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ブルーアンドホワイト2

 思っていたよりもカインのオーラの量が多い。

 アリアは忘れていた。


 本来なら本能的にオーラはコントロールできる。

 自身のオーラに蝕まれて死にかけるということはつまりコントロール出来ないほどのオーラを持っていることになるのである。


「カイン、落ち着きなさい!」


「はあああっ!」


 カインは自分の体に溢れるオーラに気を取られて完全にアリアの言葉を聞いていない。


「チッ!」


 アリアは自分の体にオーラをまとう。

 カインとは違ってただ放出するのではなく体の周りに膜のように赤いオーラを留め置いている。


 もっとオーラの扱いに卓越して練習している人なら薄く美しくまとえるのだろうけどアリアもオーラを扱う練習をそれほどしていないので分厚くまとうのが限界だった。

 けれどもそれでもただ放たれるカインのオーラに抵抗するには十分。


 目に見えない何かに押されるような感覚をオーラが防いでくれてかなり気分が楽になる。

 これまで抑えることしかやってこなかったのだ、解放することに歯止めが効かなくなってしまっている。


 アリアはカインのところに走り出す。

 このままでは部屋も荒れるし、またカインがぶっ倒れてしまう。


「カイン」


 アリアもオーラをまとっているのに近づくとカインのオーラのせいでまた押し戻される。

 オーラを強めながらアリアは無理矢理カインに近づくとしなやかに手を振り上げ、そしてカインの頬をビンタした。


「落ち着きなさい」


 右頬にビンタがクリーンヒットして非常に綺麗な音がした。

 カインはわずかにぶっ飛んで床に倒れた。


「お、お嬢様ぁ!?」


「ふん、あまり興奮されては困りますわ」


 ビンタした手をひらひらと振る。

 カインのオーラ放出は収まり、シェカルテは愛しの弟をためらいもなくビンタしたアリアに驚いていた。


「お、お姉さん……?」


「カイン、冷静になりましたか?」


 オーラをまとってのビンタだったので思いの外重たい一撃になった。

 目の前で星が散るカインは頬を押さえてフラフラと上半身を起こした。


 もっと丁寧なやり方があったのかもしれないけれどアリアの現在の能力では出来ることに限りがある。

 考える時間もなかったので手荒な真似に出るしかなかった。


「カイン、もっと少しずつやりなさい。


 いきなり走れば足を痛めるし、やったこともないのに全力を出せば失敗して無理がたたるものよ」


 カインは期待に応えたくてオーラを全力で解放してしまった。

 湧き上がってくるオーラに自分で制御が効かなくなってしまい、周りも危険に晒してしまった。


 赤くなり始めている頬を見てシェカルテは何か冷やすものをと部屋を出て行く。


「もっと冷静になって、そして少しずつ体からオーラを出しなさい」


 また暴走したらすぐに止めるつもりでアリアは側で見守る。

 カインは立ち上がって手をだらりと下げて楽な体勢を取って大きく息を吐き出した。


 思っていたよりも簡単に体の外にオーラを放出することができた。

 勢いをつけなくてもオーラを出せることが分かったのでもうあんなミスはしない。


 アリアのためにも今度は望んでいるようにオーラを操ってみせるとカインは気合を入れる。


「少しずつ……少しずつ」


「良い調子ね……」


 カインの体からオーラが出てくる。

 今度は周りに吹き荒れるような激しさはなくてカインの体の周りに濃く留まり、そして空中に消えていく。


 まだまとうということをしていないので拡散してオーラを無駄にしてしまっている。

 それでもこれだけやれるなら上出来だ。


 カインのオーラは濃いブルー。

 深い海のような美しい青色で宝石をも思わせる。


「うっ……」


「もういいわ。


 ……よく頑張ったわね」


 カインが顔をしかめる。

 一度強く放出してしまったオーラの消費は激しく、まだオーラのコントロールに慣れていないカイン。


 オーラの使いすぎで体に負担がかかってしまっている。

 青いオーラが収まっていき、ふらりと倒れかけたカインをアリアが抱きかかえるように支える。


 この子は将来化ける。

 良い先生を見つけてやって良い環境に身を置いてやれば名が知られる人となる。


 カインをベッドに座らせてあげたアリアは微笑む。

 想像以上の拾い物。


「あなたは良い子ね……」


 赤くなった頬を撫でるように手を添わせるとカインの顔がまた別の意味で赤くなる。


「お姉さんの期待に応えられましたか?」


「ええ、期待以上よ」


 不安げにカインはアリアを見上げる。

 アリアは大丈夫だとカインの頭を撫でてやる。


「よかっ……たです」


 ベッドに倒れるカイン。

 慣れないオーラの放出に疲れ切ってしまったみたいだった。


 シェカルテが水の入ったボールとタオルを持ってきた。

 汲みたての冷たい水でタオルを濡らして頬に乗せてあげて少し一息つく。


「あなたは強くなりたいかしら?」


 カインのオーラ放出も問題ない。

 ならば計画を一つ先に進めてもよさそうだとアリアは思った。


「はい、強くなりたいです」


 お姉さんを守れるほどに。

 という言葉をカインは飲み込んだ。


 今現在ではアリアの方が強そうだ。

 守るなんて口にできやしない。

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