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後輩たち2

 見た目だけでなく頭もいいのだろう。

 学んだことを吸収する力もサラは高かったのである。


「あなたが楽しそうなら何よりですわ。何かあったら言ってください。私がぶっ飛ばして差し上げますから」


「お姉様……!」


 サラは頬を赤らめて感動したようにアリアを見る。


「あはは、仲が良さそうでいいね」


 そんな様子を見てパメラは笑う。

 サラはなかなか周りにはいないタイプの子であるが嫌いではなかった。


 作法としてはまだまだなところはあるけれど礼儀はあるし、カラッとした性格は好感が持てる。

 アリアにはかなり下手に出ているけれどパメラとトゥージュに対しては年の差なんて感じさせない気さくさもある。


 トゥージュの方も最初は困惑していたような感じがあったけれど、打ち解けてくるとそんなに相性も悪くなかった。

 手先が器用で貴族令嬢的なことが得意なトゥージュはサラがそうしたことに困っていると教えてあげたりしていた。


 多少口は悪かったりするけれど何事もまじめに取り組むのでトゥージュもサラのことを認めている。


「お姉様!」


 そしてアリアのことをお姉様と呼ぶ後輩がもう一人テーブルに近づいてきた。


「お昼ご一緒してもいいですか?」


「ええもちろんよ、カイン」


 それはカインであった。

 アリア付きのメイドであるシェカルテの弟でオーラユーザーの少年。


 オーラを習うためにカールソンの家門であるカンバーレンドで見習い騎士として働いている。

 どうしてアカデミーにカインがいるのか。


 それはもちろんアカデミーに入学したからである。

 カインほど若い騎士はカンバーレンドの中でも異例の存在らしいのだが、新たな環境に身を置いてより成長を促すためにアカデミーに通わせてもらえることになったようだった。


 アカデミーで切磋琢磨してもらうという目的も当然あるのだけれど、実際のところカインとカールソンの思惑が一致したというところも大きい。

 カールソンはアカデミーを卒業になった。


 しかし年下のアリアはまだアカデミーに残る。

 アカデミーで危険なことなどないと思うのだがキュミリアのことがある。


 他にも王太子妃適性試験のこともあってアリアがアカデミーで無事に過ごせるかカールソンは心配だった。

 ただ卒業したカールソンがアカデミーでアリアのそばにいることはできない。


 そこでカインなのである。

 ちょうどアカデミーに入学できる年齢となったカインがアリアと知り合いであることはカールソンも知っていた。


 かなり親しげに声をかけているところも見ていたしアリアに近づくことは難しくない。

 日々まじめに修練に取り組むカインは同年代の子には負けないほどに強くなっているし、オーラユーザーならばアリアの役に立つこともあるだろうと考えたのだ。


 ただカインがアリアに対して敬意以上の想いを持っていそうなことはカールソンは気になっていたが背に腹はかえられなかった。


「なんのお話をなさっていたのですか?」

 

 今はパメラとトゥージュがアリアの前に座り、サラが右隣にいた。

 たまたまアリアの左隣が空いていたのでカインは喜んで左隣に座った。


 相変わらず甘い顔立ちをしているものだとパメラはカインの顔を見て思う。

 パメラの趣味ではないけれどカインの顔をチラチラと見ている人が食堂内にもいる。


「サラのアカデミーでの話を聞いてたのよ」


「こいつ……サラさんのお話ですか」


 カインとサラの視線が合ってバチリと火花が散る。


「今こいつって言いました?」


「気のせいじゃないですか?」

 

 カインとサラの仲はあまり良くない。

 なぜなのかアリアはよく分かっていないのであるがどれもこれもアリアを取り合ってのことであった。


 アリアのことを同じくお姉様と呼ぶ同志であるのだがアリアに見てもらいたいという思いも同じなのである。

 互いが互いにアリアに見てもらう機会が減ってしまうとライバル視をしていた。


 パメラとトゥージュにとっては微笑ましい争いなのだけど当の本人は自分を巡って争っているなどと考えていないこともまた面白い。


「僕、お姉様と同じユーケーンに入ろうと思います」


 サラの言葉を鼻で笑ったカインはサッと笑顔を浮かべてアリアの顔を見る。


「あら、そうなの?」


「はい! クラブの先輩としてもよろしくお願いします!」


 カインの実力ならユーケーンに入ることは全く問題がない。

 むしろオーラユーザーが来てくれることはありがたい。


「……私もユーケーンに入ります!」


 サラが対抗心を燃やす。


「あなたが? 怪我しないうちにやめておいた方がいいと思いますよ?」


「なにおぅ! 私だって剣扱えるんだから!」


 デュスディニアスはサラを普通のご令嬢のように育てようとした。

 しかしサラの面倒を見ていたのは水賊のメンバーだった。


 水賊であることは秘密にしていたのだが隠し切れるはずもない。

 そんな人たちが面倒見ていたこともあってサラは同年代の子に比べてヤンチャだった。


 小さい頃は剣を振り回して遊ぶこともあった。

 剣を教えろと面倒を見てくれていた水賊に迫ったこともある。


 カインに敵わなくとも多少剣には自信があった。


「まあ入会テストを受けてみれば分かりますわ」


「そうですね。お姉様に僕の実力を見せてあげます」


「負けないからな!」


 自分越しに睨み合うのはやめてほしいけれどなんだかんだカインとサラも仲が良いのではないかとアリアは思った。

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