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騎士として、友として1

「そう緊張なさらなくても大丈夫ですわ」


「で、でもぉ……」


 ディージャンとユーラは同じ馬車に乗ればいいと言ったけれどジェーンを連れて行く都合もあってアリアは別の馬車で移動する。

 いつもの護衛であるレンドンとヒュージャーが操る馬車に乗っている。


 そしてさらには別邸でいざという時アリアの元にすぐに駆けつけられるようにしていたシェカルテも馬車に乗っていた。


「お嬢様がお友達を……感動、うっ!」


「少し目を離すと無駄口を叩くようになるのですわね」


 シェカルテの脛を蹴り上げたアリアはため息をつく。


「うぅ……ほんの冗談ですよ……」


「久々に会えて嬉しいようですね、シェカルテ」


「まあ……お嬢様がいないと少し寂しいことは確かです」


 シェカルテはアリア専属の使用人である。

 アリアがいない時には別の仕事も任されるのであるが、アリアのところにいつ戻るかも分からないのでよそのところでは重要な仕事を任されない。


 そのために簡単な仕事をやらされるのみであった。

 加えてアリアがいると突拍子もないことを始めたりする。


 アリアがいると背筋を伸ばしていなければいけないような緊張感もある。

 そうした刺激もないのでアリアがいないと寂しいといえば寂しいのである。


「それで何かニュースはありましたか?」


「ええと……」


 シェカルテがジェーンをチラリと見る。


「話しても大丈夫ですわ。ジェーンも仲間ですから」


 何を心配しているのかはわかっている。

 しかしもうジェーンはケルフィリア教のことは分かっていて、事情もある程度は話してある。


 聖印騎士団とかもっと踏み込んだことはエルダン家の騎士になってからだと考えているが話を聞かれたところで問題はない。


「……分かりました。メリンダ様からお手紙がありました」


「なんて?」


「アカデミーを去った人の中から何人かケルフィリア教であることが確認できたそうです」


 キュミリアのアルドルト襲撃が失敗し、ホーンドが捕まってからアカデミーの中では動きがあった。

 複数の生徒が不自然にアカデミーを去ったのだ。


 家庭の事情などと言っていたけれど休学でもなくいきなり退学を選ぶなんてどう考えても不自然である。

 そこで退学した生徒の名前を聖印騎士団に教えて調べてもらっていた。


 予想通り不自然な退学をした生徒やその家がケルフィリア教だったことが確認されたのである。

 思っているよりもケルフィリア教の根は深い。


「まだ確認されていない生徒の家の方も現在調査が続けられています」


「そう、ありがとう」


 ケルフィリア教であることが分かれば後はさらに調査して支部などを探す、横の繋がりから他のケルフィリア教を見つけ出すことや証拠を集めて監察騎士団に通報したりする。

 どう利用するにせよ適切に使えば聖印騎士団が先手を取ることもできるはずである。


「アリアはすごいものと戦っているのね」


 生徒の中に危ない宗教者がいるという内容に驚きを隠せない。

 横から少し話を聞いただけでもこうしたことが飛び出してきた。


 改めてアリアが立ち向かおうとしているものの大きさを思い知る。

 キュミリアのことだってほんの一部の出来事でしかなかったのであると思うと悲しさすら覚える。


「お嬢様、もうすぐ着きますよ」


 気づけば外の景色もなんとなく見たことがあるようなものになっていた。

 レンドンに声をかけられてから程なくしてエルダンのお屋敷に到着した。


「あら、ありがとうございます、騎士様」


「……もう、からかわないでよ!」


 ジェーンが馬車から先に降りてアリアに手を差し出す。

 いかにも騎士らしい行動にクスリと笑ってジェーンの手を取って降りる。


「アリア、おかえり」


「ただいま帰りましたわ、お父様……少し恥ずかしいですわ」


 アリアの馬車が到着したことを聞きつけたゴラックが屋敷から出てきてくれた。

 微笑んでアリアのことを抱きしめる。


 回帰前ならこんなことしてくれたことはなかった。

 嬉しくはあるのだけどジェーンの前でもあるし気恥ずかしさがある。


「君が友達のジェーンさんだね。話は聞いているよ」


「は、はい! お世話になります!」


 緊張した様子のジェーンが背筋を伸ばして頭を深々と下げた。

 エルダン家は国の中でも大きな貴族。


 普通ならそうそう会う相手でもないゴラックにジェーンも緊張を隠せていなかった。

 アリアに仕えようと考えているがまだ正式に騎士として認められたものでもない。


 何かの無礼でもあったらいけないとガチガチになっている。


「ふふ、そう緊張せずとも大丈夫だ」


 ゴラックはそんなジェーンの態度に初々しさを感じる。

 肩に優しく手を乗せて微笑んでやる。


「滞在中はここを我が家だと思ってくつろいでくれればいい」


「あ、ありがとうございます!」


「そういえばお兄様たちは……?」


 ディージャンとユーラはアリアたちよりも先に出発した。

 アリアが帰ってきたと聞いたら喜んで出迎えに出てきそうなものなのに2人ともいない。


 それをアリアは不思議に思っていた。


「む? いや、まだ帰ってきていないぞ」


「あら? そうなのですか?」


 先に出たからと言って先に着くとは限らない。

 途中で何かの用事でもあったのかもしれないとアリアは思うことにして屋敷の中に入った。

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