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後輩たち1

「ハァッ……」


「アリア大丈夫?」


「大丈夫ですわ……」


 ため息をついたアリアの顔をパメラが心配そうに覗き込む。

 場所は再び始まったアカデミー。


 当然ことながらアリア自身に変化はない。

 以前に比べればいくらか背は伸びて女性らしい体つきになってきたということはあるけれど中身は変わらない。


 パメラやトゥージュも変わらない。

 しかし周りに変化が起きてしまった。


 アリアがエランから王太子妃適性試験の誘いを受けた噂はあっという間に広まった。

 ここまで第二王子であるエランとアリアと距離は近くなく、アリア自身も皇后の座に興味を示したこともなかった。


 エルダンとしての権力はありながらも積極的に交流していくような相手ではなかったのである。

 けれどもアリアは王太子妃適性試験に誘われた。


 現在のところ第一王子の勢いが衰えて第二王子であるエランの勢いが増している。

 次の王はエランなのではないかと言われるほどになっていた。


 つまりそんなエランに誘われたアリアは次期皇后の可能性が出てきたのだ。

 まだどうなるのか分からないが次期皇后なるかもしれないならばアリアに取り入っておこうと考える人がいたり、あるいは今のうちからアリアを蹴落とそうとする人もいた。


 無駄に媚を売ってくる人と敵意を向けてくる人がドッと増えたのである。


「トゥージュゥ〜」


「やっぱり疲れてるんだね。よしよし」


 全てのことが煩わしく感じられてアリアはトゥージュに抱きついた。

 頻度は高くなかったけど回帰前でもトゥージュはアリアが疲れていると感じるとこうしてギュッとしてくれたことがあった。


 トゥージュに抱きしめられると不思議と安心する感じがある。


「そんなに嫌なら王太子妃適性試験受けなきゃいいんじゃない?」


 パーティーから帰った後家を通さない王太子妃適性試験についてゴラックから王室に正式に抗議が送られた。

 けれど起きてしまったことはどうしようもない。


 断ることは困難とはいえ断れなくもない。

 今回のことでエランに対して不信感を持ったと無理やり押し切って断ることも可能といえば可能なのである。


「そうですわね。ただ一発ぐらいはぶん殴ってやりたいですわ」


「それは……やめた方がいいかな?」


 流石のアリアとはいっても王族殴って無事で済むとは思えない。

 気持ちは理解するけれどエランを殴るのはやめておいた方がいいとパメラは苦笑いを浮かべる。


「まあいいですわ。トゥージュチャージもできましたし」


「変な名前つけないでよ〜」


 トゥージュにヨシヨシしてもらったのでイライラは収まった。

 どの道この話題に関してもアリアができることは少ない。


 肯定しても否定しても変に話が盛り上がってしまう。

 何も答えず周りが興味を失うのも待つしかない。


「周りが煩わしければ私に言ってください、お姉様! 全員私がぶっ飛ばしてあげます!」


 そしていつものパメラとトゥージュに加えてもう一人アリアたちの輪にメンバーが増えている。


「ふふふ、そんなことをしたらせっかく入れたアカデミーを退学になってしまいますわ、サラ」


「うっ……それは……でもお姉様のためなら!」


 そのメンバーとは元水賊の頭領であるデュスディニアスの娘であるサラであった。

 デュスディニアスとアリアは取引をした。


 アリアが全てのことを秘密にし水賊をやめて真っ当な仕事になれるように手伝う代わりにデュスディニアスはアリアに忠誠を誓った。

 さらにはデュスディニアスの弱点ともなるサラについてもエルダンで保護することを約束した。


 ついでにサラとデュスディニアスの希望もあってサラをアカデミーに入学させたのである。

 貴族的な素養を学ぶこともできるし保護する上で安全な場所ともなる。


 年齢はすでにアリアよりも年上なのだが経済的な都合や本人の体調的な都合から遅れてアカデミーに入る人もいる。

 多少年齢が上だからと気にすることはない。


 サラ自身は気にしている様子もない。

 アリアの方が年下なのにお姉様と呼ぶことについてパメラとトゥージュは最初違和感があったようだが、いつの間にかもう受け入れている。


「その言葉だけで嬉しいですわ」


「もう……本気だけど……」


 デュスディニアスはサラのことを普通のお淑やかな女の子として育てたつもりだったけれど、サラはデュスディニアスに似て男気のある女性だった。

 デュスディニアスが世話できない時には水賊の誰かが世話を焼いていたりしたのでその影響から荒っぽさも残っている。


 アリアとしてはメソメソした性格よりかなり好意的には見ているが貴族令嬢も多いアカデミーでは気をつけてもらわねばならないところはある。

 ただ身なりを綺麗にして制服を着ていれば周りの令嬢と遜色ない見た目をサラはしている。


 サラの母親のことは知らないけれど容姿の良い人だったのだろうことはまず間違いない。


「それよりもアカデミーには馴染めそうですか?」


「みんなよりも年上なことで大変ですが、色々学べることは楽しいです! お裁縫やダンスもレベルがあるなんて初めて知りました」


 ニコニコとしているサラは楽しそう。

 今までやったこともなかったことをやってみるとあっという間にレベル上がっていくから周りとのハンデなど気にせず授業を受けていた。

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