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川を手に入れる1

「アリアァー!」


 アリアの仕事は戦うまでである。

 それ以外の雑務の処理なんてするつもりはない。


 そんなところまで師匠のヘカトケイそっくりにバーズジュニアに全てを押しつけて避難先へアリアもやってきた。

 アリアを見た瞬間パメラは大号泣して抱きついた。


 父親のボノロアから心配はいらないだろうとやや含みのある言い方をされていたけれど心配なものは心配だった。


「だいじょぶだっだぁー!?」


「見ての通り大丈夫ですわ」


 アリアは優しく笑ってパメラの頭を撫でてあげる。


「あっと」


「私も心配でしたよ……」


 トゥージュもアリアの腕に抱きついた。


「……心配かけてごめんなさい」


 今度はトゥージュの頭を撫でる。


「でももう終わりましたわ。すぐに家に帰れるようになると思いますわ」


「魔物が出たんですよね? もう倒されたんですか?」


「ええ、意外な人の活躍で」


 アリアはニッコリと微笑んだ。


「お姉様!」


「サラ」


 デュスディニアスの娘であるサラはアリアたちに助け出された後聖印騎士団によってパメラたちと共に避難していた。

 助け出された時よりもちゃんとしたドレスに身を包んだサラは普通に貴族令嬢にも見える。


 改めて顔を見ると少し男勝りではあるものの整った綺麗な顔立ちをしている。


「お、お姉様?」


 ようやく泣き止んだパメラが目をパチクリとさせている。

 サラの方がアリアよりも年上に見える。


 アリアが幼めな顔をしていて、サラが大人びていることを差し引いても同い年ぐらい。

 なのに姉と慕うのはおかしい。


 実はサラはパメラたちといる時ほとんど話さなかった。

 必要な返事などはしていたけれど会話することはなくてサラがどんな子であるのかいまだに分かっていなかった


「お父さんは……」


「無事ですわ。それに今回のことで風向きも変わるかもしれませんわ」


「風向き……?」


「まあのんびりと構えていてくださいまし」


 ーーーーー

 

 すぐにとは言ったけれど帰れるまでには意外と時間がかかった。

 近隣の町で受け入れられた避難の人たちが帰れたのは国の方で派遣された兵士たちが安全を確認した後だったからである。

 

 倉庫の中にいた魔物だけでなく川に沈められたディアブロも引き上げられて死んだことがしっかりと確認された。

 誰が魔物を運び込み、誰が魔物を倒したのか。


 全てが終わって平和が訪れると人々は事件の内容について気にし始めた。

 なんと今回のことで英雄となったのはデュスディニアスを始めとする水賊ゲルフマンであった。


 一般の人の間で噂される事件の内容はこうだ。

 倉庫をよく利用している水賊ゲルフマンが怪しい荷物が運び込まれたことに気がついた。


 見てみるとそれは魔物であり、放ってはおけないとデュスディニアスは行動した。

 警備隊長であるバースジュニアに通報して町に避難を呼びかけ、水賊の船を使ってディアブロに槍を刺して川に沈め、バーズジュニアと協力して他の魔物を倒したことになっていたのである。


 よく聞いてみれば明らかに誇張された話なのであるが噂というのは大体誇張されるもの。

 加えてスキャナーズがゲルフマンとデュスディニアスに感謝の意を公表したので噂が加速した側面もあった。


 何にしても結果的にデュスディニアスは魔物を倒し、町を救った英雄となったのである。

 犯人についても脚色された情報が流れた。


 スキャナーズを脅して魔物を運び込んだのはデュスディニアスだ。

 しかしそのことは隠された。


 デュスディニアスを脅していた男が実は商人貴族だったことがのちの調査で判明した。

 スキャナーズと敵対関係にある商人で、アリアはこのことも利用することにした。


 実際の黒幕はケルフィリア教なのだが証拠はない。

 とりあえず商人貴族の男を徹底的に犯人に仕立て上げた。


 スキャナーズを潰すために魔物を持ち込んだ暴挙に出たということにして、スキャナーズが商人貴族の男の財産を募集してスキャナーズからお金を出しながら今回の事件の立て直しを図ると公表したのだ。

 スキャナーズも被害は受けたが復興の支援をしながらライバルとなる商人を潰せることになり、名声も高めることができる。


 実際被害を受けた人はおらず町における被害も少なかった。

 かかる費用と得られる名声を比べるとスキャナーズが得られた名声は大きい。


「言う通りにしたら悪いようにしないんだな?」


「もちろんですわ」


 こうして未だに不安や多少の影響は残りながらも事件のことはもうすでに過去の記憶となりつつあった。

 全てをうまく丸めた裏にアリアがいることなどほとんどの人は知らない。


 商人貴族のことを持ち出してスキャナーズを説得したりゲルフマンが英雄になるように話を盛ったりしたのはアリアだった。


「これを脅迫と取るか、交渉と取るか、あるいは新しく生まれ変わるチャンスと取るかはあなた次第ですわ」


 多くの人にとっては全てのことがもう終わっているのだがアリアはもう一つ駒を手に入れようと考えた。

 スキャナーズのお屋敷にある会議室にはアリアとアリアに呼ばれたデュスディニアスがいた。

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