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ケルフィリア教掃討作戦2

 迅速に、かつ隠密に。

 シェラオリアル直属の騎士であるロイヤルナイトは準備を進めて部隊を編成した。


 一部の人を除いては目的地も知らず朝早くから動き始めた。


「北側コーディスト地域にある高級宿クネスト……」


 ケルフィリア教はあたかも普通の人のように生活に溶け込んでいる。

 騎士や兵士として潜り込んでいるだけでなく町中で仕事をしていたり商売をしていたりもする。


 そうして町中に溶け込む隠れ家の一つがクネストという宿であった。


「オーナーはリラフ・バンジェヨン。父親のデグモン・バンジェヨンの代からカロンストナに住んでいます。デグモンは商人であったが引き継いだリラフは父親の仕事をそのままではなく宿を開いたようです」


 一晩の間で調べたクネストの情報をロイヤルナイトのギアラがシェラオリアルに報告する。

 どうやって調べたのかと思うが特に首都においてシェラオリアルの息がかかっていないところなどないのだ。


 クネストに向かいながらの報告なのでやや急ぎ足であるが報告を聞く限りではただの宿のように思えた。

 流石に一晩では怪しいところまで調べきれず表面的な情報までしかない。


「本当にケルフィリア教の拠点なのですか?」

 

 時間がないから調査不足である。

 しかし表面的な情報を見る限り怪しさなどなく真っ当に宿を経営している。


 襲撃するにしてももっと裏取りを進めてからにしたいとギアラは思った。


「信用できないか?」


「そのようなことは……ですが万が一間違っていたら……」


 ケルフィリア教ではないのにケルフィリア教だと思い込んで捜査に入るなどシェラオリアルの信用問題に関わってくる。


「せめて女王様は直接向かわれない方が……」


 シェラオリアルが出向いてしまえば言い逃れなどできない。

 仮にケルフィリア教の拠点でなかった場合直接出向かなくてもシェラオリアルの責任は逃れられないだろうが、部下がやったことであると一定の言い訳はできる。


「私がみんなに責任を押し付けると思うか? 全ては私の責任だ。たとえ間違っていたならば私が責任を負う。当然のことだ」


「……失礼しました」


 マルエラのためにはのんびりとしていられない。

 たとえ責任が発生しようとも素早く動かねばならない。


 まだ早い時間で人通りは少なくアリアたちの行手を阻む者はいない。


「宿を調査する! 全員動くな!」


 クネストについた騎士たちは宿の周りを封鎖し中に乗り込む。


「な、なんなのですか!」


「この宿がケルフィリア教の拠点として使われている可能性がある! そのために調べさせてもらう!」


「ケ、ケルフィリア教ですと!? そんなバカな……」


 朝早くから一階の掃き掃除をしていたリラフは急に乗り込んできた騎士たちに驚きを隠せない。

 ケルフィリア教の拠点かもしれないなんてことを言われて次に顔を青くした。


「動くな! 一歩でも動けば叛逆の意図ありとみなす!」


 ギアラがリラフに剣を突きつける。

 今はもうリラフはケルフィリア教の疑いがある人物だとして扱っている。


 たとえ無実だったとしても容疑が晴れるまでは手を抜かない。


「お、王様! これは一体どういうことですか! うっ!」


「次はない」


 シェラオリアルが入ってきたのを見てリラフが説明を求めようとしたけれど、ギアラは冷たい目をしてリラフを止める。

 疑いのある者を王に近づけさせはしない。


「さて、アリア」


「なんでしょうか?」


「隠しものはどこにあると思う?」


 ケルフィリア教だという証がそこらへんに転がっているはずがない。

 拠点だとしてもどこか分かりにくいように隠しているはずである。


「地下でしょう」


「どうしてだ?」


「宿という特性上人が多く出入りします。どこかの部屋に集まったりする可能性もありますが周りの宿泊客に見られる可能性があります。見たところ一階には客室がないようです。ならば一階か、地下にケルフィリア教としての活動拠点があると思います」


 宿なので人が出入りしてもおかしくない。

 ただやはり客室というのは他の客もいるし見られたり話を聞かれたりする可能性が出てきてしまう。


 ケルフィリア教がそんなリスクを冒すとは思えない。

 客室がない一階のどこかか、もっと用心して話を聞かれる心配のない地下だろうとアリアは予想した。


「クソでごみみたいなケルフィリア教なんて地下でしょうね」


「なっ……」


「ほーら、こんな顔なさる」


「……くっ!」


 ふとアリアが吐いた汚い言葉にリラフが顔を歪めた。

 それは怒りだった。


 ケルフィリア教を罵られたことによる怒りが思わず顔に出てしまい、シェラオリアルもギアラもリラフの表情の変化を見逃さなかった。


「押さえろ!」


 リラフは逃げ出そうとして騎士たちに取り押さえられる。


「これだから見抜きやすい……」


 ケルフィリア教はかなり強固な組織で簡単には口を割らない。

 だが心身の高さからケルフィリア教をバカにされると簡単に怒ってしまうのが問題点である。


 たとえその場を誤魔化すためでもケルフィリア教のことを悪様に言うこともできない。

 代わりにケルフィリア教のことを悪く言えば狙われる可能性もあるのであまりそこらでケルフィリア教の悪口は言えない。

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