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マスカレード2

 地面を揺らすような叫び声を上げてディアブロが飛び出してきた。

 狙いはディアブロの胸に風穴開けたヘカトケイである。


 ディアブロがヘカトケイを狙っていることを確認して4人はヘカトケイから離れる。


「ついてこれるかな?」


 ヘカトケイは追いかけてくるディアブロを見て走る速度を上げる。

 けれどディアブロの方が走る速度が速くてヘカトケイとの距離が詰まっていく。


「足元に気をつけな」


 届くと判断して拳を振り上げたディアブロの視界が赤く染まった空を見上げる。

 ディアブロが郷愁に駆られて空を見上げたのではない。


 確かにヘカトケイを見ていたのに体が回転して気付けば空を見ていたのだ。

 ディアブロの足元は広く凍りついていた。


 ヘカトケイの魔法によって地面が凍らされてなんの警戒もしていなかったディアブロは大きく転んでしまったのだ。


「ははっ! お怒りだね!」


 ディアブロが咆哮すると近くにあった古い倉庫が振動で崩れてしまった。

 ディアブロはコケにされて怒りを覚えていた。


 古い倉庫街を抜けると港が見えてくる。

 ただ港まではいかずヘカトケイはその手前にある川沿いの大きな公園を目指していた。


「なかなか立派ですわね」


 ディアブロから逃げるヘカトケイの姿をアリアは建物の上から見下ろしていた。

 相変わらず仮面をつけて顔を隠したアリアの後ろにはデュスディニアスが立っている。


「倉庫に眠っていた大型の魔物用の槍だ。手入れされてなくて錆びついちゃいるがこれぐらいじゃ威力は変わらん」


 アリアの横には大きな金属製の槍が置いてある。

 長さがアリアほどもあって太さもアリアの腕よりも太い。


「むしろ槍の用意よりもその先が大変だったぞ。鎖見つけて、繋いで……うちの魔法使える連中今頃ダウンしてる」


 槍には太い鎖が繋いである。

 その先は建物の下に伸びていてどこに繋がっているのか見えない。


 ヘカトケイとディアブロが向かってくる。

 このままではアリアがいる建物の下の通りを通っていくことになる。


「そろそろですわ。手伝ってくださる?」


「しかしこんなもの……よく思いつくな」


「書物をお読みになればよいのですわ」


「どんなもん読んだら思いつくのか想像もできねぇよ」


 アリアとデュスディニアスはオーラをまとって槍に手を伸ばす。


「ふっ……! 結構重いですわね」


「そりゃ魔物にぶっさすもんだからな。形は槍にしてあるが金属の杭みたいなもんだ」


 オーラを使っていても巨大な鉄の槍は重たい。

 むしろよく持てるものだとデュスディニアスは感心すらしている。


 アリアが槍の先端を持ち、建物の縁に立つ。

 走るヘカトケイはチラリと視線を上に向けてアリアの姿を確認した。


「追いかけっこもそろそろ終わりだけど……少し体を冷やしてみないかい?」


 振り向きながら剣を抜いたヘカトケイは地面を蹴った。

 ディアブロの攻撃をかわして懐に入り込み、剣を突き出して胸を刺す。


 最初に魔法で開けた穴はすでに塞がっている。


「凍りなさい」


 ヘカトケイの放つオーラが氷に変わっていき、ディアブロの体を包み込んでいく。


「今ですわ!」


 それ合わせてデュスディニアスが力いっぱい鉄の槍を押して建物の上から落とし、アリアも槍について飛び降りる。

 ちょうどディアブロはアリアの真下に位置している。


「そう簡単にはいかないか」


 このまま凍って死んでくれれば楽だった。

 しかし凍りついて止まったのは一瞬でディアブロを包み込んだ氷に大きくヒビが走った。


「けれど十分だろ?」


 氷が砕けてディアブロは無事に出てきてしまう。

 だがヘカトケイはニヤリと笑った。


 槍と共に落ちるアリアはオーラを槍に送り込む。

 槍が真紅のオーラをまとってディアブロに向かって落ちていく。


「もう少し右……」


 アリアは魔法を使って槍の軌道を修正してディアブロを狙う。


「せっかく塞がったのに申し訳ありません」


 鉄の槍はディアブロの胸に突き刺さった。

 オーラをまとった槍は深々とディアブロを地面に打ち付ける。


「よし!」


 狙い通りの一撃。

 流石のディアブロもダメージが大きいだろうとデュスディニアスが拳を振り上げた。


「アリア、退きな!」


 剣を抜いてディアブロの首を切り落とそうとしたアリアにヘカトケイが声を上げる。

 アリアはヘカトケイの声に反応してディアブロの上から飛び退いた。


 ディアブロの体から黒い魔力が噴き出した。

 咆哮して綺麗に石で舗装された道をへこませながら無理矢理体を起き上がらせた。


 ディアブロは体に突き刺さった槍を抜こうとしたが返しのついた長くて太い槍は簡単には抜けない。


「戦いの最中によそ見とは余裕だね」


 槍に気を取られているディアブロにヘカトケイが切りかかった。

 目を縦に大きく切り裂かれてディアブロは悲鳴のような声を上げる。


「こっち来な、化け物!」


 ヘカトケイは再び走り出し、怒りに駆られたディアブロは胸に突き刺さった槍を忘れてヘカトケイを追いかける。


「だ、大丈夫でしょうか?」


「私にも分からない……この職について魔物と戦うことになるとは思いもしなかった」


 ヘカトケイが向かう公園ではジェーンとバーズジュニアが待ち受けている。

 2人とも魔物と戦う経験はなくやや顔色は悪かった。


 ジェーンはいい加減仮面は外してもいいのではと思うのだけどアリアがいいというまでは着けている。

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