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南の友達を訪ねて1

 程よくエリシアをあしらいつつアカデミー生活を過ごしていた。

 錬金術の授業では相変わらず進んで実験に協力して毒耐性を上げ、ユーケーンでの練習やヘカトケイとの鍛錬で剣術も磨いた。


 ユレストが会長になって、主張していたことを元にアカデミーと話し合いも進めていくつか本当に実現できることにもなった。

 学園対抗戦でもカールソン率いるユーケーンの活躍で優勝をもぎ取ったりとアカデミーそのものも順調にいっている。


 2年目のアカデミーも大きな問題はなく過ぎていった。


「アリア様、もうすぐ着きますよ」


 2年目のアカデミー生活を終えて家に帰ったアリアはメリンダと情報交換し、ゴラックやディージャン、ユーラと家族の時間を過ごした。

 そして今は馬車に揺られている。


 アリアが向かっていた先は国の南にあるユンデル地方だった。

 国の南には大きな川が流れていて、その川を生かした船舶による輸送や川から海へと出て他国との交易を行っている。


 そのために南側は商人の地と呼ばれるほどに交易が盛んで、発展した場所なのである。

 商人が多くいて競争が起こらないはずもない。


 駆け出しの商人が夢を持って訪れたり、中堅の商人が一山当てようと訪れることもある。

 それぞれが自分の利益を上げようと必死になっている中で頭一つ抜きん出た商人が何人かいる。


 その1人がスキャナーズである。

 最初は大きなリュック一つから始まったと言われるスキャナーズは絹の織物を扱って一山当てた。


 お金の力で貴族の地位を手に入れたことは批判されることもあるけれど今となってはそれを表立って言う人も少なくなった。

 今でもスキャナーズはユンデル地方で商人として活動しながら貴族としての役割を果たしている。


「アリア!」


「パメラ……苦しいですわ」


 そのスキャナーズのご令嬢こそパメラであるのだ。

 ユンデル地方を流れる大河アシラストリマスに寄り添うように発展した港湾都市フィランティスの一等地にスキャナーズのお屋敷はある。


 アリアは出迎えてくれたパメラにギュッと抱きしめられて苦しそうにしながらも笑っていた。

 アカデミーが終わったら遊びに来ないかとアリアはパメラに誘われていた。


 一年目の時は色々と忙しくタイミングも合わなかったので残念ながら行けなかったが、今回はしっかりと計画を練っていたので遊びに来ることができた。


「トゥージュは?」


「まだ着いてないよ。でも多分もうすぐ来ると思うよ!」


 もちろんアリアだけではなくトゥージュも誘われていた。

 この日ぐらいに着くようにと計画を立てても様々な事情によってその通りに行かないこともある。


 アリアは予定通りについたけれどトゥージュは少し遅れているようだった。

 

「そうですか。先にスキャナーズのご当主に御挨拶をしたいのですが」


「おじい様もお父様もお忙しくて……夕食を共にしたいと言っていたのでその時でも大丈夫?」


「ええ、そちらの都合の良い時で大丈夫ですわ」


 そんな無理やりご挨拶に伺うつもりはない。


「まだトゥージュも来なそうだし、中で待ってよ!」


 パメラはアリアの手を引いて屋敷に向かっていく。

 スキャナーズのお屋敷は大きい。


 エルダンにも負けていない。

 むしろスキャナーズのお屋敷の方が大きいのではないかと思うほどである。


「2人が来るからたくさんお菓子用意したの! 普段は怒られるからあんまりたくさん買えないんだけど2人が来てくれるからね」


「ご自分が食べたかっただけではなくて?」


「ぬっ……は、半分ぐらいは……」


「ふふ、まあ私もお菓子は好きですわ」


 最初こそお淑やかっぽそうだったパメラだが打ち解けるほどにサバサバとした感じのある子であった。

 貴族的な気性よりも商人的な気性の持ち主である。


 アリアの部屋と通されたところは広くてとても良い部屋だった。

 テーブルの上にはすでにお菓子がどっさりと用意されていた。


「でもトゥージュが拗ねますよ」


 先にお菓子パーティーをしていただなんて聞いたらトゥージュがなんと思うか。


「ふふーん、お菓子はまだあるから大丈夫! 足りなくなったら買えばいい」


 ニヤリと笑うパメラは手近なお菓子を一つ口に放り込んだ。


「お嬢様、お荷物ここに置きますね」


「ありがとうございます、ジェーン」


「そういえばジェーン先輩、アリアの騎士になったんですね」


 エルダン家で一年間みっちり騎士としての教育を受けたジェーンはパメラのところに遊びに行くアリアの護衛騎士として選ばれた。

 ただしジェーン単独ではなくアリアの護衛の先輩であるレンドンとヒュージャーも護衛として来ている。


 ジェーンも完全にアリアの専属騎士に任命されたのではなく、こうして少しずつアリアにつけて慣らしていって最終的に専属騎士にふさわしくアリアも受け入れれば任命されるのである。

 ジェーンはアリアの荷物を持って一緒に部屋まで来ていた。

 

「ジェーンも食べましょう」


「ですが……」


「いいんですわ。あのお気楽二人組も私についてきてお菓子なんか食べたりしていますから」


 お気楽二人組とはレンドンとヒュージャーである。

 最初こそ真面目だった2人もアリアがお菓子なんかを与えているうちにかなり打ち解けてきた。


 半分餌付けみたいなものである。

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