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厄介な女は嫌いじゃない3

「お前、本当に貴族令嬢か?」


 全く動揺の色すら見せないアリアにデュスディニアスの方が動揺を見せる。


「あなたこそただの賊ではないのでしょう?」


「…………何者だ?」


「大切なのは私が何者かではありませんわ。何者かというならアリア・エルダン。あなたの敵の敵、ですわ」


「なんだと?」


「席にお座りになって話しましょう?」


 アリアはニコリと笑って再び席に座るように促した。


「……分かった」


 状況がいまいち分からないけれどデュスディニアスは毒気を抜かれた気分がして大人しく席に座った。


「それで……何が言いたい?」


「サラを救いたくはないですか?」


 単刀直入に話を切り出す。

 デュスディニアスがピリついた空気を出すがアリアは構うこともない。


「下がってろ」


 デュスディニアスは部下を下がらせる。

 本当はアリア以外のパメラたちも別の部屋に移したいところだけどアリアのみが話を知っているのか、3人も話を知っているのか分からないのでそのまま話を進めることにした。


「なぜ……サラのことを知っている?」


「偶然知ったのですわ。それに今サラがどこにいるのかも知っていますわ」


「どこにいる!」


 流石にサラのことになると感情が抑えきれなくてデュスディニアスの体からオーラが溢れ出した。


「ジェーン」


「はい」


「ほぅ?」


 アリアの命令でジェーンが前に出てオーラを放つ。

 威嚇のためではなくパメラとトゥージュのためである。


 体を鍛えてもいない一般人がオーラに当てられるのはなかなか危ない。

 特に今デュスディニアスが放っているような敵意を持ったオーラはそれだけで相手を傷つけてしまう。


 デュスディニアスのオーラを防ぐためにジェーンはオーラを放ったのである。

 オーラによってパメラとトゥージュをオーラから守るのだ。


 ジェーンがオーラユーザーであることにデュスディニアスは驚いた。

 さらにアリアがデュスディニアスのオーラに当てられても平然としていることにもまた衝撃を覚えていた。


「次そうやって威圧したら私は二度とあなたとお話しいたしませんことにしますわ」


「……なに?」


「言った通りですわ。お座りください」


 ただの小娘だと思っていたのに強い圧をアリアから感じる。


「サラを助けたくはありませんか?」


「……別に助けなくとも大人しく言うことを聞けばサラを解放してくれる」


「本当に?」


「…………」


 アリアの言葉にデュスディニアスの瞳が揺れた。


「奴らはあなたとは違いますわ。解放するなんて口で言ってそれを本当に実行してくれるとお思いですか?」


 相手がケルフィリア教なら信じてはいけない。

 解放するなんて言っておきながら殺すと言うことも十分にあり得る。


 ただ今回に限っては殺さないだろうとアリアは思っていた。

 ただ解放もしなかっただろう。


 回帰前のデュスディニアスから推測をするとであるが。

 回帰前のデュスディニアスは水賊をさらに大きくして悪虐を尽くして最後には国に討伐された。


 だが今目の前にいるデュスディニアスはそんなお馬鹿には見えなかった。

 国に目をつけられるまで水賊を大きくして暴れ回るなんてことをやる人物にはとても思えないのだ。


 ならばどうしてそんなことをしたのか。

 サラという人物が関わっているのではないかとアリアは思った。


 おそらくデュスディニアスの娘であろうサラはケルフィリア教にさらわれた。

 経緯はどうあれそのせいで今デュスディニアスはケルフィリア教に脅されて何かをさせられているのだ。


 もしかしたら回帰前ケルフィリア教は水賊が利用できると判断したのかもしれない。

 サラを解放しないでデュスディニアスを脅していいように操り続けた可能性がある。


 いいように使い潰して最後にはケルフィリア教が行った罪も全て背負わせてデュスディニアスを見限った。

 筋の通る話である。


 お金を徴収するにしても水路で荷物を運ばせるにしても人を襲わせるにしても水賊ならばちょうどいい。

 デュスディニアスは今回のことが終わればサラが解放されると思っているようだが、その考えは甘いと言わざるを得ない。


「あなたが完璧に仕事をすればするほど奴らはあなたに目をつけますわ。そしておそらくサラがあなたのところに帰ってくることは……ないでしょう」


「なら! …………どうしたらいいというのだ」


 デュスディニアスはテーブルに拳を叩きつけた。

 オーラを出さないようにギリギリのところで耐えた。


「言ったでしょう? 私はサラの居場所を知っていると。それに敵の敵だと」


「お前はあいつらの正体を知っているのか?」


「もちろん。私の敵でもありますわ」


「……何が望みだ?」


 ひとまずアリアがサラを助け出せる可能性を持っているということは理解した。

 何もしなくてもアリアたちを解放するというのは本気だった。


 けれどアリアがそれでもデュスディニアスにサラのことを話してきたのには何かの訳があるはずだと察した。


「私の敵があなたを利用して何かの利益を得ようとしている。あるいは誰かを害そうとしているのかもしれない。そうはさせませんわ」


 笑顔を消して真剣な眼差しをデュスディニアスに向ける。

 一筋縄ではいかなそうな気配をアリアから感じる。


 厄介そうな女。

 でも嫌いじゃない。


 デュスディニアスは妻であった女性も時として目の奥に燃えるような意志を秘めた人であったとなぜなのか思い出していた。

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