怪しき候補地
「マルエラ卿がさらわれた……だと!?」
パーティーへの襲撃があった次の日早速アリアは動いた。
聖印騎士団の隠れ家については聞いていたのでジェーンを引き連れて話を聞きに訪れた。
隠れ蓑として聖印騎士団は商店を営んでいて日常に完全に溶け込んでいた。
ついでにお金を稼いでいくこともできるのでいい隠れ蓑であると思う。
アリアの訪問で商店であるキマチョは店を閉めた。
頭の禿げ上がったおじさんで普通の人にも見える。
アリアが事情を説明するとキマチョは驚愕したような顔をしていた。
マルエラは聖印騎士団であると同時にシェラオリアルに仕えるロイヤルナイトでもある。
その実力は折り紙つきであり誘拐されるようなか弱い人でもなければ誘拐するようなバカもいない。
「マルエラ卿が調査していたケルフィリア教の動きが関わっていると私は読んでいます」
むしろケルフィリア教ぐらいしかマルエラに手を出す人はいない。
「マルエラが何を調査していたのか報告は受けていますか?」
「もちろんです。我々も協力していましたから。まさかそれが関わっているのですか?」
「おそらく」
魔物を捕まえて運び込むのは重大な犯罪である。
簡単なことでもなくかなりの労力を必要とする。
港はすでにアリアが抑えてしまったので仮にまた魔物を捕まえたとしても国内に運び込む手段はより厳しいものとなる。
つまり今運び込まれている魔物はケルフィリア教にとってかなり大切ということなのだ。
マルエラは魔物がどこに隠されているのかギリギリまで迫ったのだろう。
だからさらわれたのだ。
「すぐに資料をお持ちします」
キマチョは慌てて立ち上がると別の部屋から紙の束を抱えてきた。
「マルエラ卿は真面目なのでどんなものでも細かに報告書を作っておりました。こちらが直近の報告書になります」
キマチョが数枚の紙をアリアの前に置いた。
「キエルハルト、フリューダン、ギンド……」
「その三つが魔物が隠されているかもしれない候補地です」
マルエラは魔物が隠されているかもしれない場所を三ヶ所まで絞り込んでいた。
「ギンドに赤い丸がついていますね」
「マルエラ卿はそこが1番怪しいと踏んでおりました。流石に自分では動けないのでギンドをより詳細に調査するように言っていました」
マルエラはギンドという都市を1番怪しいと思っていた。
しかしロイヤルナイトとしての仕事があるマルエラでは調査に限界がある。
そのために聖印騎士団の方に現地調査をお願いしていた。
「ギンドに王国の調査も入るように報告を上げようとしていました。ほか二箇所も調査は進めていますがギンドに魔物が隠されている可能性は高いと思われます」
「分かりました。ありがとうございます」
「調査についてはどういたしましょうか?」
「このまま継続してください。何か分かりましたらすぐに私にも報告を」
「承知しました。お気をつけてください。相手は本気ですから」
「こちらはいつも本気です」
「……そうですね。こちらとしてもマルエラ卿は仲間ですので心配です。さらわれた以上は生きているとは思いますが早く救い出してあげたいものです」
「ええ、私も努力いたします」
ケルフィリア教に関する調査やマルエラが他にもやっていた調査などの資料も受け取ってアリアは商店を出たのだった。