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お食事会1

「ボノロア様がお帰りです。本日のお夕食はご一緒にとのことです」


「お父様が? 二人はどう?」


「私は構いませんわ」


「私もいいけど……このまま?」


 このままとは現在アリアを含めて3人ともパジャマパーティーの最中なのである。

 つまり今はパジャマ姿ということである。


 夕食を共にすることは構わないけれどもう日も落ちて夕食となるのもすぐである。

 失礼にならないように着替えるべきだろうかとトゥージュは思った。


 トゥージュはパジャマが初めてなので相手の家の家主に会うのにパジャマ姿が失礼かどうか判断しかねるのだ。


「んー、いいよいいよ! こんなことで怒るお父様じゃないし」


 本来ならば失礼だろう。

 だがパメラは笑ってパジャマで大丈夫だと言う。


 パジャマを薦めたのはパメラである。

 家人に勧められた格好をしている上に夕食に誘われたのも直前のことである。


 さらにはパメラの父親と食事するのも来た最初の時にするはずだった。

 食事の約束をすっぽかすことは用事ができたにしても失礼は失礼なので多少の無礼は許してもらう。


 夕食までの間に温かいお茶でも飲んでお菓子を食べたお腹の調子を整えて、パジャマのまま夕食に向かった。


「はじめまして、パメラの父のボノロアです。ご挨拶遅れてしまって申し訳ない」


 パメラの父親であるボノロアは健康的な肌の色をした良い体つきをした男性だった。

 はっきりとした顔立ちをしていて目もくっきりとしていて、母親のたれ目と混ぜるとパメラになるのだなと納得した。


「アリア・エルダンです。この度はご招待に預かり誠にありがとうございます」


 ドレスではなく通常の挨拶ができない。

 けれどパンツスタイルでの挨拶というものもあるのでアリアはスッとお辞儀をする。


「トゥージュ・ヘヴィアナドです。ええと……よろしくお願いします」


 アリアはさらりと挨拶したがトゥージュはパンツスタイルの挨拶など知らないのでアリアを見習ってマネをする。

 ボノロアはアリアが平然と挨拶をしたことに驚いたようだったがパジャマ姿であることは気にした様子はなかった。


「改めて挨拶するわ。パメラの母のリデラーシュよ」


 ボノロアの隣に立つリデラーシュも笑顔を浮かべている。

 こうして3人並べてみるとパメラは両親にそれぞれ似ている。


「ガルダデイ・スキャナーズだ。孫娘の友人に会えて嬉しいぞ」


 この場にはパメラの両親の他にもう一人老年の男性がいた。

 ガルダデイ・スキャナーズ。


 パメラの祖父である。

 スキャナーズはすでにボノロアが家主として家を継いでいるし商会の方もボノロアが会長である。


 しかし未だに強い影響力を持つのがガルダデイであった。

 スキャナーズ隆盛の立役者と言ってもいい剛腕の商人で名実ともに非常に優れた人である。


 穏やかな笑みを浮かべるガルダデイは品の良いおじいちゃんにしか見えないが決して油断してはならない商人である。


「しかし……可愛らしい格好をしているな」


 堅苦しい挨拶は少しでいい。

 席に着いて食事を始めるとガルダデイがニコニコとしてアリアたちを見た。


 アリアはパジャマで人と食事するのは変な気分だなと思うぐらいだけどトゥージュは緊張している様子だった。

 ドレスとはまた違うパジャマ姿はガルダデイにも新鮮に映った。


 特に孫娘であるパメラのことは目に入れても痛くないとまで思っている。


「パジャマっていうんだ。本来寝る時に着るんだけど今日は急にお父様に呼ばれたから」


「ふふ、そうなのか」


「パジャマ……あるかもしれない」


 家の中でガルダデイにこんな態度で接することができるのはパメラしかいない。

 他の者がパメラと同じようにガルダデイと接したら次の日には町から姿を消していることだろう。


 ただパメラだけは特別なのだ。

 それはただ孫娘であるから愛されているのでもない。


「ほう?」


「一枚……それどころかもっと噛んでもいいかもしれないです、おじい様」


 回帰前パメラは兄を押し退けて商会の会長の座に就いた。

 祖父と父の愛があっただけではなく、パメラにはお金の流れをかぎつける才能があったからだ。


 だからこそガルダデイもパメラに目をかけていた。

 パメラの言葉を聞いてガルダデイとボノロアの目の奥が光った気がした。


 二人とも男であるしもう若くはない。

 若くて女性であるパメラの視点で見て何かを感じたということはそれだけで一考の価値がある。


「ボノロア、後で……」


「そうですね、父上」


 もしかしてここがパジャマ事業が広まる分岐点だったのかなとアリアはふと思った。


「ここ数日忙しそうだったけど何かあったの?」


 あまり真面目な話題ばかりしていてもつまらない。

 パメラが話題を変えた。


「うむ、うちの倉庫に泥棒が入ってな」


「泥棒? 大丈夫だったの?」


 そんなこと部外者のアリアとトゥージュが聞いてもいいのかと疑問に思うがボノロアは普通に答えた。


「泥棒というか武装した連中による押し入り強盗みたいなものだった。制圧はしたのだが警備強化や盗まれたものなどの確認で忙しかったのだ」


「そんなことがあったんですね……」


 泥棒に入られては忙しくても仕方ない。

 対応だけでなく、品物の無事安全なども確認せねばならない。


 スキャナーズほどの大きな商会ならば確認作業だけでも大きな時間を取られてしまう。

 夕食に間に合わなかったのは当然だ。

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