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ブルーアンドホワイト1

 やっぱり顔面って大事。

 多少の悪行も顔が良ければ許されることもある。


 男女どちらとも限らない話で顔が良ければそれだけでも生きていける可能性すらある。


「お姉さんに……お礼がしたくて」


 年下男子に興味はなかった。

 どちらかといえば経済力のある、浮気もしない大人な年上男性がいいと思っていた。


 しかし手作りの花かんむりを持ってややタレ目で不安げに見上げてくるカインの破壊力は高かった。

 アリアの屋敷に呼び出されたカイン。

 

 近所に住む女の子が小さな花で編む花かんむりの作り方を教えてくれたらしく、カインはアリアへのお礼として花かんむりを編んで持ってきてくれていた。

 アリアが受け取ってくれるのか不安でちょっと潤んだように見える目にドキドキしてしまう。


 敵は容赦なく潰す気であるが人間らしい感情を失ったわけでもない。

 犬のようなカインの可愛さを素直に可愛いと思う心は残っていた。


「被せて下さる?」


 何とも可愛らしい贈り物ではないか。

 これまでオーラのせいで体が弱く、成長が遅いカインは小柄な体格をしている。


 アリアはやや屈むようにしてカインが花かんむりを頭に乗せられるようにする。

 照れたように笑ってカインはそっとアリアの頭に花かんむりを乗せる。


「どう?


 似合うかしら?」


「は、はい!


 すごく……可愛らしくて、キレイです……」


 アリアが微笑んでやるとカインは頬を赤くして褒めてくれる。


「ありがとう、カイン」


「あっ……」


 ついでに頭も撫でてやると顔全体が真っ赤になる。

 シェカルテは自分の弟の男心が弄ばれているのに複雑な表情をしているけれどここで口を出して夢を壊すこともないので渋い顔だけしておく。


 その微笑みが打算によるものではなく小さな贈り物に感謝をしていることは確かだと思えたからでもある。


「でも……」


 アリアは優しい微笑みをイタズラっぽい笑みに変えて指先でカインの鼻を軽く潰す。


「私は命を助けたのですからこれじゃ足りなくてよ?」


「……お嬢様、近すぎます」


 これ以上はカインが持たない。

 シェカルテが間に割り込むようにして止めに入る。


「あら、ごめんなさい」


 反応も可愛らしくてついついからかってしまった。

 クスクスとアリアは笑い、カインはドキドキする胸を押さえて倒れそうになっている。


 カインはすれたところがない。

 同年代の子供として見ても素直で良い子だし、オーラがあると知れば調子に乗るような人も多いのにカインにはそうした兆候は見られない。


 一瞬こんな子を利用してもいいのかと疑問が胸をざわつかせる。

 でも次の瞬間にはそんなざわつく胸を貫く剣を思い出し、群衆の罵倒、見知った人たちの冷たい視線が昨日のことのように記憶によみがえってくる。


 例え純粋な子を利用することになっても、ケルフィリア教を倒さねばならない。

 そう、胸から血を流す大人の自分が囁きかけてくる思いがする。


 もちろん忘れてなんかいない。

 ただ自分が苦しい思いをしたのにカインにも同じような苦しい思いはさせたくないとも同時に思う。


「お嬢様?」


「え、ええ、何でもないですわ」


 急にぼんやりとしたアリア。

 気づくとシェカルテの顔が前にあった。


「まあ本題に入りましょう」


 今日カインを屋敷に呼び出したのは感謝されるためでもからかうためでもない。


「オーラの修練はしていますか?」


「はい!


 言われた通りに毎日やっています!」


 椅子に座って紅茶を飲む。

 カインはアリアがシェカルテに言付けた通りにオーラの練習を続けていた。


 すっかりそれにも慣れたけれど手を抜くこともサボることもなく毎日言いつけ通りにやっていた。


「じゃあ今日はいつもやっていることの逆をいたしましょう」


「逆ですか?」


「そうですわ。


 これまではオーラが外に出ていくのを防ぎ、体の中で循環させることを練習してきましたわ。


 ですがそれはオーラのちゃんとした使い方ではありません」


 アリアが教えていたのは基礎的なオーラの制御とむしろオーラを隠していくような方法であった。

 けれどこれから必要になるのはオーラを見せつけること。


 オーラを適切に必要なだけ放出することが必要になってくる。


「これまでは体から出ないようにしてきましたが今度は少しだけ出して体の周りに留めるようにオーラを操るのです」


「う……や、やってみます」


 口で言うのは容易いがオーラが目に見えるものでもない。

 自分の感覚だけでやらなきゃならないもので、アリアが言ったように出来る自信はない。


「シェカルテ、カーテンを閉めなさい」


 万が一の可能性もある。

 誰かに見られないようにカーテンを閉めて、ドアの鍵をかける。


「焦らず、ゆっくりと。


 いざとなったら私がいるから大丈夫……」


 カインは少し足を広げて腰を落とし、目をつぶって集中する。

 日を追うごとに自分の体の中にあるエネルギーが自分に馴染んで手に取るように分かってきた。


 今まで体の中で操ってきたオーラを今度は体の外に出す。


「カイン!」


「キャア!」


 まるで暴風。

 上手くコントロールが出来ずにカインの体からオーラが一気に溢れ出した。

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