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パジャマパーティー1

 アリアから遅れること2日、トゥージュも到着した。


「パ、パメラ〜く、苦しいよ〜」


「いいじゃないの!」


 アリアにやったようにパメラはトゥージュを抱きしめる。

 途中の道で倒木があってトゥージュは遅れてしまったということだった。


 またお友達が……! と感動したパメラの母親はまた山ほどお菓子を買ってきたので部屋でダラダラとお菓子を食べながら今後の計画を練る。

 商人が集まる町なのでお買い物をするのには良い場所である。


 そうして人が集まると文化的なものも集まり始める。

 買い物を目的としたお客に向けた演劇なども盛んだった。


 商人が多いので美術品を売っているようなところもある。

 つまり観光しようと思えば色々とあるのだ。


「とりあえず服を見たいですね」


 アリアたちはまだまだ成長期。

 アカデミーで過ごして帰ってくると服が少し小さいなんてこともある。


 それを見越して少し大きめサイズのものも用意しておくのだけどまた次のものを用意せねばならない。

 物が集まるのだから服も質が良くて安い物が集まってくる。


「服ならファイン商会よ」


 服を見たいということにはアリアも文句はない。

 定期的にメリンダが服を送ってくれる。


 時々完全にメリンダの趣味が透けて見えるような服もあるけれど大体服の感じは文句なく事足りてはいるが、自分で服を見るのはなかなか楽しい。

 ちなみに服に混じって聖印騎士団の報告が来たりもする。


「あとはおじ様にお土産のプレゼントでも買いたいですわね」


「あ、私も」


「男性ものならパリクラット、お酒ならコヤキ酒店がオススメよ〜」


「お母様ー!」


「だってぇ」


「だってじゃない!」


 時折入る合いの手はパメラの母親のもの。

 ドアからこっそりと覗き込むパメラの母親は会話で何を買うかの話が出るとこっそりとどこがいいのか教えてくれる。


 アリアは妖精の声のようなものだと流しているけれど娘であるパメラからしてみると友達の前で恥ずかしいのだ。

 こっそりとなんていうけれどアリアたちから普通に顔も見えている。


 特徴的なタレ目は遠くからでもよく分かる。

 パメラが心配だという気持ちはわかる。


 父親が急遽同席できなくなったけれど母親の方とはトゥージュが来る前の二日間も食事を共にしていたので少し話を聞いた。

 パメラはこの辺りではちょっと微妙な立場らしい。


 パメラが悪いのではないが互いにライバル関係にあるような商人の家が多い中で先頭をひた走る商家の娘である。

 さらには爵位ももらって貴族であるということもまた立場を複雑にしていた。


 貴族としてはまだまだ新興な方で周りも付き合い方を図りかねているところがあるのだ。

 パメラ本人は明るく快活なのであまり気にしていないがそれもまた貴族らしくなくて多少貴族的な友達が出来にくい理由らしい。


 アリアとしては非常に好ましい気性だと感じているけれど、この辺りの貴族にとって商人は大きな力を持っていて厄介な相手でもあるから簡単にはいかないのである。


 そんな頭の固いバカとわざわざ友達になる必要はないとアリアが鼻で笑うとパメラの母親は感動したような目をしていた。

 別にそんなに感動されることでもないのに。


「もう……」


 気を利かせた使用人がパメラの母親を連れて行ってパメラは小さくため息をついた。


「良いお母さんだね」


「良いお母さんだけどさぁ……」


 トゥージュに褒められてパメラは少し顔を赤くする。

 悪い人じゃないけれど心配症で過保護になりがちなところがある。


「まあ甘えられるうちに甘えておけばいいのですわ」


 大人になったら全力で甘えるということも難しくなる。

 しつこく構ってくれる今の間に甘えておけばいいとアリアは微笑んだ。


「ん……まあ、そうだね」


 アリアには両親がいないことをパメラは知っているのでやや気まずい表情を浮かべた。


「そんなお顔なさらなくてもいいのよ?」


「むぐ……」


「親がいなくても甘えさせてくれる人も、友達もいますから」


 無神経だったかもしれないと思っているパメラにお菓子を差し出して食べさせる。

 回帰前も今も時折両親がいなくて寂しいと思うことはあるけれど今はいろんな人が周りにいてくれて寂しさを感じることは少ない。


「私が寂しくなったらパメラがいてくれるでしょう?」


 とろけるような笑みだった。

 男性にもときめいたことがなかったのにパメラはアリアの笑顔を見て顔を真っ赤にした。


 それを見ていたトゥージュやジェーンも流れ弾を食らって思わず頬を赤くしながら手に持っていたお菓子を落としてしまった。


「あらあらあらあら」


「奥様……」


「今いいとこだから!」


 今回は友達も味方も家族もいる。

 くだらない悪き神には負けたりなんかしない。


「口の端にお菓子ついていますわよ」


 アリアがパメラの口の端についたお菓子のカスを拭ってあげる。


「あ、どぅ、うん、さ、寂しくなったら言ってね」


 動揺を隠してきれないパメラがおかしくてアリアはまた笑顔を浮かべる。


「アリアが男だったら危なかった……」


 もしアリアが男だったらもう完全に落ちていたことだろうとパメラは高鳴る胸を押さえながらゆっくり深呼吸する。


「女性相手でも好きになるのは構わないことですわよ」


「そ、それはそうかもしれないけどぉ〜」


「ふふ、私を好きになってもいいのよ?」


「も、もー! か、からかわないでよ!」


 まあ好きになってもらう分には構わない。

 珍しくはあるけれど同性を好きになることがない話でもないしアリアはそれでも良いとは思う。

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