表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
263/323

大きな問題1

 スキャナーズの屋敷を監視していた怪しい人物を聖印騎士団が捕まえることにも成功した。

 そのためにサラを含めてスキャナーズに戻った。


 あとは聖印騎士団と水賊に任せておけば終わるだろうと思っていた。


「アリア様!」


「どうかいたしましたか?」


 部屋で休んでいたアリアのところにスキャナーズの執事が慌てた様子で駆け込んできた。

 部屋のノックすら忘れるほどの慌てようだ。


「その……アリア様に会いたいと屋敷に押しかけてきた方が……」


「私に?」


 アリアは首を傾げた。

 来客の予定などない。


 それにベテランに見える執事が慌てるほどの相手とは誰なのか。


「それが……水賊のデュスディニアスでして……」


「あら?」


 こんなところで会う約束はしていない。

 むしろ馬鹿じゃない限り会いにはこない。

 

 それほどの用事がある。

 アリアはひとまず会いに行ってみることにした。


「アリア・エルダンに会わせろ!」


「水賊の頭領が何をしにきた! アリア・エルダン嬢になんのようだ!」


「本人に話す!」


 屋敷入ってすぐのホールは緊迫した状況だった。

 すぐに目に入ってきたのはデュスディニアス。


 深海を思わせる濃いブルーのオーラを放って周りを威嚇している。

 そしてデュスディニアスを囲むようにスキャナーズの騎士たちが武器を構えている。


 改めてデュスディニアスのオーラを見ると非常に濃くて暗い色をしている。

 最初はカインにも似ていると思ったがデュスディニアスのほうが濃紺と言っていいような黒にも近い青色だった。


 カインの方が澄んだ青色に近い濃いブルーなのである。


「エルダン嬢……お呼びたてして申し訳ない」


 パメラが帰ってきたことを聞いて家にいた家主のボノロアが困ったような顔をしていた。

 本来なら水賊が乗り込んできてアリアを出せと言っても呼ばずに処理するのが筋なのだろう。


 しかしデュスディニアスは単独で乗り込んできた上にただアリアを出せとだけ言い、オーラで威嚇しながらも剣は抜いていない。

 パメラ誘拐の犯人であるのにこんなところに乗り込んできておかしいといえばおかしい。

 

 礼儀を弁えているとは言えないが、最低限争いになることは避けようとしている節はある。

 アリアの客人とは思えないけれどデュスディニアスの表情から切実さを感じ取ったボノロアはひとまずアリアを呼んでみた。


「いいえ、構いませんわ」


「エルダン嬢!?」


 ボノロアにニコリと笑いかけたアリアはスタスタとデュスディニアスの方に向かっていってボノロアは目を見開いた。


「失礼。おどきになって」


「アリア!」


 何事もないかのようにアリアが歩いてくると騎士たちは思わず道を開けてしまった。

 アリアを見てデュスディニアスが早足で近づくと騎士たちに緊張が走る。


「力を貸してくれ!」


 デュスディニアスはアリアの前で膝をついて頭を下げた。

 あまりに理解不能な出来事。


 状況が分からなくて周りにいた全員がひどく驚いた。


「何があったのですか?」


 その中で唯一冷静なアリアは淡々と質問をぶつける。


「アイツらが運び込んだ荷物……魔物だったんだ!」


「魔物……あぁ」


 忘れていた。

 というか正直ほとんど記憶になかった。


 紙の鳥で会話を盗み聞きした時にチラリとそんな単語を聞いたような気がするけれど、ほとんど限界であって最後の方の会話は上手く聞き取れず記憶に残っていなかったのだ。

 ある意味油断もしていた。


 魔物なんてものを運ぶのは常識として有り得ない。

 となると何かの隠語のようなものの可能性もあった。


 何にしても言い訳にしかならない。

 アリアは自分の失態に顔をしかめた。


「ですがあなたなら問題もないはずでしょう?」


 魔物とは魔力を持った動物が凶暴化したものである。

 元々魔力を持っていて凶暴なものもいればオーラのように突如として魔力を持って凶暴化する魔物もいる。


 強さによって階級分けされるのだが低い階級の魔物なら一般の人でも倒すことは可能である。

 強くなるとオーラの力が必要になるものの、デュスディニアスはオーラユーザーだ。


 強い魔物も倒すことができる。


「問題だから来たんだ」


「何がいたのですか?」


「2等級、ディアブロだ」


「何ですって!」


 魔物の等級は数字が小さいほど強い。

 1等級は魔物の中でも最上位。


 2等級はその下であるが魔物全体で見た時に上位である。

 さらに悪魔の名を冠するディアブロはアリアも知っている危険な魔物であった。


 輸送してきたということは輸送できる状態にしてあるということ。

 7等級まである魔物でデュスディニアスなら4等級や、あるいは3等級ぐらいまでなら無抵抗状態という前提で倒すこともできるかもしれない。


 しかし2等級にまでなると話は違う。

 倒せる可能性もゼロではないが賭けになる。


 倒せず相手が拘束から解放された場合デュスディニアスは間違いなくディアブロにやられることになる。

 デュスディニアスだけならまだいい。


 倒し損ねてディアブロが自由になった場合都市全体が壊滅する可能性すらあるのだ。

 そんなリスクは冒せない。


 アリアがオーラユーザーであることはデュスディニアスに分かっていた。

 デュスディニアスのオーラに当てられてもアリアは平然としていたのだから。


 さらにアリアの護衛であるジェーンもオーラを使える。

 アリアが手伝ってくれるのならオーラユーザーが2人増えることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ