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ここなら周りは気にしなくていい1

 シェラオリアルの生誕祭が近づいて招待客が集まってきた。

 カロンストナの騎士に混じって訓練に参加していたアリアとジェーンも流石に大人しく招待客らしく振る舞うことにした。


 ただアリアの扱いは相変わらず超がつく貴賓だった。

 そうして生誕祭の日を迎えた。


「お似合いです、お嬢様」


 アリアは真っ赤なドレスに身を包んでいた。

 メイクやドレスの着付けはお城のメイドさんたちが手伝ってくれた。


 アリアには赤がよく似合うとジェーンは思う。

 本当なら自身でシェカルテなんかを連れてくるべきだったのだけど、カロンストナで何があるか分からない以上は戦えないメイドを連れては来れなかったのだ。

 

 アリアの叔母であるメリンダのメイドであるクインならばと思う事はある。

 クインは聖印騎士団であり戦いの心得がある。

 

 アリアやジェーンほどではなくとも自分の身を守ることはできるのだ。

 ついでにメイドとしても普通に優秀である。


「それも……お似合いです」


「こんなものお借りしてもよかったのかとは思いますが厚意を無下にはできませんからね」


 アリアの首からはネックレスがかけられている。

 大きな赤い宝石がよく目立つもので、アリアの持ち物ではなくシェラオリアルが是非つけるといいと貸してくれたものだった。


「いかにも高そうですね……」


 宝飾品について詳しくないジェーンでも安い品物でないことぐらいは分かる。


「無くさないようにしませんとね」


 アリアは胸に手を当てるようにしてネックレスを持ち上げる。

 深い赤色はアリアのオーラを思わせる。


 もしかしたらアリアのオーラに合わせて選んだのかもしれない。


「では会場に向かいましょうか」


 ドレスにも合っているしこのままつけて会場に行く。

 会場には多くの人が集まっている。


 ほとんどの人がカロンストナの貴族であるのだが一部他国の招待客もいる。

 アリアの国からも招待されている人がいた。


 アリアは大人の社交界にまだ顔を出していないのでアリアだと気付く人はいないが、アリアは何人か知っている顔がいた。


「アリア!」


「えっ? ノラスティオ様?」


 パーティーに招待されたけれど特に知り合いもいない。

 まだ若いアリアは若干浮いたような感じもあるし大人しくしておこうと思って壁際に立っていた。


 なんの料理でも食べようかとぼんやりしているとアリアに声をかけてきた人がいた。

 名前を呼ばれ驚いて振り向くとノラがいた。


 第三王子のノラスティオである。


「それにユレスト様も」


「お久しぶりです、女神様」


「今度そう呼んだら舌を引き抜きますからね?」


「はははっ、相変わらずお元気なようで」


「それにしてもどうしてここに?」


 なぜノラとユレストがシェラオリアルの生誕祭にいるのか。

 アリアは不思議そうな表情をした。


「私はノラスティオ様のお付きとして」


「……よくやってくれているようですね」


 アリアのことを勝利の女神と崇拝するようなユレストであったが、アリアの身辺にユレストを置いておく場所はない。

 そこでアリアはユレストに対してノラに力をやってほしいとお願いしていた。


 ユレストは頭が良い。

 戦略家としてはまだまだであるが選挙におけるアリアの手腕を見てただ正面から挑むだけでは何も変えられないと知った。


 今ではその頭脳を使ってノラを支えている。

 ユレストが謀略を覚えれば敵う人など少ないだろう。


「もちろん招待されたからだよ」


 ノラはニッコリと笑顔を浮かべる。


「招待といっても……」


「そこは私が提言したしたのです」


「ユレストが?」


「カロンストナと仲良くなるべきだと私は考えています」


「そこでたまたま縁があってシェラオリアル様と少し話をさせてもらったんだ。その流れで招待してもらったんだ」


 カロンストナとアリアの国の関係は良くも悪くもない。

 確かな軍事力を持つカロンストナを敵対視する事はないけれど、女性が君主であるためか隣国でも一定の距離は置いている。


 やはり男性が家長という価値観が根強いためなのだろうとアリアは思う。

 エルンも男性が家を継ぐべきという考えの人でカロンストナと仲良くするつもりはなく、これまで通り距離を保ちつつ関係を維持していくつもりだ。


 そこでユレストはカロンストナと接近することをノラに提案した。

 今の時代女性もかなり台頭してきている。


 女性が家長を継ぐケースも少ないながら見られ始めていて男性だけがトップだという考えは古臭いとユレストは考えている。

 誰を念頭に置いてるのか分かりやすいものであるがユレストの考えにノラも賛同した。


 カロンストナと国交を深める事はそうした社会への第一歩になりうる。

 偶然シェラオリアルと話す機会がノラにはあった。


 強い女性が率いていくことも必要だという話で意気投合してノラはシェラオリアルの生誕祭に招待されたのだった。


「ノラ様も上手くやっているのですね」


 回帰前のノラは仲間が少なかった。

 第二王子であるエランに賛同できなかったり仲間になれなかった人がノラを担いでいたがそれももう時としては遅かった。


 今回はノラも積極的に動いている。

 まだまだエランも地盤が固まりきっていない今ならば切り崩して仲間に引き入れられる人もいるだろう。

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