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誘拐事件発生2

 大人しくしていれば手荒な真似と言ったので大人しくしていた。

 ただ誘拐なんて手段を取る時点でもはや手荒だろうと思うのだけど、それなりに丁寧にはしてくれたようだ。


 手足を縛ることもなく、アリアたち4人はどこかに連れて行かれた。

 頭の麻袋が取られるとそこは倉庫のような場所だった。


「剣取られました」


「そんなものいくらでも取り返せばいいのですわ」


「どうして戦うことを許してくれなかったのですか?」


 ジェーンはかなり不満そうな表情を浮かべている。

 護衛騎士としてついてきたのに結局戦うこともできずにアリアたちと捕まってしまった。


「命を投げ出すことを守るとは言いませんわ」


「……ですが」


 最初からジェーンが出て他の護衛たちと協力して戦っていれば結果は違ったかもしれない。

 そう思うと倒れた他の護衛に申し訳なさも感じる。


「無理でしょう。馬車のドアが開いた時に外にいた人も見えましたが、圧倒的に相手が多かった。多少持ち堪える時間が長くなったでしょうけど状況が逆転することはなかったと思いますわ」


 それにアリアは魔法を使って外の様子も大まかに把握していた。

 不利どころか勝ち目がない状況なことは分かっていたのである。


「私はオーラユーザーですよ?」


「オーラを過信してはいけません。それにあの眼帯の男、きっとオーラユーザーですわ」


「えっ……」


「おそらくスキャナーズが相手だと分かっていて手を出してきたのでしょう。つまり相手はスキャナーズを恐れていない。それに加えて手際の良さ、相手の数、眼帯の男……」


「水賊ゲルフマン……そして頭領のデュスディニアス」


「知っておられましたか?」


 アリアの言葉を聞いて反応したのはパメラだった。


「ここらに住んでいたら嫌でも名前聞くよ」


 世界は広い。

 そんな中で名声が聞こえてくる人も少なくはない。


 良い悪いに関わらずだ。

 デュスディニアスは悪い名声を得て有名になった人物だった。


 海ではなく大きな河川一帯をナワバリとして略奪行為を行う水賊の頭領であるのがデュスディニアスである。

 荒くれ者をまとめるデュスディニアスがただの男であるはずがなく、彼はオーラユーザーとしても知られていた。


 かつてデュスディニアス率いる水賊ゲルフマンを倒すために王国から2人のオーラユーザーの騎士が派遣された。

 結果は言うまでもない。


 デュスディニアスは生きている。

 戦いが正々堂々としたものでないことは自明の理であるが、デュスディニアスは片目を犠牲にして2人のオーラユーザーを倒してしまったのだ。


 その時のオーラユーザーの実力をアリアは知らないけれども王国の騎士が弱いはずがない。


「あそこでジェーンが動いていたら確実に負けていたでしょう」


 仮にアリアも参戦したとしても厳しいだろう。

 軽薄な言葉遣いであったが小娘相手にも油断をしていない目をしていた。


 殺すならさっさと殺したはずで、殺さないのなら目的があるはず。

 あの場では動かないことが最良の選択であった。


 他の護衛と違ってジェーンはまだアリアたち令嬢の仲間に見えるから。


「まだこんなところであなたを失うわけにはいかないのですわ」


「アリア……」


 せっかく手に入れたオーラユーザーが無駄死にするところなど見たくはない。

 打算的な面もあるけれど素早く状況を把握してジェーンを思ってくれるアリアの姿勢に感動を覚える。


「それに手荒な真似はしないと言ってくれたこと本当でしたわ」


 悪人の言うことなどまず信じられないが、アリアたちが暴れもしなかったからか拘束もない。


「これなら隙を見つけて脱出を試みるほうがあの時戦うよりも何倍も可能性がありますわ」


 結果論ではあるがデュスディニアスと戦うより今この状況から逃げ出そうとする方がまだ生きていられる可能性が大きいとアリアは思っている。


「白昼堂々の誘拐劇。きっと大騒ぎになっていることでしょう。それに有名な水賊であればすぐに誘拐した犯人も分かるはず」


 今ごろアリアたちの行方をスキャナーズが全力で探してくれている。


「だから……心配しなくとも大丈夫ですわ」


 アリアは少し困ったように笑って泣きそうになっているトゥージュのことを抱きしめてあげる。

 パメラはまだ耐えているけれどトゥージュには今の状況は重たすぎる。


「ごめんね……」


「何を謝ることがあるのですか。怖いのは私も同じですわ」


「アリアも、怖いの?」


「ええ、もちろん」


 怖くないはずがない。

 でもいざとなれば戦うつもりもあるし、ただ少しだけ冷静でいられるというだけなのだ。


 震えるトゥージュの背中を撫でてあげると少しずつ落ち着いてきていた。


「せめてお相手の目的が知りたいですわ」


 真っ先に思いつくのは金である。

 スキャナーズのみならずエルダンもいる。


 身代金を要求するのには良い相手だ。

 だが本当にお金目的だろうかと疑問は残る。


 第一にリスクが大きすぎる。

 真っ昼間から町中で護衛のついた令嬢を誘拐するなど頭がイカれていても基本はやらない。


 金に困ってもいない巨大水賊がそんなことをするとは思えない。

 むしろここまで大きくなれた組織だからこそスキャナーズに手を出す危険性が分かっているはずなのに。

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