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くだらないパーティー1

 仕方なく招待に応じてアリアは王城にやってきた。

 着飾った令嬢たちが目を輝かさせている。

 

 夢と希望に満ち溢れ、もしかしたら自分も一部の上流社会入りを果たせるかもしれないなどと期待を持っている。

 別に良いと思う。


 実際は一瞬の油断もできない生き馬の目を抜くような過酷な世界であると冷たく城を見つめるアリアよりは希望に胸を膨らませている方がいくらかマシかもしれない。

 カンバーレンドですら劣るように見える華やかなパーティー。


 規模もかかっているお金もカンバーレンドで開かれていたものよりも大きく、集まっている人の幅も広い。

 けれどもアリアが知っている顔は少ない。


 それもそのはずである。

 今回のパーティーは第二王子であるエランが主催となっている社交パーティーである。


 呼ばれているお客の多くは第二王子側かそれに近い人、あるいは中立的な立場の人たちである。

 社交パーティーと言いながらも身内のパーティーと変わりないのだ。


 アリアは第三王子に近く、交流も中立的な人が多かったのでこの場において顔見知りが少ない。

 そもそも卒業した年齢の人も多いのでアリアと同い年ぐらいの令嬢が少ないということもある。


「はぁ……」


 ジュースの入ったグラスを片手にアリアは壁際でため息をついた。

 なぜアリアが呼ばれたのか。


 ディージャンが呼ばれていることはまだわかる。

 エルダン家は体面上中立であるしディージャンも卒業してパーティーに呼ばれる資格はある。


 だからといってアリアを呼ぶ必要はない。

 それにユーラは呼ばれていないなど中途半端な感じもある。


 アリアだけが異質な感じはどうしても否めない。


「何が目的ですのかしら?」


 やっぱり直前で体調を崩したとか言い訳をして来なければよかったと思う。

 できるなら早く帰りたい。


 エランに招待いただいたお礼だけ述べて帰ろうかと考えていると会場にようやくエランが訪れた。

 第二王子側の人が集まっているのであっという間にエランは囲まれてしまった。


 アカデミーでは会長選挙に負けたせいか大人しくしていたがそんなこと忘れたかのようだ。

 この際だから人の輪を観察しておく。


 誰がどうエランに接しているかを見ればなんとなくその人の立場がわかる。

 真っ先にエランのところに向かっていき、近くから離れないような人はかなり第二王子に近い人だ。


 エランと仲良くなりたい人、家が第二王子側だからエランに近づいている人、第二王子側だろうがあまりエランに近づきたくなさそうな人など様々。

 もっと視野を広くしてエランから離れたところを見れば積極的に行かない人もいる。


 中立、あるいは第二王子側ではないが有力貴族だから呼ばれたのだろう人たちだ。


「アリア」


「あら、カールソン」


 一応中立であるしカンバーレンド家の一人息子であるカールソンもパーティーに呼ばれていた。


「どうしてアリアが……ここに?」


 カールソンから見てもアリアがこの場にいることは不思議だった。

 会場にいる人を見てもアリアの存在は多少浮いている。


 カールソンとしてはアリアに会えて嬉しいところだが、アリアが一人敵地に放り込まれているような感じがあってエランに不快感を覚えていた。


「招待状が送られてきたから来たのですわ」


 来たのは間違いだったけれど、という言葉は飲み込んだ。

 ここはエランのフィールドである。


 仮に誰かに何か聞かれていては後々に面倒なことになるかもしれない。

 少しでもエランの批判になりそうな言葉は口に出すのを避けるべきである。


「ん? 誰かきたのか?」


 会場がわずかにざわついた。

 何があったのかとざわつきの方を見ると第三王子であるノラが会場に現れたのであった。


 王座を争う相手としてエランとノラは敵対関係になる。

 そんな相手がエランのパーティーに現れたのだから周りもざわつくというものだ。


 しかしノラの性格上こんな風にエランを挑発しに来たりはしない。

 となるとノラが自らパーティーに乗り込んできたのではなくエランが招待したのだろうとアリアは思った。


 ビシッとした礼服に身を包んだノラは真っ直ぐにエランのところに向かった。

 いつも柔らかい雰囲気を持っているノラだが今は鋭いナイフのような強い印象を周りに与える堂々とした態度である。


 最初に出会った頃は可愛らしかったのにちょっと大きくなっただけで随分変わるものだとアリアは目を細めた。


「ご招待いただきありがとうございます、お兄様」


 人が割れるようにノラに道を譲り、ゆったりとエランのところまで行ったノラはニコリと挨拶する。


「可愛い弟を招待しないわけにはいかないだろう。よく来てくれた」


 味方のいない場に可愛い弟を呼ぶことなんて普通しないだろうと内心ため息をつく。

 自分の力や人脈を誇示するためにノラを呼びつけたことは透けて見えている。


 力の関係としてエランとノラは対等ではない。

 王位を継ぐと見られていた第一王子の勢いが衰えてからエランの母親である第二王妃は急速に周りの支持を集めていった。


 対して第三王妃はそうしたことに疎いのか勢力の伸びは鈍く、エランの方がより多くの支持基盤を集めているのだ。

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