嫌な招待
クッソ面倒。
ある日アリアは受け取った招待状を見て思った。
「はぁ…………」
「嫌ならお断りになられてはいかがですか?」
シェカルテが紅茶をアリアの前に置く。
こんなため息をつくのは珍しいと思った。
「流石にそうもいきませんわ……」
アリアのところにも時々パーティーの招待状が来る。
時にディージャンが招待されたパーティーについでにお誘いされたりするのだが、アリアをメインとしたパーティーも女性貴族から届くことがあった。
基本的にはめんどくさいので近いもので悪くなさそうな相手のもの以外は断っていた。
しかしアリアにも断れない相手というものがある。
それは王族からの招待であった。
アリアのところになんとエランからパーティーの招待状が届いたのだ。
まだディージャンなら分かる。
しかしなぜアリアのところに招待が届いたのか。
理由は知らないけれど王族からの誘いをむやみやたらと断るわけにはいかないのである。
他の約束が先にあったとしても断るのは厳しいぐらいなのにエランからの招待状はたまたま他に招待もないタイミングで訪れた。
「王族はお嫌いなのですか?」
明らかに嫌そうなアリアにシェカルテが首を傾げる。
パーティーに呼ばれたからと王族入りなど果たされるわけがないけれど、王族のパーティーに呼ばれることは一種のステータスにもなる。
もしかしたら良いお相手も見つかるかもしれない。
最も上手くいけば王妃にだってなれる可能性が生まれるのが王族からの招待状となるのだ。
「なら代わりに行きますか?」
ただしアリアにとっては王妃の座などなんの魅力もなかった。
王族入りしたところで毎日笑顔を浮かべてめんどくさい問題を片付け続けねばならない。
そのくせ行動には責任が伴い、何かあればすぐに避難される。
気軽に人と会うことも買い物することもできずに日々国民のことを考えねばならなくなる。
アリアの状況が特殊だったことは否めないけれど王族入りしたところで今のアリアにとっては枷にしかならないのである。
「いえいえ! そんなパーティーなど恐れ多い……」
興味がないわけではない。
しかしシェカルテが行ったところでマナーもなってなければ顔だって令嬢たちには見劣りしてしまう。
「…………」
ただ胸だけなら勝てるかもしれないとはシェカルテは思った。
「今どこを見て、何を考えました?」
「な、何も考えてません……」
「このオークのき○たまが……」
「それやめてくださいよ!」
そう言われると割と自慢に思ってる胸がとんでもなく嫌なものになってしまう。
「ともかくあまり行きたくはないのですが理由をつけられない以上は行くしかありませんわ」
この際ゴラックに病床に伏してもらうかなんて黒い事も考えるが変な噂が立つとそれもまた面倒である。
エランがアリアを呼んだ目的はなんなのか。
エルダン家を取り込もうとしているのか、あるいは会長選挙についてアリアに何か仕返しでもしようとしているのか。
「なんでもいいけれど早めに準備せねばなりませんね」
何かするつもりなら構わない。
受けて立ってやる。
ただめんどくさい。
「はぁ……」
アリア深いため息をついて、心を落ち着かせようと紅茶を一口飲んだのだった。




