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したい再会、したくない再会2

 そして王族がアカデミーに所属する時は大抵生徒会の会長に立候補して会長となるのである。

 エランも例に漏れず会長に立候補しようというのである。


 昨年は副会長を務めていたのだし順当な流れである。

 しかし王族であれば会長になれるなどというほど甘くはない。


 中には王族であるだけで会長になれたような年もあるのかもしれないがアカデミーにおいては皆平等がうたわれている。

 アカデミーで会長に選ばれることは大きな栄誉になるために王族と戦ってもその座を目指す人が一定数いる。


 特にエランは今かなり微妙な立場である。

 兄である第一王子は頭脳が優秀、弟である第三王子のノラはオーラが扱えるオーラユーザー。


 エランは凡才ではないが天才というほどでもなく、剣の腕もそれなりに優れていたがユーケーンにも入れずオーラも覚醒しなかった。

 幸い顔は良く口も上手かったので王位争いにも食い込めてはいたけれど能力的な側面では他の王子により見劣りして見えるのは避けられなかった。


 そんなエランにとって会長選挙は今後の王位争いも左右する重要なイベントなのである。


「どうして私に?」


 聞かずとも分かりきっている。

 エランの支持基盤はそれほど強くはない。


 やはり聡明な第一王子を支持する声が多く、第二王子、第三王子と支持は弱くなる。

 ノラとの噂はあるもののエルダンは公にはどこの勢力も支持していない中立な立場となっている。


 さらにはアリアは同じく中立な立場であるカンバーレンドの公子カールソンとも噂になっている。

 アリアを引き抜けばノラの支持を弱らせて、カンバーレンドも引き抜けるかもしれない。


 たかがアカデミーの会長選挙であっても、もはや外の世界における政治のゲームは始まっているのだ。


「ぜひともアリア・エルダン嬢個人的に、僕を推してくれないかなとお願いしに参っただけです」


 もしかしたらアリア自身が狙いなのかもしれない。

 回帰前にはアリアはエランと一度結婚した。


 アカデミーで関わりがあったことはないのだがアリアの行動によって回帰前とはかなり結果は変わってきている。

 エランの行動に変わりがあってもおかしくはない。


 それに個人的になど言うがエランを支持すると言ってしまえば個人ではもう済まない。

 簡単な話でアリア・エルダンがエランを推したと口にする時おそらく個人的にという言葉はつかない。


 エルダンという言葉を強調して伝えることだろう。

 そうなるとまるでエルダン全体がエランを支持しているかのような印象を周りに与えるのだ。


「どうかな? 僕が会長になったらユーケーンの予算を増額することも検討しよう」


 増額するとは言っていない。

 検討するだけ。


 よくある大人の責任逃れの手法。


「私にはまだよく分かりませんわ」


「なら僕を……」


「ですのでお兄様方に相談して決めたいと思います」


 ならばアリアも同じように答える。

 支持するともしないとも答えない。


 分からないと答えて言葉を濁す。

 明確な返事なんかしないでおくのがこの場では1番である。


 ただ本当のことを言ってしまえばアリアがエランを支持することなんてないのだけど。


「そ、そうかい。出来れば……支持してくれると嬉しいな」


 ちょっとばかり大人っぽいやり方はしてみるがアリアの返事にエランは顔をひきつらせた。

 断られると思わなかったのか考えが顔に出てしまっている。


 ここら辺はまだまだだなと思う。


「はぁー、アリアは人気だねぇ」


 さらに押される前に別れの挨拶をして、また部屋に向かい始めた。

 候補者から直接話しかけられるということは大なり小なり影響力を持っていると見られている表れである。


 パメラは感心したように頷いていた。


「ですがあのように引き込もうとするのは私としては感心しませんわ」


「そうだね。急に僕を支持してくれないか、じゃあ私もちょっと」


 トゥージュは女の子を待ち伏せして急に指示を迫るエランの態度をよくは思っていなかった。

 今回は人の目があるところ、トゥージュたちも一緒だったけれどアリア1人だったら不安に思うこともあったかもしれないと心配してくれていたのである。


「それじゃあ荷物置いたら部屋に行くから!」


「お待ちしておりますわ」


 パメラとは部屋の前で別れるがまたすぐに合流するつもりだった。

 一年目では基礎授業が多くてその中から選ばなきゃいけないのが多かったが、二年目からは取れる授業の選択肢もグッと広がる。


 エランなど気にしている暇もないのである。

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