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学園対抗戦3

 ウソくさいというのも好意的に捉えればミステリアスだとも言える。


「ただ私の場合は顔よりも強さですわ」


 こんなところに出ている以上は弱くないだろうけど少しでも強くて使えそうな男の方がいい。

 ノラはアリアの答えを聞いて少し複雑そうな顔をしている。


「僕……強くなるから!」


「え、ええ……」


 ノラに決意がこもった目で見られてアリアは少し目をぱちくりとさせた。

 将来的にノラが強くなることはアリアも知っている。


「ただ強さばかり追い求めないでノラはノラでいてくださいね」


「う、うん……」


 アリアが微笑みかけるとノラは顔を赤くする。

 ノラの良いところは強さではない。


 もちろん強くて良い男であったのだけどノラは賢くて側にいると心が落ち着くような穏やかさがステキな男性だった。

 強くなりたいと思うことは応援するけれどそれに囚われてノラらしい雰囲気が損なわれては嫌だなと思う。


「し、試合! 試合が始まるよ!」


 顔が赤くなったことを誤魔化すようにノラは会場に目を向けた。

 ちょうどゲルダの試合が始まった。


 今回は5人がそれぞれ戦い合う。

 こうなると1人でも先に倒された方が不利になる。


 ゲルダの戦っている相手は相手チームのリーダー。

 実力的にはゲルダの方が高い。


 けれど相手は防御に集中して時間を引き伸ばしている。

 逆に他の戦いを見るとゲルダ側の方がやや押されていた。


 どこが先に崩壊するのか予想もつかない戦いにみんなの応援も熱が入る。


「均衡が崩れましたわ」


 ゲルダ側の生徒が一瞬の隙を突かれて倒されてしまった。

 そして1番不利な戦いをしているゲルダの方に向かっていった。


 これでゲルダは2人を同時に相手しなくてはいけなくなり、ゲルダの相手をしていた子も好機と見て一転攻勢に出る。

 最終的にはそれが間違いだった。


 ゲルダはなんと攻撃をさらに激しくした。

 巧みに2人の攻撃をさばきながら反撃を繰り出したのである。


 これまで防御に集中することでなんとか防いでいたぐらいなのに攻撃に出ては防御が間に合わなかった。

 ゲルダは2人を相手にそのまま押し切って勝ってしまい、戦況は一瞬で逆転した。


 強者なゲルダが加わってきては他の子たちはひとたまりもない。

 ゲルダが勝ってから流れは止まらず勝負はついた。


「結果論かもしれないけどゲルダ以外を狙うべきだったね……」


「そうですね」


 判断は間違っていなかった。

 戦いを見て不利だったところに加勢に行ったのは正しい考えだった。


 しかしゲルダは見事に対応してみせて、なおかつ攻勢に出てしまったことによって逆にやられてしまった。

 結果論ではあるがゲルダの方に加勢に行くのではなく、勝てそうなところに先に向かうべきだったのである。


「ん! だ、誰ですか?」


「見ちゃダメだ!」


「ユーラお兄様ぁ?」


 試合が終わって互いに握手をして下がる。

 その瞬間アリアの視界が真っ暗になった。


 何かと思ったらユーラがアリアの目を手で覆っていた。

 ゲルダが一々アリアの方を見ているかもしれないことはユーラも察していた。


 今度アリアのことを見てきたらアリアが見られないようにしてやるとひっそりアリアの後ろの席に移動してきていた。

 案の定ゲルダが観客席に視線を向けたのでユーラはサッとアリアの目を手で覆ったのであった。


「お・に・い・さ・まぁ〜?」


「……痛っ! ご、ごめんよ、アリア」


 なんでこんなことをされたのか分からず驚いたアリアはギュッとユーラの手をつねった。

 ちょっと怒ったように睨まれてユーラが気まずそうに頭をかく。


「全くもう……なんなのですか」


 けれどぷりぷり怒るアリアも可愛いなぁなんてすぐに思っているユーラは反省もしていない。

 ユーラがそうしなかったら自分がそうしていたかもしれないノラはユーラの行動に流石ですとうなずいていた。


 そんなことをしている間にゲルダも下がってしまったのでユーラの作戦は成功である。

 トラブルもなく試合は進んでいく。


 単なる総当たりで戦うだけでもなく戦略があったりと団体戦も団体戦の楽しみがある。

 ジェーン率いるユーケーンチームは順調に勝ち進み、決勝まで来た。


 ゲルダのチームは途中で負けてしまった。

 ゲルダの実力はチームの中で突出していたけれど周りが少し劣っていたと言わざるを得なかった。


 最初の戦いを見ていたのか、ゲルダ以外を撃破されてしまった。

 1人ではどうしようもなくてゲルダも素直に降参せざるを得なかった。


「ジェーン先輩、そこですわ!」


 決勝ともなれば応援にも力が入る。

 回帰前は剣で戦うなど怖くて試合を見物する気持ちなど分からなかった。


 けれど今は戦うことの大変さを知っている。

 アリアもつい応援に声を上げ、多少の興奮を抑えられなかった。


 ユーケーンも連携は取れている方であるが相手は完全に団体戦に向けての戦い方を習得していた。

 5人でまとまるようにして戦い、代わる代わるに攻撃を繰り出して隙を全く見せない。


 この戦い方で決勝まで勝ち上がってきたもので、ジェーンたちも苦労している。

 個々の実力で見ればジェーンたちの方が高いのに見事な連携はその差をカバーしている。


 けれどジェーンたちだって連携が取れないわけではない。

 ジェーンが突っ込み、相手を乱した。


 その隙をついてみんなで攻め込み、乱戦に持ち込んだ。

 個々で戦えればあとは実力勝負。


 再びまとまられないように戦い、ジェーンたちは勝利を収めた。

 栄光あるユーケーン。


 その歴史の1ページにまた名誉が1つ刻まれることになった。

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