエラに強い拷問を加えられなかった。

 オーラの消耗と拷問を兼ねてムチで叩くのがせいぜいだった。


 それでも普通の人にとって、鞭打ちがかなりの苦痛であることは間違いない。


「どんなに無茶でも最善の方法……でしたね」


 ただオーラを全力で出し続けるなんて長時間続けられるようなことではない。

 誰かが助けに来るまでと信じてマルエラは無茶でもオーラを出し続けた。


 その影響でマルエラの体は深刻なダメージを受けていた。

 安静にしていれば命にさわることはないけれども、しばらくオーラを使うことはできないだろう。


「そう心配せずともロイヤルナイトを見張りにつけて絶対に安静にさせる。仮に聖印騎士団とやらだったとしても私はマルエラを見捨てることはしない」


 シェラオリアルは少し悲しげな顔をするアリアに優しく微笑む。

 オーラも一生使えなくなるものではなく、体のダメージが癒えればまた使えるようになる。


 たとえオーラが使えなくなろうとも、シェラオリアルはマルエラが望むならそのまま手元に置いておくつもりだった。


「感謝いたします」


「拷問されても口を割らない精神力の持ち主は少ないからな」


「それでケルフィリア教はどうなりましたか?」


 マルエラを取り戻したからいって終わりではない。

 ケルフィリア教がマルエラを誘拐するなんて行動に出た理由は、予想通り国内に魔物がいるからなのである。


 マルエラが何かを知っていると向こうが思っている以上、またマルエラが狙われる可能性もある。

 マルエラの安全を確保するためにはケルフィリア教の問題を片付けねばならない。


 ここまで調べてきた情報が、ケルフィリア教が隠している魔物についての確信に迫っていることは確実である。

 だがケルフィリア教の情報はあればあるだけいい。


 何か引き出せる情報があれば楽になる。

 ただマルエラを拷問していたケルフィリア教はアリアが切り倒してしまった。


 マルエラを助けることが最優先だったので手加減する余裕がなかったのである。


「あの聖騎士という奴らは捕えられなかった」


 赤黒いオーラを放つ聖騎士は二人とも死んだ。

 一人はシェラオリアルを阻止しようとしてそのまま倒された。


 もう一人は囲まれても諦めることなくオーラを使って戦い続け、限界を超えたのか血を吐いて死んでしまったのであった。

 オーラは自分のエネルギーであり、相当無理をしても死ぬことなどまずないのだけど、やはり赤黒いオーラは普通と違うようである。


「他の拠点で捕らえた者もいるが、どいつもこいつも下っ端らしい」


 倉庫の他に襲撃した拠点で捕らえたケルフィリア教もいるが、情報を持っていそうな人はいなかった。


「置いてあった資料などは現在解析中だ。よくも私の国で好き勝手してくれたものだ。許せないな」


 シェラオリアルは冷たい目をしている。

 いくつもの拠点を作り、魔物を呼び込んでマルエラを誘拐までしてくれた。


 プライドとしてもかなり傷つけられた。


「マルエラも意識は取り戻している。だからマルエラの話を中心に事を進めていく」


 今のところケルフィリア教から情報は得られていないが、マルエラの調査の中にケルフィリア教を刺激するものがあることは分かった。


「しかし今回のことでケルフィリア教が想定以上に大きく、そして闇に潜んで根を張っていることが分かった」


 シェラオリアルは小さくため息をつく。

 首都でこの状態なのだ。


 どこまでケルフィリア教の影響が広まっているのか分かったものではない。


「聖印騎士団の力を借りたい」


「……よろしいのですか?」


「国を守るためにプライドなどにこだわってはいられない。アリア、君なら安心できる相手なことは分かっているしな。力を貸してくれるか?」


 聖印騎士団は秘密の組織である。

 決して怪しいものではないが、実態が掴めないという点ではケルフィリア教には近いところもある。


 加えて一応宗教組織でもある。

 あまり宗教と接近する事を好まない施政者は多い。


 だがシェラオリアルはケルフィリア教を追い詰めるためなら聖印騎士団も利用するつもりだった。

 その窓口としてアリアを選んだのだ。


「お任せください。ケルフィリア教には痛い目を見ていただきましょう」


 シェラオリアルが味方となってくれるならこれほど心強いことはない。

 アリアは柔らかな微笑みを浮かべてシェラオリアルと握手を交わしたのであった。

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