表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/323

マスカレード1

「ジェーン、あなたが最初にやりなさい」


「わ、私がですか?」


 目元を隠すような仮面をつけたアリアは魔物が入れられた檻の前に立っている。

 横の檻の前にはアリアと同じく仮面をつけたジェーンがいた。


 中にいる魔物はまだ寝ているけれど全く動かなかった時に比べて今はモゾモゾと体を動かしたりしている。

 明らかに眠りが浅くなっている。


 残された時間は少ない。

 空は赤くなっていて日はもうすぐ落ちる。


 朝まで魔物が寝ているとは思えない。

 避難の方もまだ町の人全ての人とはいかないが倉庫周辺からは避難させられた。


「景気付け。一度倒してしまえばあとは動いていようと寝ていようと関係ありませんわ」


「分かりました」


 ジェーンは大きく深呼吸する。

 たとえオーラユーザーだとしても魔物と戦う経験をしない人も多くいる中でジェーンはまだまだ経験も実力も浅いの魔物と戦おうとしている。


 うまくいけばこのことはジェーンを大きく成長させるきっかけになる。

 回帰前もジェーンは魔物と戦っていたので今回も戦うこと自体は大丈夫だろうとアリアは思っていた。


 ジェーンは慎重にオーラを体から放つ。

 魔物を刺激しないようにゆっくりとジェーンから放たれたオーラは均一な厚みを持って体にまとわれた。


 バーズジュニアは思わず舌を巻いた。

 ジェーンもまたオーラの扱いが上手かったからだ。


 アリアよりは年上であるがジェーンも若い。

 自分が仮にあの頃の年代にオーラを覚醒していたとしてあそこまで綺麗にコントロールできるだろうかと感心してしまった。


「いきます」


 ジェーンは目の前にいる大きなイノシシを見据える。

 魔物よりも野生動物に近い。


 おそらくどこかで魔力を得て凶暴化してしまった個体である。

 オーラをまとうと不思議な安心感があるとジェーンは思う。


 一枚柔軟な鎧を身につけたような心強い感覚がある。

 体が軽くなり何でもできるような勇気が湧いてきて目の前にいる魔獣も自然と怖くなくなってくる。


「はっ!」


 剣の先までオーラで包み込んだジェーンがためらいなく剣を振る。

 鉄の檻ごと魔物の首が切り落とされた。


「さて、マスカレードの始まりですわ」


 同時にアリア、デュスディニアス、バーズジュニアも動き出す。

 血の匂いを嗅ぎつけて魔物が動き出す前にできる限り倒してしまう。


 アリアとジェーンは仮面をつけている。

 もしかしたら一般人が迷い込むこともあるかもしれない。


 あるいはケルフィリア教が監視している可能性もある。

 ヘカトケイやデュスディニアス、バーズジュニアと比べてアリアとジェーンの顔が知られてしまうリスクは高かった。


 だから仮面をつけて顔を隠して戦うのである。

 それをアリアはマスカレード、つまりは仮面舞踏会と表現してみせたのである。


「なんという……」


 他人を見ている余裕などない。

 そのはずだったのにアリアを見てさらに驚愕した。


 ジェーンのオーラは厚みは全身で均一だったものの厚さそのものは分厚かった。

 対してアリアのオーラは薄いのに均一。


 さらには容易く魔物を切り捨てて次に行く姿にためらいはない。

 バーズジュニアが2体倒す間にアリアは4体の魔物を切り捨てていた。


「ははっ! やるなぁ!」


 デュスディニアスも驚いていた。

 アリアのことをただものではないと思っていたが想像以上だった。


 初めて魔物を倒したジェーンは動揺してしまっていたけれど持ち直して別の魔物の方を向いた。


「うっ!」


 魔物が目を覚ましていて檻に体をぶつけた。

 同じくイノシシの魔物で、牙が檻の外に飛び出してきてジェーンは思わず怯んだ。


「やああっ!」


 ジェーンの視界の端に次の魔物を切り倒すアリアの姿が見える。

 あんな風に戦いたい。


 あんな風に気高くなりたいとジェーンは思ってギュッと剣を握り、乱れたオーラを整える。

 相手はまだ檻の中。


 時間をたっぷり与えれば檻も壊すかもしれないがすぐに壊して出てくるような魔物ではない。

 威嚇するように牙を檻にぶつけるがジェーンは怯まない。


 再び檻ごと魔物を切り裂く。


「ようやくお目覚めかい?」


 魔物が起きて叫び声が響く。

 不愉快な血の匂いも倉庫の中に充満し始めてディアブロは目覚めた。


 目の前にはヘカトケイが立っている。

 ぼんやりとした目でヘカトケイを見下ろすディアブロはまだ半分眠っているようだった。


「師匠、終わりましたわ!」


 そうこうしている間に周りにいた魔物をアリアたちで処理してしまった。

 ディアブロを除いた魔物はどれも野生動物に魔力が宿った低等級の魔物だったので倒すのに苦労はなかった。


「ふふ、あとはあんただけだよ」


 濃密な血の匂いがディアブロの意識を覚醒させた。

 手足を拘束していた鎖を引きちぎり、金属製の檻の天井を突き破ってディアブロが立ち上がった。


「まずは一撃」


 立ち上がったディアブロの胸に巨大な氷の塊が飛んできた。


「いくよ!」


 ディアブロが氷の塊に吹き飛ばされるのを横目にアリアたちは走り出した。

 倉庫の中では狭すぎる。


 アリアたちが倉庫を飛び出すと倉庫が爆発して吹き飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ