悪の戦い方3
「俺はカールソンが支持するやつを支持するさ」
笑ってサラリと答えるジーカー。
こうしたことがあるから支持者が支持者を呼び込んでくれるということなのだ。
「僕も……身内票というわけじゃないですがユレストさんに。彼の主張は正しい。浅いことを言っている第二皇子とは違う」
この流れで言ってしまえばカールソンやジーカーに同調しているように聞こえてしまうけれどそうではない。
デレクはちゃんと候補者を見た上で適正な人を判断していた。
ユレストの主張はちゃんとアカデミーの生徒のことを考えている。
だから支持してみようと思っていた。
デレクとユレストはタイプ的に似ている。
どちらも冷静な感じの参謀タイプ。
デレクは表に出ることを望まないがユレストは表に出ても活動する違いがある。
ユレストも仕えるべき主君でもいたらそちらを立てていけるだろうから最後には同じような感じになるかもしれない。
2人もユレストを支持してくれることを明言してくれた。
理由は何でもいい。
着実に支持者が増えている。
アリアはさらにフェクターを使ってカンバーレンドや王族も支持をしている話を広めた。
ディージャンやユーラにもアリアがユレストを推していることを教えると同じく支持してくれることになった。
ディージャンは少しアカデミー外での影響を心配しているようだったけれど、最後にはアリアの好きにしていい言ってくれたのである。
「ふむ、見ておるだけでいいのか?」
「あまり露骨に関わるとうるさい方もいらっしゃいますので」
使えるものは何でも使う。
それがたとえ師匠でも。
演説も日に日に上手くなる。
他の候補者は演説することに勇気が出ないようだがユレストは毎日しっかりと自分の声で主張を伝え、聞いてくれる人も増えていた。
アリアはアルドルトにちょっとしたお願いをした。
離れたところからユレストの演説を見てくれないかと頼んだのである。
表立って声をかけるとか支持を表明するとかではない。
ただ微笑ましく遠くから見ているだけでいい。
アカデミーの教員は会長選挙に関わらないのが普通である。
アリアが本気でお願いすれば直接的にアルドルトが関わってくれるようなこともあるかもしれない。
しかしそうしてしまうと批判がどこからか出てきてしまう可能性もある。
関わっていないけれど関わっている。
これぐらいの微妙な距離を保ってあとはアリアの側で関係の印象をコントロールすればいい。
あたかもアルドルトがユレストに期待しているという印象を広める。
ユレストとアルドルトの関係が噂され過ぎたら掲示板に掲示物を貼りにきてたまたま見ていたとか、演説する生徒は珍しくて見物にきたとか適当な言い訳もできる。
エランはユレストのことを馬鹿にしている。
演説しているユレストに対して必死になっていると嘲笑っているのだ。
笑いたければ笑えばいい。
気がついた時にはもう手遅れになっている。
ふんぞり返っていれば勝てるなどと思うなよとアリアはエランのことを笑っていたのであった。