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憧れの人の国1

 アリアが住まう国の南東方角にはカロンストナという小さな国が国境を接している。

 産業としては特別なものもないような国であるが抱えるオーラユーザーが多く、一人一人の実力も高いので小さくとも手を出すようなところはない。


 そしてカロンストナには大きな代名詞ともいえる特徴が一つある。

 王が女性であるのだ。


 他の国で女性が王になることも時にはあるがやはり全体として見た時に女王は多くない。

 しかしカロンストナは代々女性が王となってきた国なのである。


 さらに今の王はもう一つ特徴を持っていて右腕がないのである。

 肩口が先がなく、隻腕女王などと呼ばれているような時期もあった。


 一時期王位を簒奪しようとした男性王族との戦いで右腕を失ったのであるが、女王はその男性王族を直接の戦いで倒して王になった。

 女王シェラオリアルは素晴らしい人である。


 そうアリアは思う。

 隣国の女王など関わることがないように思えるのだけれどアリアは回帰前に一度会ったことがあった。


 エランに離婚を言い渡され宮中を追い出されたアリアはエルダンに帰ることも嫌で全てを捨てて家を出た。

 しばらく住むのにいいところはないかと探していたところアリアが滞在していた町で魔物が現れて大騒ぎになった。


 4等級の魔物でかなり強く、町中の人々が逃げ惑う中でシェラオリアルが魔物の前に立ちはだかった。

 護衛のオーラユーザーと共に魔物に立ち向かったシェラオリアルの姿をアリアは覚えていた。


 強い憧れすら抱く毅然としたシェラオリアルの姿は今のアリアに少なからず影響を与えている。


「嬉しそうですね」


 ジェーンは珍しいなと思いながらアリアの顔を見た。

 馬車に揺られるアリアの顔がどこか楽しそうに思えたのだ。


 今アリアたちはカロンストナに向けて馬車を走らせている。

 いつもならどこか遠くに行くという時は面倒そうな顔を隠すこともしないというのに今回のアリアの表情はかなり軽い。


「そうですか?」


「そうですね」


 めんどくさいとため息つかれているよりはよほどいいとジェーンも思う。


「くっだらないパーティーなんかよりもカロンストナに行く方がよっぽどいいですからね」


「くだらないパーティーですか?」


「私と近づきたい能無し女やクソみたいな第二王子に近づきたいバカ貴族のパーティーです」


 相変わらず口が悪いなとジェーンは苦笑する。

 騎士にも平民出身の人がいて口が悪いようなこともあるけれどアリアのそれはその中でも結構ひどい時がある。


 他の人の前ではそんなこと言わないので信頼されているからこそなのだろうと思うけれどどういったリアクションをしていいのか分からなくてちょっと困る。

 それに第二王子をクソを呼ばわりするのはきっとアリアぐらいだろうと思う。


「け、けれどまさか他の国から招待状が届くなんて意外でしたね」


「確かにそれは驚きでした」


 カロンストナに向かっている理由は大きく分けて二つあった。

 一つはカロンストナからアリアに対して招待状が届いたのである。


 女王であるシェラオリアルの名前でシェラオリアルの誕生の祝いのパーティーに参加しないかというものだった。

 まさかの招待にエルダン家でもちょっとした騒ぎになった。


 理由は分からないけれど招待されたのはアリアだけだったのでアリアだけが向かうことになった。

 憧れの人の招待なのだから行くことにアリアは迷いなどなかった。


「それと……ケルフィリア教がいるかもしれないんですよね……?」


「私の勘ではいると思いますよ」


 カロンストナに行くもう一つの理由はケルフィリア教がいる可能性があるということだった。

 アルドルトにお願いして薬の流通からケルフィリア教を探してもらっていた。


 その結果薬が秘密裏にカロンストナに運ばれているということを突き止めたのである。

 ということはカロンストナに魔物が運ばれている可能性がある。


 招待があったからカロンストナに行くと表向きはなっているが、仮に招待がなくても何かの理由をつけてカロンストナに向かうつもりだった。

 薬が秘密裏に運ばれているからとカロンストナにケルフィリア教がいて、魔物が隠されているとは限らない。


 けれどもアリアはなんとなくカロンストナにケルフィリア教がいると感じていた。


「その自信はどこから……?」


「あくまで勘です」


 ただの勘とも言い切れない。

 回帰前シェラオリアルと出会った魔物事件が起きたのは国内でありながらカロンストナに近い大きな町でのことであった。


 普段は魔物なんかでないような場所に高い等級の魔物がいきなり出た。

 当時はアリアだけでなくて調査でも理由が分からなかったけれどケルフィリア教が関わっているとすれば今更ながら納得できた。


 シェラオリアルがケルフィリア教だとは思わない。

 けれどカロンストナが小国ながら生き残るためには色々とやっているので監視の目が行き届いていないことはどうしても仕方ないのである。


「まあ行って確かめてみるかありません」


「……向こうでも聖印騎士団が協力してくれるんですよね?」


「そうです。向こうにも支部があるのでそちらが協力してくれる手筈になっています」


 カロンストナにも聖印騎士団の支部があった。

 これまでケルフィリア教の活動が報告されていないので規模は小さいけれど今回アリアのバックアップを行ってくれることになっていた。

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