ピンクのフリフリ1
「アカデミーでは色々とあったようだね」
メリンダが持ってきたドレスを試着するということで男子禁制の部屋でクインやシェカルテに手伝ってもらってドレスを着替える。
部屋にはジェーンも呼ばれていた。
「ええ、大変でしたわ」
基本的にキュミリアの事件は外部には漏れないようにされていたが、アリアはメリンダにも手紙でザックリとケルフィリア教に関わる事件が起きたと伝えていた。
ケルフィリア教も色んなところに潜んでいるが聖印騎士団も意外と色んなところにいたりするのでメリンダもある程度は事態を把握している。
ただ細かいことは流石に何が起きたのかは知らない。
アリアも手紙にはそんなこと書けなかった。
そこで着せ替えタイムを利用してメリンダとクインに何が起きたのかを説明した。
「この話を聞いたら上の連中が喜びそうだ。アリアに何かプレゼントでも届くかもしれないね」
ケルフィリア教の企みを阻止した。
相手も殺すことなく確保することができたしアカデミーという閉鎖された場所においてアリアが成し遂げた功績はかなり大きい。
これまででもケルフィリア教を明らかにする功績をアリアは立てているので実はアリアに期待しているなんて上層部もいるのだ。
「上の方々が頑張ってケルフィリア教を潰してくださるのが1番のプレゼントですわ」
「ははっ、こりゃ手厳しいね」
上層部だって頑張っている。
秘密組織である聖印騎士団を率いてケルフィリア教と戦っているのだから。
ただアリアにしてみれば結局のところ回帰前聖印騎士団ではケルフィリア教は止め切れていなかったのである。
ケルフィリア教と戦っていることは間違いないのであるが信頼感としてはちょっと微妙かなと思わざるを得ない。
「それで……その時に協力してくれて、アリアの味方になってくれるというのがジェーン、あなたなんだね?」
メリンダはちょっと緊張して固くなったようにイスに座っているジェーンに視線を向けた。
ジェーンにとってはここは2回目の面接のようなものなのだ。
「は、はい!」
「ふふふ、そう固くならずともいいよ。何も取って食ったりはしないから」
「そ、そうはいきません……!」
この場はジェーンをメリンダに紹介するというだけじゃない。
聖印騎士団としてジェーンがふさわしいかも見る場となっていた。
アリアと行動を共にしてケルフィリア教と戦うということになるのならば聖印騎士団に所属しておいて損はない。
なので全てを話したジェーンをケルフィリア教と戦う仲間として聖印騎士団に加えたいとメリンダに伝えてあった。
アリアの推薦なので仲間に加えてもいいだろうとメリンダは思っている。
けれどそれだけでもいけないので一応しっかりと人柄を見ておきたいということになった。
気負わなくてもいい簡単な面接みたいなものとジェーンには言ったのだが逆に緊張してしまったみたいである。
「真面目な子なようだね。あのドレスはどうだい?」
「……可愛らしいですがもうちょっと明るい色の方がいいかなと思います」
「うんうん、見る目もありそうだ」
メリンダも別にジェーンを厳しく審査しようなどとは思っていない。
性格的に引っかかるようなことがなければそれでいいだろうと思っていた。
その点でもジェーンは真面目でちゃんと自分の意見も言えている。
悪くないとメリンダは笑顔を浮かべる。
「次はこれです」
「ク、クイン?」
「とりあえず着てみましょう」
「これは……」
「さて、お嬢様ぁ〜」
クインが次に着ようと手にしたドレスにアリアは顔をこわばらせた。
どピンク、フリフリ。
こうしたドレスを好むご令嬢も一定数いるけれどアリアはそのご令嬢ではない。
一歩後ずさったアリアを逃すまいとシェカルテが肩を掴む。
「シェカルテ……あなた!」
「きっとお似合いになられると思いますよ!」
「くっ……!」
メリンダは期待するような目でニコニコとアリアを見ている。
メリンダにも色々と助けてはもらっているし贈り物のドレスを着て見せるぐらいならとアリアは覚悟を決めた。
「い、意外と似合ってますよ」
「あっさいお世辞はやめてください……」
服そのものでみれば可愛いかなと思わなくもないが実際着る身になってみるとちょっと辛い。
しかもアリアの中身は一度完全に大人にまでなったこともあるのだからピンクのフリフリドレスはキツイものがある。
顔がいいので似合うかなとジェーンも考えていたが、クールな感じで大人びたアリアにはピンクのフリフリドレスはあまり似合わなかった。
アリアがちょっと死んだような目をしていることも相まって妙な似合わなさがあってジェーンも笑ってしまいそうになる。
「うーん、やっぱり少しタイプが違うね」
可愛い系ではなく綺麗系なドレスがアリアにはいいとメリンダは見ていて思う。
「プフッ!」
「シェカルテ!」
「ふふっ」
「クインまで!」
珍しくクインからも笑いが漏れる。
「もう、次!」
このドレスはクローゼットの奥深くに封印しておこうと顔を赤くしながらアリアは思った。