南の友達を訪ねて2
「それに二人では食べきれない量がありそうですもの」
正直用意したお菓子を見て驚いた。
おもてなしにしてはかなりの量のお菓子だった。
今すぐに食べなきゃならないものではないけれども多少急がなきゃ美味しさが損なわれてしまうお菓子もある。
「はい、アーン」
ジェーンは迷っていたけれどアリアにお菓子を差し出されて渋々受け入れた。
剣の腕はジェーンの方が上だけど人のあしらい方に関してはアリアには到底敵わない。
こんな風に誘われ始めたらジェーンにはもう抗えないのである。
アリア、ジェーン、パメラの3人でお菓子を食べ始める。
「今は忙しい時期なのですか?」
来客が分かっていたはずなのにいないということは忙しい時期だったのだろうかとアリアは思った。
「そんなことないよ。いつもこんな感じ。むしろ本当に忙しい時になると帰ってこないこともあるからまだ余裕がある時期かな」
商人としての規模が大きくなるほどに当主であるパメラの父の余裕もなくなる。
普段から忙しく動き回っているエネルギッシュな人で、本当に忙しい時には商会の建物に泊まり込んで働いているようなこともある。
夜には食事を共にするのだし余裕がある方だと言えるかもしれない。
「ア、アリア?」
ニコリと笑って答えたパメラのことをアリアはぎゅっと抱きしめた。
「パメラも大変なのですね」
忙しいのは今に始まったことではないだろう。
だとすると寂しいような時期もあったのではないかと思う。
「や、やだなぁ……別に平気だよ!」
パメラは突然向けられた優しさに顔を赤くして困惑する。
「そういえばパメラのお母様は?」
亡くなったという話は聞いていないので存命だと思うがいないのだろうかと疑問に思った。
商人として忙しくしている父親や祖父には会えなくても母親なら会えるのではないか。
「お母様もいるんだけど……朝からどこか行ってて」
「なにかご用事でもあったのですね」
もちろん母親も元気だった。
パメラは母親と一緒にアリアを出迎えるつもりだったのだけど朝早くに母親は家を飛び出すようにどこかに行ってしまった。
突発的な行動は割とあることなのでしょうがないことだと思うだがどこに行ったのかはパメラも知らない。
パメラもこんな時に出かけなくともとは思うが、こちらの方も夜の食事の時には帰ってくるだろうからそんなに気にしていなかった。
「元気なお母様なのですね」
「うん、すっごい元気。みんな私がお母様に似てるなんていうけどお母様の方が元気だよ」
なるほど、パメラの性格は母親の影響があるのかとアリアは納得した。
「パーメーちゃーん!」
あまり食べすぎるとご飯が食べられなくなる。
そろそろお菓子を控えようかと思っていたらドアが激しく開かれて女性が入ってきた。
「お母様!」
パメラよりもタレ目が強いおっとりとしたように見える女性はパメラの母親であった。
「あらあら、あなたたちがお友達ね!」
「私は……」
「んぎゅ!」
ジェーンは慌てて護衛だと訂正しようとしたけれどパメラの母親にアリアごと抱きしめられて声が出せなくなる。
「パメちゃんがお友達連れてくるなんてね……私感動しちゃう」
パメラの母親、意外と力が強い。
「パメちゃんはね、こう見えてなかなかお友達ができなくてね。私も心配してて他の地域の集まりに行かせたりアカデミーに入学させたりしたんだけどこうしてお友達ができたようで嬉しいわ!」
「お母様!」
パメラが顔を赤くして母親とアリアたちを引き剥がす。
「パメちゃんのお友達のためにたくさんお菓子買ってきたのよ!」
使用人が部屋の中に入ってきてテーブルの上にお菓子やケーキなどが置かれていく。
その量たるやさっきまで食べてようやく減ったと思った分のお菓子が完全に補充されただけでなく、むしろ量が増えるほどだった。
「……親子して考えることは同じのようですね」