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ハッピーバースデーアリア4

 いつもよりも豪華な食事を食べ始める。


「本当にご家族の仲がいいんですね」


 アカデミーのことを報告したり、学園対抗戦でのことを話したりと雰囲気は明るい。

 アリアたち兄妹の仲が良いことはすでに分かりきっていたがそれ以外でのエルダン家全体の関係性としても非常に良好そうである。


 自分がこれから先に仕える家なのだからギスギスしているよりも和気あいあいとしている方がいいのは当然で、ジェーンも自然と顔に笑顔が浮かんでいた。


「もちろんだ。アリアは大切な家族だからな」


「おじ様……」


 確かにこんな風にエルダン家でみんなに囲まれる暖かい光景などアリアも予想していなかった。

 ほんの少し勇気を出しただけ。


 周りのことを気にせずに敵だと思うものを叩き潰して自分らしくあっただけでこんなにも違うのかと改めて驚いた。


「アリア、これ」


「ユーラお兄様?」


 食事を終えてものんびりと談笑しているとユーラとディージャンが席を外してすぐに戻ってきた。

 それぞれ手には箱を持っていた。


「誕生日のプレゼントだよ。今日帰ってくるのが遅かったろ? これを買いに行ってたんだ」


「そう……だったのですね」


 先に出たはずのユーラとディージャンが遅れて帰ってきた理由はこれだった。

 アカデミーにいる時にはアリアのためにプレゼントを買いに行くことはできない。


 だが帰ってすぐに誕生日を祝うことは聞いていたので時間もなく帰りがけに誕生日のプレゼントを探すことにしていたのである。


「これは……お菓子ですか?」


 箱を開けてみると小瓶が入っていた。

 その小瓶の中には小さな砂糖菓子が詰め込まれている。


「何が良いか、あんまり分かんなくて。アカデミーだとさ、食堂はあるけどちょっと口が寂しくなる時なんてあるからこれぐらいなら部屋に持ち込んで時々食べてもいいかなって」


 少し照れたように笑うユーラ。

 昔はテシアのことを敵対視するようだったのに気づけば可愛らしいお兄ちゃんになったものである。


 確かにこれぐらいならアカデミーにも持ち込める。

 夜少し勉強する時なんかに食べるといいかもしれない。


「ありがとうございます、ユーラお兄様」


 そこそこオシャレなプレゼントだ。

 意外なセンスを感じる。


「次は僕だ」


 ディージャンも別でプレゼントを用意してくれている。

 ユーラのものよりも大きめの箱。


 受け取って丁寧に開けてみる。


「靴ですか?」


 入っていたのは靴だった。

 しかしオシャレな靴でない。


 パーティーとかに履いていけるようなものではなく、飾り気のないシューズであった。


「そうだよ。シェカルテから事前に靴のサイズを聞いていたんだ。アリアはユーケーンでも頑張ってる。激しく動くとすぐに靴がダメになってしまう」


「そういうことですか」


 このシューズは剣の練習などをする時に履く運動靴であった。

 激しく練習をすればするほど靴の消耗は激しくなってしまう。


 オーラも扱えるアリアはユーケーンの中でも真面目に鍛錬をしている。

 体格的にも大きくなっていっているし、消耗品である靴はいくつか予備があっても良いだろうと思った。


「僕も頑張りすぎて靴の底が抜けたことがあったんだ。あの時は恥ずかしくてね。アリアはそんなことしちゃダメだよ」


 ディージャンは軽くウインクした。

 自分の経験からも必要そうなものを考えた。


 回帰前は空っぽで何もしないような人物だと思っていたディージャンであったが実はとても努力をしている人だった。

 靴が擦り切れるまで剣の練習をして、学園対抗戦の団体戦メンバーにまで選ばれた。


 勉学においてもエルダン家の当主にふさわしくなれるようにと頑張っていた。

 何も空っぽなのではなかったのである。


 回帰前はユーラに家督を譲ろうとやる気のないフリをしていたのかもしれない。


「ありがとうございます、ディージャンお兄様」


「今度はちゃんと事前に考えてもっと良いものプレゼントするから」


 買い物する時間が短いからこうなってしまったが本来ならもっと良いものをあげたいと考えていた。


「これも素敵なプレゼントですわ」


「アリアがそう思ってくれるなら嬉しいよ」


「じゃあ次は私だね!」


 メリンダがハラジアに部屋の隅に置いておいたプレゼントを持ってこさせる。


「気の利かない男たちばかりだからね。こうしたものが女の子には必要だろうと思ったんだ」


 メリンダが自ら箱を開けて中身を取り出して見せる。


「ドレスですか?」


「そうだよ。今ももう少し大きくなったじゃないか? こうした服はいくらでも必要だろう。

 それに、私がアリアに着せたかったんだ! うちの息子は見ての通り大きく育ってね。可愛い洋服を着せる暇もなかった」


「僕は男ですしね」


 アリアのため。

 でもあるが、メリンダのためでもあった。


 娘に可愛い服を着せたいという望みがメリンダにはあった。

 アリアは顔も良い。


 成長期にあればすぐに服のサイズは合わなくなるのでそれを口実に新しくドレスや洋服を与えてもおかしくはない。


「どうだい?」


 ただメリンダも自分の欲求を押し付けるばかりではない。

 あまり華美なドレスはアリアが好まないことを分かっているのでまたそうしたラインも考えた上でドレスを用意してきた。

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