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悪役令嬢、悪になる〜真紅の薔薇よ、咲き誇れ〜  作者: 犬型大
第四章

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年下のお姉様2

 アリアが手に魔力を集中させると魔力が澄んだ水に変わる。


「今日も退屈な見回り……うっ!」


 角を曲がってきた男の顔にビシャリと水がかかる。


「なん……グホッ!」


 男が思い切り目に入った水を手で拭っているところにジェーンがオーラをまとった拳で殴りつけた。

 女性の力でも不意打ちでオーラをまとっていれば十分な威力がある。


 男はそのまま気を失って膝から崩れ落ちた。

 ジェーンのパンチの狙いも良かった。


「さて、どういたしましょう」


 この男が水賊かどうか分からない。

 もし水賊なら起きて騒がれると面倒だ。


 顔は見られていないが騒がれてしまうと監禁場所を確認するかもしれない。


「アリア、アリア!」


「どうかしました?」


「ここ開いてるよ!」


 パメラが近くの倉庫の扉が開いていることに気がついた。

 不用心だなと思って中を見てみると使われていない倉庫のようだった。


「やりましたわね」


「へへっ!」


 流石のパメラ、こんな状況でも適応力がある。

 アリアは男の服をナイフで切り裂き、手足と口を拘束した。


 そしてみんなで倉庫の奥に男を置いていった。

 申し訳ないが全てのことが終わるまで倉庫でご待機いただく。


 倉庫があるところを抜けて町中に入ってきたけど油断はできない。

 すでに日付は変わっているがまだ夜中と言える時間。


 ご令嬢が出歩くには少々ふさわしくない。

 水賊がいるかもしれないというだけでなく、その他の危ない人だって警戒しなければならない。


 誘拐から解放されてまた誘拐されましたなんて笑い話にもならない。

 見つかるリスクはあるけれどここは危ない人を避けるために暗くて狭い通りは行かずに大きめの道を行く。


「ふう……」


 事前にデュスディニアスが持ってきた地図を頭に叩き込んであったので迷うこともなく目的の場所に着いた。


「ここは……レストラン?」


 アリアがみんなを連れてきたのはレストランだった。

 明かりはついているけれどドアにはすでにクローズの札がかけられている。


 こんな時に呑気にご飯を食べている場合ではない。

 パメラとトゥージュは呆けたような顔をしているがアリアは平然とレストランのドアをノックした。


「お客さんかい? 残念だけどもう閉まってるよ」


 ドアも開けずに中から男性の声で返事があった。

 失礼な対応かもしれないがクローズになっている店のドアを叩いて対応してくれるだけ良い方だ。


「飯が食いたいなら朝まで待って……」


「私たちは闇の中に生きる光の騎士ですわ」


「……お入りください」


 アリアが不思議な言葉を告げると急にドアが開いた。

 アリアが中に入っていき、パメラたちもとりあえずついていく。


 椅子がテーブルに上げられていて、掃除もしている最中だったようだ。


「ええと……?」


 招き入れたはいいがレストランの店員も困惑したようにアリアたちを見ていた。

 声からして若いということ分かっていたが思っていたよりも若いし、そんな令嬢たちがどうしてここに来たのかも理解できなかった。


「アリア・エルダン。グリフォン・3・炎」


「あ、は、はい!」


 またしてもアリアが何の意味があるのか分からない言葉を口にする。

 店員は慌てたように店の奥に走っていって分厚い冊子を持ってきた。


「グリフォン……3……炎。あ、ああ! アリア・エルダン様ですね!」


「緊急事態ですわ。すぐに人を集めてほしいのです」


「分かりました。支部長を呼んで参ります」


 店員は店を飛び出して走っていった。


「ア、アリア、ここ……何?」


 困惑したようにパメラが聞く。


「ここは聖印騎士団という組織の支部ですわ」


 アリアはテーブルに上げられていた椅子を下ろしてみんなを座らせる。

 このレストランは聖印騎士団であった。


 大きな都市にはケルフィリア教を見張るための支部があるところもある。

 港湾都市なんかは特に人の出入りがあるためにしっかりとした支部が設置されている。


 ドアの前で言った言葉は聖印騎士団であると示すための合言葉。

 そして次に言ったのは聖印騎士団での立場などを参照するための暗号みたいなものである。


 アリアの聖印騎士団における立場は意外と高い。

 これまでの功績に加えてヘカトケイの弟子であるためにアカデミーの見習いや一般の聖印騎士団の団員よりも高い位にあるのだ。


 スキャナーズの家に帰るのはリスクが大きい。

 しかしパメラとトゥージュの2人を道端に置いておくこともできない。


 それに味方や物資が必要。

 このことを解決するのが聖印騎士団なのであった。


「聖印騎士団?」


「聞いたことないです……」


「そうでしょうね。秘密の正義の組織ですから」


 正確には反ケルフィリア教組織であるがケルフィリア教が悪なので正義でも間違いではない。

 パメラのところに遊びに来る前に一応聖印騎士団のことも調べておいて正解だった。


「アリアはその聖印騎士団ってやつなの?」


「そうですわ」


「デュスディニアスって人も?」


「いいえ、彼は違いますわ。ですが彼を脅して悪いことをさせようとしているのは聖印騎士団が追いかけている敵なのです」


「ふぅーん……」


「私が聖印騎士団であること、他には秘密ですわよ?」


 アリアが口に指を当てて言わないようにとジェスチャーするとパメラとトゥージュは一度顔を見合わせて大きく頷いた。

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