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年下のお姉様1

「いいか! あのガキども二度と話すんじゃねえ! 仕事が終わるまで何も与えるな!」


「は、はい!」


「ドアの前で監視するのはやめろ。声が聞こえない距離から見張ってるだけで十分だ!」


「分かりました!」


「ああ、イラつく! 水持ってこい! 冷えたやつだ!」


「た、ただいま!」


 アリアたちが監禁されている部屋から出てきたデュスディニアスはひどくイラついたような雰囲気を漂わせていた。

 部屋の監視をしていた部下は殴られるんじゃないかとヒヤヒヤしている。


 ともあれ上の命令は絶対。

 デュスディニアスに命じられた冷たい水探しに部下は走っていく。


「おい、いいぞ」


 デュスディニアスが声をかけるとドアが開いてアリアが出てくる。


「あとは好きにしろ。見つかって捕まったら俺は知らないからな」


「見つかってしまったら何人か叩きのめさせていただきますわ」


「ふっ……だから好きに言ったろ」


 アリアたちが出てきたというのにデュスディニアスは咎める様子もない。

 それどころか不機嫌な様子が一転する。


「……サラを頼んだぞ」


「ええ、お任せください」


 アリアはデュスディニアスの懐柔に成功した。

 デュスディニアスとしてもかなり苦渋の決断だった。


 不思議な小娘と自分の娘を誘拐して脅してくる奇妙な連中。

 信じられるのは不思議な小娘の方である。


 だが信じたところで小娘は小娘。

 一体何が出来るというのだという思いは拭いきれない。


 アリアはデュスディニアスの娘をさらった連中が自分の敵であると言う。

 潰してやるし、その手段もあるとデュスディニアスを説得した。


 確実性のない賭けだった。

 アリアに任せてサラを救い出してくれることに賭けるか、ケルフィリア教が本当にサラを解放してくれることに賭けるか。


 賭けられているのはサラの命。

 最終的にはアリアのまっすぐな目を信じることにした。


 アリアたちはこそこそと気配を消して監禁場所から抜け出した。

 デュスディニアスがアリアたちと接触するなと怒りの命令を出したのでおそらくバレることはない。


「それでどこに行くの?」


 こんな時にも魔法はお役立ち。

 アリアはまた紙で鳥を作り周りの状況を確認しながら進んでいく。


 解放されたので帰りたいところであるがアリアとデュスディニアスの会話を聞いた感じではすぐに帰る感じではなさそうだとパメラは感じていた。


「2人には申し訳ありませんがスキャナーズには行きませんわ」


「ええっ!?」


 てっきり帰ると思っていたトゥージュは驚く。


「おそらくスキャナーズのお屋敷にも監視がつけられているはず。ノコノコと帰ってしまうとサラの命が危ないばかりか相手がどんな手に出るか分かりませんわ」


 デュスディニアスがアリアのことを信じることにした理由の一つにある懸念があった。

 それは内部にスパイがいるかもしれないという疑惑があったのだ。


 サラのことはほとんどのメンバーが知らない秘密のことだった。

 デュスディニアスは極力サラには関わらないようにして周りもバレないように相当気を使っていた。


 信頼できる一部の人は知っているけれどそれだって数人程度である。

 それなのにデュスディニアスが水賊として町を離れている間に人知れずサラは誘拐されたのである。


 サラの世話を任せていた構成員は拷問されて殺されていた。

 それだけなら外部の人も疑うのだがデュスディニアスが町を離れている間のタイミングということが内部のスパイを疑わせた。


 デュスディニアスの動きがバレると警戒されてしまうので外部には分からないようにしていた。

 それなのにそのタイミングということは内部の誰かが情報を漏らしたということである。


 サラが誘拐されたと聞いてデュスディニアスはサラを助けようとしたけれど、デュスディニアスの動きが相手にバレているかのように失敗に終わった。

 もはや部下の誰かが相手と通じていることは間違いなかった。


 そう考えるとスキャナーズにも監視がついている可能性がある。

 デュスディニアスが仕事を終える前にアリアたちを解放したと知れればサラが危ないかもしれないのだ。


「ただ安全なところにお二人は預けますわ」


 まずはサラを救いに行く。

 そうしなければデュスディニアスが自由に動けない。


 ただ敵の巣窟かもしれない場所にパメラとトゥージュは連れていけない。

 それに加えてアリアが持っているのは小さいナイフのみでマトモな武器がない。


 もう少し武器も味方も欲しいところである。

 だからスキャナーズではないところに向かうつもりだった。


「……右の方から人が来ますわ」


 アリアたちが捕らえられていたのは港湾から離れた古い倉庫。

 あまり人が来るようなところではない。


 ただ一般の人が完全に来ない場所でもない。

 腰に剣を差しているし一般人か水賊かの判断ができない。


 隠れようにもアリアたちがいるのは長い一本道で下がって隠れるのにも遅かった。


「ジェーン」


「はい」


「パメラとトゥージュは下がっていてください」


 アリアはパメラとトゥージュを下がらせて、ジェーンと待ち伏せする。

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