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ブルーアンドホワイト4

「おじ様、いきなりのご訪問失礼致します。


 アリアです」


 カインが固く覚悟を決めた次の日、アリアは本邸を訪れてゴラックの執務室のドアをノックした。

 次の日に訪れることにしたのはさまざまな事情があって1番大きな理由はビスソラダがいないからだ。


 たまたまお茶会があるらしくビスソラダは外出している。

 完全にビスソラダはアリアの邪魔になる敵だろうと認識している。


 何かお願いをしようものならそれを聞きつけて邪魔しにくる可能性がある。

 いない間に約束を取り付けてしまえば邪魔するのは難しくなる。


 力技で取り下げさせることも考えられるが食事会でのこともあるし今はあまり強気にも出られないはずである。

 あとはどうにかゴラックを説得するだけである。


 何しに来たんだとヒソヒソとメイドたちが噂するけど今のアリアはそんなことでは怯まない。

 やはり本邸はビスソラダの息がかかっているのかメイドたちの視線はあまり好意的ではない。


「アリアか?


 入りなさい」


 忙しいと追い返されることも心配していたけれどすぐにゴラックは入れてくれた。

 執務室はシンプルな作りで大きなデスクや話し合いができるテーブルがあるぐらいで飾り気はない。


 何かの書類を処理していたのかメガネをかけたゴラックがデスクについていた。

 改めて見るとゴラックは朧げに覚えている父の顔にも似ている。


 肉体派で男臭さの強い父親よりもゴラックの方が知的でシャープな印象だが基本的な作りは大きく違わない。

 兄弟だから当然といえば当然だが。


「どうした?」


「いえ、前回のお食事の時には無礼を晒しまして申し訳ありませんでしたわ」


 しなやかにおじぎをするアリア。

 自然な動作に驚いてゴラックが眉を上げた。


 まだ先生は付けていないはずなのにゴラックが見る分にはアリアの動作は完璧に見えた。

 回帰してきて前世の記憶があるだなんて考えるはずもなく、人知れず努力をしてきたのだと考えた。


 無理なく自然に見えるほどに所作を行うのにはどれほどの努力をしたのか。

 引きこもってばかりいると聞いていたのにアリアはアリアなりに適応しようとしていたとゴラックは感動を覚えていた。 


「気にするな。


 ビスソラダにもよく言っておいた」


「ありがとうございます、おじ様」


 アリアがニッコリと笑うとゴラックの表情も柔らかくなるような気がする。


「そのために来たのか?」


「いいえ、今日はお願いがあって来たのですわ」


「お願いだと?

 言ってみなさい。


 私に出来ることなら叶えよう」


「いつもありがとうございます。


 実は……社交の場を体験してみたいのですわ」


「社交の場だと?」


「まだ私には早いことは分かっているのですが周りのご令嬢がどのようにしているのか……見てみたいのです」


「なるほど……」


 大胆なお願いだけど分からない話ではない。

 アリアには貴族の社交場の経験がない。


 貴族の子供なら未熟でも子供での集まりや大人についての社交場を経験することがある。

 完全なマナーは求められなくてもどんな雰囲気であるのかを経験することになる。


 先生に教えてもらうだけでは分からない周りの雰囲気や実際の動きというものを経験したいという話は理解できる。


「話は分かった。


 何か良い集まりでもないか調べておこう」


「あの……」


「どうした?」


「ええと、行ってみたいところがありまして」


「ほう?


 もうすでに目をつけているところがあるのか?」


「近々カンバーレンド家でそのご子息のお披露目会が開かれると聞きました」


 これがゴラックに会いにくるのを急いだもう1つの理由。

 シェカルテに調べてもらった情報によるとカンバーレンド家では近いうちにパーティーが催される予定があるのだ。


 合理的にカンバーレンド家に向かうのにちょうど良い流れを作れる。

 少々今のアリアには敷居が高い場であるのでこのお願いは賭けである。


「それをどこから?」


「メイドが教えてくれましたわ」


「ううむ……」


 ゴラックは渋い顔をして悩む。

 カンバーレンド子爵家は剣の腕で成り上がってきたことで有名なお家である。


 何かの戦いが起こればカンバーレンドは最前線で戦い、戦果を上げてきた。

 そのために王からの信頼も厚く大きな兵力を持つことも許されている。


 爵位としてはエルダンよりも下になるが軽んじていい相手では決してない。

 当然カンバーレンドで開かれるパーティーにはエルダンにも招待状が来ていた。


 ディージャンとユーラ、それにどう調べたのか実はアリアにも招待状が来ている。

 つまりそれだけの情報力も持っているということ。


 招待状があるのでアリアを行かせることは可能だ。

 しかしマナーに関して勉強不足なアリアをそのような大きな場に行かせてよいものが迷いがある。


 もっと小さい、お茶会のような集まりから始めるべきではないかとゴラックは考えている。


「ダメですか、おじ様?」


「うぅ?」


 目をウルウルとさせてみるアリア。

 これでダメならバレないように外出するしかない。


 女の子の子供がいないゴラック。

 女性に関しても真面目な性格で経験は少なく、アリアに対してどうしたらいいのか思いつかない。

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